もう一度番外編 | ナノ

数年分のおめでとう

『そういえばって変ですけど、もうすぐ黒子君の誕生日ですね』

「あ、そッスね」


夕飯の準備中にふとカレンダーに目を向け、もうすぐ31日だと言うことに改めて気付く。続けて今日はオフの黄瀬君が隣で野菜の皮を剥きながら同じようにカレンダーに目を向けた。
私はケーキどうしようかとか、紫原君もいるしやっぱ大きめの方がいいかなと考えているとガチャリと玄関のドアが開く音がした。


『おかえりー』


玄関に向かってそれだけ言うとまた作業に集中する。頭の半分では黒子君の誕生日に何をするか考えて…。何をしたら黒子君は歓んでくれるだろうか。昔みたいに何かプレゼント?でも思いつくものが本くらい…。
中学時代は何やってたっけ。


「随分と集中しているな」

「あ、赤司っち。そーなんスよ。何考えてるんスかね」

「さあな」


今彼に出来る事ってなんだろう。とりあえずケーキと…。ショートケーキでいいかな。でもそれだと中学と一緒になっちゃうしここはあれかな。チョコとか。でもそれだと青峰君あたりが(色のことで)からかわれそうだな。見てて楽しいけど。…バニラケーキって言ってもほとんどショートケーキと変わりない、というか一緒だよね。どうしようかな。あ、シフォンケーキとか?ちょっと変えてキャラメルケーキ?でもまずいって言われたらどうしようやったことも作ったこともないし。アレルギーはなかったから特に大丈夫だろうし。でもなぁ、


「…ダメ、全然反応しない」

「卯月ちん何考えてんだろうねー。お腹すいたー」

「これでも食っとけ」


そうと決まればさっそくレシピを読まなくちゃ。あ、そうだ。せっかくだし火神君と作ろうかな。彼作るの上手だし、いろいろと勉強になるし。


「優」

『……え、あ。赤司君、おかえり…え?』

「卯月っちどんだけ集中してたんスか!オレらずっと呼んでたんスよ?」

『え、マジか。ごめん…』

「優がそこまで考え込むのは珍しいな。今度は何を考えていたんだ?」


考えに一区切りついたところで名前を呼ばれた。一瞬あれ?ってなったけど多分さっき帰ってきたのが赤司君ならおかしくはない。けど私そんなに考え込んでいたのか。呼ばれてたのにも気付かなかったし。悪いことしたなぁ。
ていうかみんなどうするんだろ。


『んー…もうすぐ黒子君の誕生日でしょ?何しようかなって』

「それにしては考え過ぎじゃないか」

『そうかな。ケーキについて考えすぎた…と思う』

「ケーキ…!」

『大きめのケーキにする予定だからいっぱい食べてね』

「うん!」


ってどこから湧いて来たんですか紫原君。あたかも最初からいたように…。いや最初からいたのか。


『で、当日は火神君にも手伝ってもらおうと思って。一人じゃ大変だし』

「確かに、僕たちよりも経験のある大我の方がスムーズに行くしな」

『…なんかごめん』

「謝ることじゃない、本当のことだ。仮に僕たちが手伝ったところで足手まといになるのは見えてる」


その代わり、ケーキ楽しみにしてるよ。部屋に戻って行った赤司君に苦笑いしかできない私は再び手元の作業に集中するしかないのだ。
…そういえば黒子君まだ帰ってきてないよね?一応サプライズにしたいんだけど。赤司君は言わないでくれるだろう。紫原君はどうでもいい、というよりケーキ一筋と考えて。問題は黄瀬君かな、かなり喋るし。


『黄瀬君、このこと喋っちゃダメだからね』

「わかってるッスよ」


念のため釘は差しておいたからいいだろう。
あとで火神君と打ち合わせしておこう。



◇ ◇ ◇



『というわけで火神君、作りますよ』

「おう。…てかなんでお前がいるんだよ!?」

「君が変な事をしないように見張ってるだけだ。気にしないでくれ」

「いやむr『火神君、早く生地作っちゃいますよ』…わかった」


連絡すると快く了承してくれた火神君。
今日は1月30日。確かケーキは前日に作るとおいしいらしい。(多分)
お互い時間もありさっそく火神君の家で作ってるわけだ。何故か赤司君もついて来たけど。


「あ、それはもっと大きく回した方がいい」

『こう?』

「ん。赤司、見てるだけなら少しは手伝え」

「僕に命令するの?僕に一度勝ったくらいでいい気になるなよ」

「なってねーよ!」

『仲良いんだね』

「そんなこのねーよ!/ないよ」


時折火神君にアドバイスを受けながらスムーズに進んでいき、二人係と言う事もありあっという間にケーキ作りは終了。赤司君はほとんど見てるだけだった。
そして仕上げと言う名のお遊びで黒子君のプレートを作ってみました。


