隠し事は無しにしよう
「やぁみょうじ。偶然だねこんなとこで会うなんて」
『…どうも赤司。残念だけどこれは偶然でもなんでもないわ。待ち伏せしていたのは分かってる』
「さすが俺のみょうじだ、よく分かってるじゃないか」
『あんたのじゃない。それに私の前で私に気づかずに話していたでしょう』
「それって盗み聞き?嬉しいなあ。俺のこと気にしてくれたの?」
『最近なかなか評判のいい病院があるから今度行って来なさい。いや逝け』
「俺のことを心配してくれるのかいみょうじ?君は本当に最高だよ結婚しよう」
『丁重にお断りします。つか帰れ。二度と私の前に現れるなと何度言ったらわかる?ねえ?』
毎度のことながらあの二人はよく喧嘩(?)をする。想いは赤司君が一方的に。
みょうじさんは心底嫌そうに対応する。にも関わらず赤司君はぐいぐい進んでいく。
出会えばいつもこんな感じの二人。あれが部活では魔王化するもんだから、最初は同一人物なのか目を疑ったものだ。
いつか言っていた。『赤司征十郎という男に出会ったのが運のつき』だと。
でもそんなみょうじさんも、満更ではないと思います。
僕の趣味は人間観察です。僕を甘く見ないでください。
ほら、チャイムが鳴って自分に宛てがわれた教室に戻っていく赤司君の後姿を寂しそうに見ているではありませんか。
「みょうじさんは第2の緑間君か何かですか…」
『緑間?…なんで緑間なの』
「いえ、なんとなくです」
『ふーん…』
赤司君以外なら普通に接してくれる彼女ですが、それ現場を見た赤司君は発狂するのかと思い、遠くで観察していたら赤司君の姿はなく、いつの間にか僕の隣に来ていたことに驚きました。
歩いてここまで来るのに約10分はかかるはずなんですが。一体どうやって来たんですか。いやそれ以前に僕のこと見えていたんですか。
「みょうじは俺以外だとあんな風に喋るらしい」
あ、なんか始まった。
というか気付いてたんですね。
「つまり俺の事…」
「嫌いなんだろうか」と言うと思い、それに対する言葉を探しながら次の言葉を待った。
「俺の事は別なんだろうか」
と恍惚とした笑みで言った赤司君。
予想と全く別の事を言う赤司君に僕は何も言えず、ただ「…そうなんですかね」とだけしか言えなかった。
それ以来彼女へのアタックが強くなった気がする。
◇ ◇ ◇
「そういえばみょうじさん、今月20日は赤司君の誕生日だそうです。よかったら一緒にお祝いしませんか?」
『…いい。赤司うざいからいい』
「そうですか」
それだけ話すと黒板に向き合った。
◇ ◇ ◇
12月20日。そう、つまり俺の生まれた日。
柄にもわくわくしてるのは今朝届いたメールのせいだろう。
差出人はみょうじからだった。向こうから送られてくるのは初めてで思わず二度見したくらいだ。
その内容が『誕生日らしいね。よかったね、これでまた死へと一歩近づいたね』とみょうじらしいメールが送られてきた。俺はこれを愛として受け止める。だってそうだろう?いつもメールなんてしてくれない みょうじからの初メール。しかも誕生日に。
アドレスはみょうじの携帯が机の上に置いてあったの拝借しただけだ。別に無理矢理取ったわけではない。それに勝手にやったにも関わらず、消さずにそのままということは嬉しい。
もう他にはいらない。そうまで思った。
と、みょうじのいる教室へと入った。黒子も隣にいて何やら話しているようだ。そこで俺に黒子が先に気づき続いてみょうじも俺を見る。
顔をしかめるみょうじも好きだよ。
みょうじの前の席に後ろ向きで座り、やはり直接祝いのことばがほしいと欲が出る。
まあどうせ言ってはもらえないだろうが。それでもみょうじと話せるだけでも幸せだと思う。
「みょうじ、今日俺の誕生日なんだ」
『らしいね、知ってる』
「祝ってくれいや結婚しよう」
『おめでとう、でも結婚はしない』
「…え?」
『え?』
「みょうじ付き合ってくれ」
『いいよ』
「え」
『あ?』
「みょうじ」
『なに?』
「今日のお前は変だ。頭でも打ったか」
『赤司の方が頭打ったんじゃないか』
「……………」
俺の耳はおかしくなったのか。みょうじが俺に応えてくれる。もしやこれは夢か?夢なのか…!?
隣の黒子はというと笑いを耐えながら本を読んでいた。黒子、あとでじっくり話をしようか。
すると目の前でクスリと笑い声が聞こえる。
『どうした赤司?なんなら【ピー】にも付き合ってやろうか?それとも【ピー】がいい?』
その発言は中学生の女子とは思えないもので思わず逃げ出したくなった。しかも含み笑いで、だ。こんな朝っぱらから何を言うんだ。目の前にいるのは誰だ?
チラリと黒子を見ると声こそは出していないが机に顔を伏せて肩をふるふると震わせている。
黒子…。
『赤司?』
目の前にいるみょうじは何食わぬ顔で俺を顔を覗き込んでくる。
どうしたらいい…。
その時、ちょうどいいタイミングで予鈴が鳴った。
いつもは名残惜しいが今日ばかりは早めに戻りたい。そう思い急いで立ち上がり教室を後にしようとする。
『赤司』
がやつく教室の中嫌というほど透き通る声で名前を呼ばれ反射のような動きで振り返る。そこにみょうじは優しく微笑みながら今日一番聞きたかったことを言い、隣の黒子の背中を揺すり始めた。
俺はそれを横目に早足で自身の教室へと足を進めた。
このタイミングであの笑みは反則だ。
だが今日のあれは勘弁してほしい。俺が持たない。色々と。
『誕生日おめでとう、征十郎』
隠し事は無しにしよう
(…黒子?大丈夫?)
(っ…ええ、なんと、か…っ)
(あーあ…死ぬかと思った)
(僕が笑い死にしそうです。あの赤司君の驚いた顔と来たら…!)
(深呼吸しなよ)
(みょうじさんのデレはぱねぇですね)
(は?)
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「いつもはツンとされる赤司だけど、誕生日のときはめっちゃ素直にされて、暴走しちゃう」という内容でしたが、紫鬼様…如何でしょうか…。
これ結構悩んだんです。暴走するってのは夢主の方でしょうか…。結果、ああなりました。
そしてその子はきっとツンデレさんですね!ということで。暴走させるのはどうしようかとも思いましたが、そうだ、放送禁止用語にしよう。…とか。
すみませんでしたorz
タイトルおかしくないかと思われるでしょうがちゃんとあります。
ええっと紫鬼様!如何だったでしょうか。大変遅くなり申し訳ないです…でも楽しかったです…!
企画参加ありがとうございました!