丁重にお断りします


茶番が始まったのはいつだったか。茶番と言っても私が常に走ってるだけだけど。

休み時間に友達と話してて、急に「前!前!!」と言われた時には時すでに遅し。振り向いたと同時に誰かとぶつかった。
友達が青い顔しててこれはよくないと直感で焦り、慌てて顔も見ずに謝ってその場は友達と逃げたけど。今思う。あの時顔を見ればよかったのだろうか?
いやそもそもぶつからなければよかったと思う。逃げた後のことはあまり覚えてない。覚えてるのは授業受けてる最中、やたら視線を感じたことだろうか。
というか、あの日から異様に視線を感じてる。
振り向いたらすぐにその視線は消えるし、若干怖いけどその時になったらなんとかするって意気込んでみてたり。

あの日の私はバカでした。

お昼休み。なぜか頭がカラフルで長身の男二人に屋上に来いと呼び出され、特に断る理由もないのでそのまま着いていった。
着いたはいいが、なぜか男たちは暗い。というか怯えてるようだ。どうしたのと聞けばはっとしていきおいよく扉を開けた。
そこそこ思いはずなのに、勢い任せとはいえすごい。なんて感心してると屋上の真ん中にて更にカラフルな人たちが数人いた。中にはずば抜けた身長の人もいる。190はありそー。


「来たか。まあ座れ」


と、赤い髪の人の前に座るよう言われ素直に従う。
さっきまで昼食タイムだったらしく、弁当の袋がちらちら見える。私はすでに食べ終えてるけど。
呼び出してきた男たちも赤い髪の人側に座り、赤い髪の人が口を開く。


「急に呼び出してすまない。どうしても言いたいことがあってな」

『はあ…。なんでしょう』

「単刀直入に言う。俺と付き合わないか?」


赤い髪の彼はなんの恥じらいもなく坦々と述べた。
なんというか半分決定してるような言い方に少し反応が遅れる。
というかこんなに人いるのに?
そのまま何も言わない私を他所にぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。


「赤司っち!何勝手に告ってるんスか!話が違うッス!!」

「そうだぜ赤司!今回はただ単に話するだけだろ!?なんでそれを言う!」

「赤司くん手が早いですよ」

「赤ちん焦ってる〜?」

「だから赤司を最初にするのは嫌だったのだよ…」


訳がわからない。いろいろ気になるけどこの際どうでもいいや。
帰っていいですか?
そんな私を見透かした赤司くん(?)が声をかける。


「雪原、まだ帰るな」

『…えー』


立ちかけていたのに…。もう一度座り直す。
「こんなりゃ一か八かッス!」と意気込む黄色い髪の人…彼。
わーイケメン。いやここにいる人ら全員イケメンの部類に入るけどね。


「オレと付き合ってくださいッス!」

「黄瀬ぇえええ!お前もかああ!!」


まさかのイケメン君からの告白。大抵の女子はすぐに頷くであろう。だが私はすぐに頷かなかった。
聞きたいことはいろいろあるけれど、それを言わせないほど早足で事は進んでいく。


「こいつなんかよりも!俺と付き合った方がいいぜ!」

「今日のお前と俺の相性は最高なのだよ。だから俺と一緒にいろ」

『え、と…』

「ねえー、俺とずっと一緒にお菓子食べよーよ?」

『お、おおう…』


入り口付近で見た大きな男の人。近くで見ると更にすごい。立ってないけど身長絶対ヤバイ。
ヤバそうだけどなにこの子。可愛い。大きな天使?(仮)


『ひ、一ついいですか』

「なんだ」

『君たちは誰ですか?』


私の発言にみんながぽかんとする。あれ?なんかまずいこと言った?
奥の方にいた水色の少年がクスリと笑った。様な気がした。
すると私の前に来て丁寧に教えてくれた。


「すみません、まだ名乗ってませんでしたよね。彼らはバスケ部の人達です。名前は聞いたことありませんか?“キセキの世代”と呼ばれる人たちです」

『あ…ああ。キセキね…』


なるほど。道理でカラフルなわけだ。
へぇ、キセキね…キセキ…。


『で、そのHS(ハイスペック)なキセキさん達がなぜ私に?』

「ああ、それはだな…雪原、覚えてるか?」

『何を?』

「廊下でぶつかっただろ?」


必死に記憶から最近起こったことを思い出す。…そういえば確か…。


『………ああー…あ!?』

「思い出したか?」

『もしかしてもしかしなくて…ぶつかったのは…』

「俺だ」

『マジすか』

「マジだ」


あの時の事をもう一度謝り「気にするな」と言ってくれた。い、意外と優しい…?
「その代わり、」と続ける。


「俺と付き合わないか?」

『は…』

「はいはい!雪原サン!オレと付き合おうよ!」

「ばっか!俺と付き合えって!」

「俺と一緒にお菓子食べてくれるんでしょうー?」

『お菓子は食べたいねー』

「雪原さん、それだと告白受けちゃってます」

『お、お菓子だけは食べたいね…!』


水色の少年に言われ慌てて訂正する。というか気付けば隣にいる。
あれ…そういえばさ。


『ところでなんで私の名前知ってるんです?私は知らないのに』

「ああ、それは…」

「僕と雪原さん同じクラスなんですよ。あと赤司くんも」

『えっ』


こんなカラフルな人たちの一部さんたちと同じクラスでありながら全く記憶に残ってないだと…?


『え、ご、ごめんなさいわた、私…!』

「暫く見ていればそんな感じがするよ」


と赤司くんがくすくす笑う。
思わずなんてきれいに笑う人だろうかと一瞬見惚れてしまう。
いやていうか今聞き捨てならない言葉が出ましたけど…!?全部ぱあですね!


『見てた…?』

「ああ、口が滑ったね」

「…はあ」

「まあいいよ」


よくないですけど!?ちょっと怖い!
頭の混乱が増す中、事はとんとんと勝手に進んでいく。


「俺と付き合う?付き合うよね?」

「オレと付き合うッスよ!」

「俺にしとけ」

「相性のいい俺にしとくのだよ」

「俺とお菓子食べよ?」

『え、えぇっと…』


私の前にずいっと並んで早く返事しろ、と目で訴えてくる人たち。
めっちゃ怖い。みんな背が高いから余計に。
咄嗟に隣にいる水色の少年の後ろに隠れる。そして早く言わなきゃ…!もう答えはとうに決まっている!


『てっ、丁重にお断りします…っ!』


言ったー!と思いダッシュで逃げる。出口へ猛ダッシュ。
後が怖いと言うかオーラがやばいと言うかカラフルで目が痛いとか…あ、これ関係ないか。
数秒の出来事なのに無駄に長く感じつつも足を動かす。どうか追いかけてきませんように…!


『…あ、お友達としてなら喜んで!』


あと一歩で屋上から去れると言うのになに言ってるんだ私は。でも本心だし…ああわけわかんない!

この日、この一言で私の人生が少しだけカラフルになり始めたのです。




丁重にお断りします
(というかまずいきなり付き合えっておかしくないですか?)



-----------------
(メモ:あとは短く。)

prev/next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -