▽ 09
海常高校との練習試合当日。携帯の地図をたまに見ながら相手校にやってきたわけだが、やばい。綺麗だしでかいし、何より入り口からして広い。初見は迷子になること間違いなし!でも綺麗さならうちの学校も負けてないし…。お、ここパンフレットに乗ってた。実物すげー。
「で、火神くん大丈夫か?」
「おー」
「火神くん。いつにも増して悪いです、目つき」
「うるせー」
確かにいつもより悪いわ。訳を聞くとテンション上がりすぎたとかなんとか。子供かよ。こんなんで勝てんのかな、試合。今から不安になって来た…。
火神くんを見ていた黒子が不意にこちらに目を合わせて何か言いたそうにしていた。黒子たちより少し前にいた俺は歩くスピードを落とし、黒子の隣についた。
「どうしたよ、黒子」
「先日黄瀬くんが言ってたんですけど、君学校の事誰にも伝えてないんですか?」
「うん。…黄瀬何か言ってた?」
火神くんと話していたよりも声を潜め、内緒話でもするかのような黒子。黄瀬が来た日ってあの日だよな。その話ちょっと詳しく話してもらった。黄瀬が自分の学校に戻る間際、今の様に内緒話でもするみたいにひそひそと聞いて来たらしい。
『あの黒子っち、最後に一つ聞きたい事があるんスけど』
『なんですか?』
『白垣っちがどこの高校に行ったか知ってる?今みんな総出で探ってるんス』
『彼言ってなかったんですか?自分が何処に行くのか』
『聞こうにも聞けないって言うか、聞いてもいっつもはぐらかされるスよー』
『はあ。大変ですね』
『みんな教えたのに〜。あ、そろそろ行かないと。じゃあね黒子っち!』
…みたいな感じだったらしい。はぐらかしてるその他もろもろバレてるわ、どうしよう黄瀬が分かってたら他も分かるんじゃ…。
黒子を一度見るとまだ何か言いたそうで、同じように聞くと「いいんですか」とまた突拍子もない言葉が返ってきた。
「なにが」
「誰にも言ってないんでしょう、ここに来た事。知られちゃってもいいんですか?」
「ああ、それな。手は打っておいた」
「はあ」
「どーもッス!」
前から聞こえる声を切っ掛けにこの話は自然に打ち切り、前を見るとなんかイケメンがさわやか〜に走って来ていた。…あ、違うよく見れば黄瀬だわ。服装からして、練習抜け出してきたのかな?大丈夫だと思うが勝手に抜けてきたとかねえよな、な。
「広いんでお迎えに上がりました」
「どーも」
言ってまっすぐにこちらにやってくる黄瀬。目はこちらを見ているが、足先は黒子だ。黒子と話す黄瀬の仕草は笑いをそそるが、ちょっと気持ち悪いわ。女子かよ。ていうかまだ諦めてないようだ。
会話のあるところで黄瀬の目つきが変わる。俺はそれを遠目に眺めてた。
とりあえず、早いとこ体育館へ行きませんか。
「っと、白垣っち」
「んー?」
「約束、守ってくださいね」
「おう」
「…?」
体育館に向かう手前、黄瀬との会話を不思議に見つめる黒子の姿があったとか。
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