泥棒つかまえました


『はっ…私としたことが…』


国語の辞典を…忘れた…!!
えーどうしよー。あの先生忘れものには厳しいし忘れたら3回はそれ引きずるし目つけられるしおっさんいい加減にしろよって感じー。って。


『家には無かったけど…?』


だから学校にある筈なんだけど。無いってどういうこと?
おかしいなぁ。どうしよう。
ちーちゃん(友人1)持ってるかなぁ…。…無さそう。
いいや。ちーちゃんかまいちゃん(友人2)に貸してもらおう。確か同じクラスだよね。というわけでレッツゴーです。




◇ ◇ ◇




『ちーちゃん、まいちゃ…』

「む、お前は…」


ででーん。来なければよかったと後悔しても時すでに遅し。
急いで回れ右をし来た道を猛ダッシュで戻ろうと一歩足を出したところで即捕まった。離せやコラ。
いやその前に。


『す、すいません離してくださいっ』

「人の顔を見てすぐ逃げるのは失礼だと思うのだよっ」

『いっ痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!』


廊下で大きな声を出せば人が注目する。それに怯み一瞬緩められた手からさっと抜けた。
じり…と緑色の彼と一定の距離を取ったところではぁ…とため息を疲れた。何この人めんどいしむかつく。緑なのに…癒し色なのに…。


「雪原なぜ逃げるのだよ」

『多分そのカラフルな頭が原因だと思います。はい』

「これは生まれつきなのだよ!」


知らんがな。


「それでうちのクラスに何か用か?」

『ああ、はい。ちーちゃ…内田さんいます?』

「内田?ああ、いるが」

『わーじゃあ失礼します!』


脇を通ってクラスに入ってく。
ちーちゃんは私を見るなりパァっと笑顔になりこっちこっちと手招きしてきた。あ、まいちゃんもいる。


「どうしたの早妃」

『あのさ、国語の辞典持ってる?持ってたら貸して…わぁ!?』

「早妃!?って緑間!?」


突然首根っこを捕まれそのままずるずると教室を出される。一体何事だと視線を買うがすぐになくなる視線。
少し待っていろと緑色の彼に言われておとなしく待っとく。ミドリマ?だっけ。まあいいや。
また追いかけられても困るし怖いしやだ。


「貸してやるのだよ」

『?国語の辞典…』

「今日のラッキーアイテムがたまたま辞典だったのだよ」

『ラッキーアイテム…えっと名前教えてもらってもいいですか?』

「…緑間真太郎なのだよ」

『緑間くん、ですね』


それじゃあ、と別れて自分のクラスの席に着いたとき、何気なく辞典の名前を見てみると私の名前だった。
いやね、私の辞典の表紙って、なんかわかるのよ。女の勘ってやつ。
だから敢てお礼とか言わなかったんだけど…。
てかなんであいつが持ってんの。完全に泥棒じゃねぇかくそー。あとで黒子くんに愚痴ろう。
そしてなんとかしてもらおう。

今日の復習。
緑色の彼は緑間真太郎くん。
ラッキーアイテム、と言ってる時点でおは朝見てる。あとから聞いた話だが彼はおは朝信者らしい。
そして語尾に「なのだよ」をつける。意味がわからないのだよ。あ、これおもしろい。
とりあえず。なんとなく近寄らない方がいい、と。

それでも私の世界には緑色が加わりました。




泥棒つかまえました
(黒子くん!緑…の人私の辞典勝手に盗ってた!)



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「好きな異性の持ち物がラッキーアイテムだったのだよ」

『…引く』

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