「違う、其処じゃない」

「なまえ、マネージャーやれ」


昼休み、珍しく幼馴染みの赤司くんに呼ばれたかと思うと来てすぐこれ。
当然ながら口はぽかんとだらしなく開き、それに呆れたようにため息をつく赤司くん。
ため息付きたいのはこっちだよ!


『え、なんですか一番最初にそれって。おかしくないですか、てかもうすぐテストきかいたたたたた!?』


言い訳に近い正論を述べていると首を絞められた。間違ったことは言ってませんけど!?
というかここ廊下!人めっちゃ見てる!哀れそうに見てる!見てないで助けて!!


「もちろんすぐにとは言わない。だが早めに入った方がいいだろう。だから入部届け出しておいた」

『…うん?何勝手にやってるんすか!私は放課後ののんびりとした時間を満喫したいのです!』

「勉強もろくにできないやつが“のんびりとした時間を満喫したい”…?ハッ笑わせるな」


今こいつ鼻で笑った…!盛大に鼻で笑ったよこいつ!笑わせるなって言う前に笑って痛い痛い痛い痛いっ!!


『何っ!?』

「ああ、すなまい。失礼なことを考えてる気がしてね」


お前はエスパーか!いや別に失礼なこと考えてるとかそんなわけでもなく!
って話が逸れた。…何の話をしてたっけ。


「マネージャーの話だよ。どこまで馬鹿なんだ全く…」


お前はエスパーか!(2回目)
今度は口に出すと「顔に書いてある」と言われてしまった。え、そんなに分かりやすい?
とにかく今日は帰るなよと言うだけ言い残して自分の教室に帰って行った赤司くん。もう帰りたい…。



◇ ◇ ◇



放課後になるにつれ私の心と体は重くなっていった。さらば、自由時間…。
事前にメールで体育館前に来いと仰せになられたので現在体育館前。中からは部員の声が聞こえる。
来いと言ったのに本人がいないってどういうこと。もしかしてすでに中にいる?
そっとドアを少しだけ空けて中を確認する。………いない、ね。
あー…このまま来ないんだったら帰っちゃおうかな!うん!


「なんだ、来ていたのか」


ここで来たかちくしょう!

くるっと振り向いて来いと言ったのはそっちだろと言いたかったが、なぜかめちゃくちゃいいお顔をなさっていたのでぐっと喉まで出かかっていた言葉を抑えた。
なんだろう…いたずら成功した子供のようなこの顔は…。こえぇ。

体育館内に入り適当に紹介され挙句に今日は帰って良しとのこと。なんでも桃井?さんがいないようで教えれないらしい。赤司直々に教えてもいいが生憎今日はそんな暇はないらしい。じゃあ入れるなよと突っ込みたい。
明日なら暇もあるし桃井さんもいるらしいので明日からマネージャーをやることになった。できれば今日の事は無しにしていただきたいものだ。しかし今日で最後の自由時間。思いっきり満喫してやろうじゃない。そしてマネージャーやってやろうじゃないか。

体育館を出る際チラッと赤司くんを見たがそこには今まで見たことないような優しい顔して私を見てる赤司くん。
…いや一瞬だけだったし何かの見間違いかもしれない。
だってあんな顔の赤司くん久しぶり過ぎる…。









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夕日の差し込む放課後のとある教室。
そこでは主将と副主将がほぼ無言で将棋をしてるというシュールな光景があった。
ただパチン、パチンと、将棋を指す音だけが室内に響く。
だがその沈黙を破ったのは副主将の緑間だった。


「この前入ってきたマネージャーの事だが。赤司、お前の知り合いか?」


と切り出してきた。それに俺は特に隠すことでもないので素直に頷く。
そいつがどうかしたのか、と。


「あぁなまえかい?それがどうした?」

「なぜあのような奴を入れたんだ。しかもこんな時に」


直球だなと笑うが緑間は笑わない。
こんな時、というのは来週からテスト1週間前になる。つまり部活動も一時休止になる。
入れるタイミングがおかしいと言う事だろう。
それに答えるべく俺はわざと一拍おいてあいつを入れた理由を語りだす。


「あいつは見ての通り勉強は全くダメでね。だから勉強するようにいつも言ってるがやってるんだがしてないんだかいまいち分からない。幼馴染みが赤点とって補習を受けるなんて嫌だし。
少し前俺が直々に教えてやろうとしたらすぐ逃げるし。逃げ足だけは早いんだよね。どうしてそんなに嫌がるんだと聞いたら『なんで教わらなきゃダメなの』というし。
要は理由が必要だったんだ、勉強を教えるね。それでマネージャーなら特におかしくもないだろう?選手をサポートするマネージャーが補習なんて…というわけさ」

「………」


1分弱語ってしまったがここまで言わないと緑間も納得しないだろうと判断したがどうやら効いたらしい。それ以上は聞いてこなかった。


「王手」


勝負は俺の勝ちだった。当然だがな。
もう一局と勝負を挑む緑間に次が最後なと駒を並べ直す。


「…それにしてもおもしろいななまえは。分からないところがあれば俺に聞けと言えば素直に俺に直接聞いてくるし。しかも一々聞きに行くのもあれだからと、わざわざ分からないところをメモして来るんだ。彼女なりの気遣いだろうな。そしてあの上目使い、可愛いよね。さすが俺のなまえだ」

「…お前たちは付き合っているのか?」


ここまでの会話を黙って聞いてた緑間が聞いてきた。
何をどう取ってそうなったのか…。俺には理解できない質問内容だ。


「いや?そんな関係ではないけど」

「(なんだこいつは)」


今頃なまえは今日教えたところを復習してる頃だろうか。
明日もまた俺がびっちり教えてやろう。
なまえの目を回す姿は可愛いからな。


「王手だ」

「…参ったのだよ」










『へきしゅっ!……風邪…だと…?』






(なまえ、今日はここやっとけ)
(ここまだやってませんけど!?)




Title:花畑心中

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「夢主を雑に扱いつつ実はめっちゃ心配する赤司。夢主の居ないところで夢主についてデレる赤司」という内容でしたが…。
まず前半そんなに雑じゃない+心配してる部分微妙+最後雑。愛は詰めた!!

ちとせ様!こんな感じでよろしかったでしょうか…!?
企画参加ありがとうございました!




 

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