▽ 07
「ふっふっふ。待っていたぞ!」
「アホなのか?」
「決闘…?」
よくありきたりなゲームの台詞で、まさかの仁王立ちしてボスっぽく屋上で待っていたリコ監督。思わず惚れそうですかっこいい。更に風もそれっぽく見せててヤバイ本気で惚れそうです。一生ついて行きます。
月曜になって思い出したことだけど、この曜日って朝礼がある日なんだよね、しかもあと5分で朝礼の時間。そんな日に監督に言われて屋上に集まった俺ら一年。渡してはい終わりで終わらない気がしてならない。
その予想通り、本入部届けを出した火神くんの前に、監督は一つ申しておきたいそうだ。思ったのは、監督は頼まれて監督を始めたんだと。今となっては立派な監督だし、そこらの監督よりいい。リコ監督の話すことは最もだと。長いんで省略。まあ問題は…。
「学年、クラス、名前。今年の目標をここから宣言してもらいます!」
…なにそれハード。先生来ちゃうじゃん。
「更に出来なかったときはここから…全裸で好きな子に告ってもらいます」
監督、俺好きな子いません。しいて言うならバスケが好きです。というのは胸の奥にしまっておくことにしよう。一応俺の目標は決まってる。ただな、それを簡単に言っていいものか。どう言えば監督の胸に響くか、悩むな。
一先ずここは様子見といこう。
具体的で相当な高さのハードルの目標を言えと監督が後押しすると、斜め前にいた火神くんがヨユーとか言ってリコ監督の横を通り過ぎそのまま柵、の上に乗った。え、乗った?まさかの行動に監督も驚いている。しかも上手くバランス取って立ってるから内心ハラハラである。
「大丈夫なの?あそこ」
「大丈夫なんじゃないですか」
こそりと隣の黒子に耳打ちするとあっけらかんと答えた。お前の新しい光ぃいい!!なんなのみんな危なっかしい!最悪後ろに頭から戻ることになるだろうけどやはり怖い。アメリカすげーって違うか。
「1-B 5番 火神大我!キセキの世代倒して日本一になる!」
見事なまでの高い目標に、監督もなにも言わず「次!」と言ってる。でもあれだけでかい声で言わんと聞こえない、か。どうしたものかと悩んでると、くいっと袖を引っ張られた。近くにいるのは、あいつしかいないけど。
案の定不安そうな目をした黒子がこちらを見上げていた。
「どうしましょう…あんな声出せません」
「俺もだよ。メガホン使えば?」
「それです」
まああるか知らんけど。
茶髪の一年が「彼女欲しいとかは?」「却下」と素敵な笑顔と共に即却下されてた。まあそりゃそうだろ、俺でも却下するわ。
そして丸坊主が前に出て行き、なんか自分の人生語りだした。その間に黒子はメガホンを持ってきていて後で俺も借りよう。てかどこにあったんだよそれ。
この時間、無駄ではあるが名前聞かなくとも名前言ってくれるから聞く手間が省けた。河原くんと福田くん、降旗くん、よし覚えた。
そして降旗くんの宣言も終え、黒子が行く。話しかけたらやはり驚いていたが早く慣れてほしい。あと黒子お前存在感出そう。
メガホンの許可をもらった黒子が息を吸う。さあ黒子は何を言う?
しかしその瞬間、教師がここに来てしまい黒子が宣言を言う前に俺らは即座に正座させられ、朝礼よりも面倒な説教が始められた。
俺も黒子も…まだ何も言えてない。てか監督、教師来たとき舌打ちしてたし、まさかの反省の色なしと来た。でもこれやる方としては気が引き締まるしいいとは思うんだよね。
あー宣言まだ言えてない、ほんとどうしよう。
学校も部活も終え、家で云々考えていると携帯にメール受信の表示。受信メールと開くと差出人は黒子からだった。開いてみるとごく簡単な一言のみ。
『明日早めに学校行きませんか』
なんで。と思ったけど何か考えでもあるんだろうなーとか思って、『何時』って返信すれば1分も経たずにメールが来た。書いてある時間に思わず絶句した。まあ起きれないこともないからいいけど。いつもより30分早くに起床しないといけないとか…。
それはさておき、黒子に了承の返事を送り、少しでも早く行けるように支度を始めた。
◇ ◇ ◇
「いやーまさかこんなことするために早起きせにゃアカンとは」
「これくらいしか思いつきませんでしたので」
「俺は何も思いつかなかったわ。誘ってくれてありがとな」
「いえ。白垣くん困っていそうな気がしたので」
「……うん、返す言葉もない」
って言うのが30分前の会話。現在の俺は早起きしたせいですごく眠い。机に伏せて仮眠取ろうという体制。ちょっと騒がしいけど、これも仕方ない。
なにせ新設2年のこの学校に七不思議の一つが生まれた瞬間だからなぁ。どうか伝わってますように。……眠い。
◇ ◇ ◇
火神はクラスの窓から校庭を眺めた後、先日相棒となった黒子を見つめた。袖には何やら白いものが付着しており、恐らく校庭のあれは黒子の仕業だと分かった。なら後の一つは…アイツか?
校庭にドデかく書かれた決意の文字。その横に一回り小さい決意の文字。サポート、じゃないんだなと苦笑した。
“日本一にします”
“日本一にさせます”
「おもしろいからアリかな」
どうやら彼らの思いは彼女に伝わったらしい。
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