「…さすが優だね」

「ボールもつけようぜ」

『チョコペンどこ』

「ここだ」

「線はこれで」

『…できた!』


プレーとの出来はそこそこ。でも二人からは高評価をもらい、チョコなどを少し乾かすためしばらく冷蔵庫行き。できたケーキも冷蔵庫へ。そして合間合間に紫原君用もまた別に作ったし、明日はこれで大丈夫!…だと思う。
さて、ケーキは作ったけど。


『問題はプレゼントです』

「これじゃねーの?」

『は?』

「優からはこれでいいんじゃないか?」

『んん?じゃあみんな何にするの』

「僕は本かな」

「俺はバスケだ」

『…私からがこれだと言うなら火神君もこれでいいじゃん。一緒に作ったんだし』

「俺は手伝っただけだしなー」


このまま続けても意味がないと判断した私はスルーと言う行動に出た。
やっぱ好きなものをプレゼントするべきか。…黒子君お好きなものといえばバニラシェイクしか思い浮かばないんですが。どうしよう。
バスケって言うのもいいよね。みんなでバスケ、とか。あ、したい。


「優は変わらないね」

『…変わったよ。これでも』


こうなれば当たって砕けろ、で。



◇ ◇ ◇



31日。黒子君の誕生日がついにやってきました。
黒子君だけ学校なので帰って来るまでに部屋の飾りつけに追われている。ついでに言うと火神君も今日学校らしいので黒子君と一緒に帰ってきてもらう予定。ケーキはさっき取に行ったところです。合いカギもらって。
あとで返しますけど。


「赤ちーん、これこの辺でいー?」

「ああ。涼太、それはいい」

「えっ!」

『緑間君ちょっと手伝って』

「今行くのだよ」


部屋のあちこちでそれぞれ飾りつけ中。青峰君は買い物とか言って出て行ったけど。
先程「バスケコートあったからちょっくらバスケしてくる」ってメールが届いたので赤司君に言ったら「アイツの分のケーキは無しでいいよ」と鋏持ちながらとてもいい笑顔で言ったので心の中で合掌しといた。


『こんなもんかな』

「近くまで来たら大我からメール来るんだったな」

『彼が忘れてなければね』

「大丈夫さ」


お、意外と信用してる?と思った矢先、どこからか鋏の音がしたのでそのような期待はすぐさま失せた。まぁでも少なからず信用はしてるみたいだ。
もうちょっとしたら青峰君も帰って来るようにメールしよう。あと桃井さんも来る予定。多分そろそろ。
とちょうどチャイムが鳴った。紫原君が玄関へ向かう。少しすると明るく元気な声の持ち主がリビングへとやってきた。


「わあすごい!」

『いらっしゃい桃井さん』

「あ、優ちゃん!お招きありがとー!私も何か手伝おうか?」

『ありがとう。でも今ちょうど終わったところなんだ』


気持ちだけありがたく受け取りこれ桃井さんのクラッカーねとクラッカーを渡す。
すぐに使うと言うわけではないが前以って。ああそうだ、青峰君に帰ってこいとメールを…。


「大ちゃんは?」

『バスケしてるって。今帰って来るようにメールするところ』

「もう!大ちゃんったらこんな日でもバスケなんだから!」


腰に手を当てていかにも怒ってますアピールをする桃井さんはそれはもう可愛らしくて癒された。
その横でポチポチとメール作成して送信ボタンを押す。
さて、一体どのくらいの速さで帰って来るものか…。赤司君その鋏しまって。



◇ ◇ ◇



「火神君、忘れものはないですか」

「おう。行くぞ」

「はい」


黒子誕生日を祝うのはこれで4回目となる。毎年メンバーが変わるからそれはそれで楽しんでる。
そして今年はキセキの世代と呼ばれた奴らが全員いる上にもう一人、加わる。
昨日作ったケーキはおそらくもう向こうにあるし、俺が指定の場所を通ったら卯月にメールをするよう言われてる。勿論忘れてない。…あんなことがあったしな…。
それまで他愛もない会話も高校の時からずっと続いてる。おもしろいことに話題は尽きない。バスケ以外何も合わねーのにな。


「そういえば火神君がこっちに来るのは珍しいですね」

「そーいやそうだな。大抵は呼ばれるけど」

「その大半は卯月さんが呼びますよね」

「内容は色々だけどな」


そろそろ指定の場所を通る頃、俺は携帯を取り出し予め作成しておいたメール画面に送信ボタンを押した。
黒子は何も気にしてないらしくずっと前を見てる。


「寒いなー」

「ですね。早く温まりましょう」

「そーするか」



◇ ◇ ◇



青峰君がやっと帰ってきて赤司君にこっぴどく叱られてる最中、テーブルの上に置かれた私の携帯がぶるぶる震えた。
差出人は火神君。つまりもうあと5分もすれば家に着くか。


『メール来たよ』

「よし」


それを合図にみんなそれぞれ配置につく。


「いいか、一度きりのチャンスだ」


雰囲気がまるで試合みたいだけどこの際気にしない。
それだけ必死とも取れる。

明かりを消し主役の彼が帰って来るのを待ちながらドキドキするねとみんなと話す。
そして外から二人分の足音が来たとき、少しざわついてた部屋が一気にしんと静まる。
ガチャリと開けられた玄関。ぺたぺたと近づく足音。ドアの向こうで「あれ?」と言う声も聞こえる。
リビングへと通じるドアノブに手が掛かりゆっくりと開かれたのを合図に、


パンッ

パンッ


一斉にクラッカーの音が鳴り響いた。
同時に部屋の明かりもつける。


「「「「「「誕生日おめでとう黒子/ち/テツ(君)/テツヤ」」」」」」

「…驚きました」


黒子君の後ろにいた火神君もクラッカーを持っていたし前と後ろに驚いたんだろう。
目がいつもよりちょっと大きい。


『誕生日おめでとうー』


みんなの間を割るようにケーキの登場。数本の蝋燭。黄瀬君は消してと催促しケーキの前に黒子君を誘導する。
それにふっと息を吹いただけであっさりと消えた蝋燭の火。しかも一発なんてすごいじゃない。


「…あの、これ卯月さんが作ったんですか?」

『火神君にも手伝ってもらったんだよ。ね』

「おう!」

「このプレートは?」

『私です』

「…うまいですね」

『そう?』


周りから好評だった黒子君プレートも本人にも好評なようでなりよりです。


◇ ◇ ◇


玄関を開けたら部屋が真っ暗でびっくりしましたがこういうことだったんですね。
サプライズなんてよく昔やりましたが今回のサプライズはいつもと一味違う気がしました。きっとみんながいたから。
ケーキは驚かされました。通常より大きなケーキの上に僕が描かれたチョコプレート。
蝋燭の色にも気付きましたよ。赤、紫、緑、青、黄色、ピンク、オレンジ、白。
これってみなさんのことですよね?ちょっと…いやめっちゃ嬉しかったです。ミスディレ使って一枚記念に撮りました。

その後、火神君と桃井さんと一緒にご飯を食べて二度目ましてのケーキ。それとその後ろにもう一つ、また別に大きなケーキ。多分紫原君用かと。大変ですね…。


「テツヤ、はい」

「今日と明日のラッキーアイテムなのだよ」


ケーキを人数分に分け、みんなで食べていると隣にいる緑間君と前にいる赤司君がほぼ同時に包みを渡してくれました。
受けたとった包みを抱えてありがとうございます、となるべく気持ちが伝わるように言った。


「あ、オレも!」


それに続いて他の4人からもプレゼントをいただき胸が暖かいです。火神君は「あとでバスケしよーぜ!」と言ってくれました。喜んでやります。
卯月さんは苦笑いしかしてませんがどうしたのでしょう?僕の視線に気付いた卯月さん。あ、決してプレゼントが欲しいとかではないですよ?


『私もプレゼント用意しようって思ったんだけど…』

「え、こんなにおいしいご飯とケーキを作ってくれたのにまだするんですか?」

『それはそれ。これはこれ』

「だから言っただろう。十分だと」

『うーん…今までの分の気持ちも詰めたかったんだけどね』


―ずっと考えてたんだ。


『またみんなでバスケしたら、黒子君にとっての最高のプレゼントなんじゃないかなーって』


どうかな?と首を傾げる卯月さん。確かにバスケは好き。それはある意味最高ですがやっぱり、


「そうですね。でもみんなと一緒にいる方がもっといいです」

『…そっか』






『じゃ、バスケする?』

「しましょうか」





(あ、誕生日なんですから手加減してくださいね)
(えぇー)
(よしテツヤ。6on1だ)
(俺も入れてくれ!)
(キセキの世代+火神vs優ちゃんか…楽しみ!)
(ふん、絶対に勝つのだよ)
(絶対勝つし〜)
(え、卑怯な…)




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というわけで黒子君誕生日おめでとう!予定以上に長くなってオチさん迷子になってそのまま帰ってきてくれなかったから最後の方雑だけどごめん!でもおめでとう!
私は君を愛してる!
生まれてきてくれてありがとう。君のこれからの活躍に期待してます。




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