うたた寝


縁側に座り込んで、陽気にお日様の光を浴びる。よくに言う日光浴なるもので、今日みたいな日はぜひともしてみたいと思った。元いた世界で、こんなのんびり出来る日ってそうそうないからなぁ。縁側とか、実家にもなかったし。何よりここは自動車の音もない静かな場所。…あ、


『三日月さーん!』


庭を歩いていた三日月さんに思わず声を掛けた。いやだって、そのうちいなくなってたら嫌だし。ふらっといなくなられては困る。冗談とはいえ、やっぱり少し不安になる。
三日月さんはこちらに気付くと、ゆっくりとした足取りで何も言わず隣に腰かけた。あ、いきなり座るんですね…いえ、別にいいんですけど驚きっていうか…。


「主殿、如何なされたかな」

『い、いえ特には…。あ、お茶でも飲みます?』


お団子もありますよ〜と、三日月さんとは反対側に置いてあったお盆を持って見せる。三日月さんはきょとん、とした後よいなと言って笑ってくださった。
そうと決まれば。
腰を浮かせそのまま待つよう言うと早足でお茶を入れに行った。走ったらうるさいって前に何回か怒られたので…。三日月さんにそのような失態は見られたくない。

お茶を入れ、先程いた場所に戻ってみると三日月さんは目を閉じているようだった。鶴丸さんみたいに驚かせてみてもいいけど、年上にそんな失礼なこと…と結局出来ないで座っていた場所まで戻った。
やばい、相当待たせてしまっただろうか。


『三日月さん…?』


一度目、呼び掛けには応答なし。え、あれ。何故か焦り出す私。んん?これってもしかして。いやいやんなまさか。


『三日月さーん…』


二度目の呼び掛け。やはり応答なし、目は閉じられたまま。ただの無視でないってことは分かった。はい。
最後にと肩を突いてみても何の反応もなかった。うん、これは。
寝ておられる。
ヤバい、日向ぼっこで寝てる三日月さん可愛い。ヤバい!


「ん…」


顔を片手で覆い、軽く悶絶してると隣からそんな声が聞こえ、ハッとして顔を上げる。
まだ少し虚ろな目がぼんやりとこちらに向けられる。目が合ったと分かると一度ぱちりと瞬きされた蒼い瞳。その際、瞳の中の三日月が見えて、


「すまん、少しうたた寝をしてしもうた」

『――…』

「主殿?」

『へ…あ、ああ!いや分かります!暖かいですもんね、今日』

「うむ」


う、うわああああどうしよう一瞬魅入ってしまったとか言葉失っただとかなんですかあの大人の色気!…色気?どっちかっていうとじじい(本人談)の色気?待ってこれすごく失礼でしょ。
あ、お茶どうぞ。三日月さんの近くにお茶を置き、自分の湯飲みを手に取る。なんだろう、すごく婆臭いぞ…。でもこういう日もいいな、って思えるのは何故だ。
一口お茶を飲んで一息。優しい風がすり抜けていく。時折他の刀剣たちの声も聞こえ、平和だなぁ、なんて呑気なことを思った。
お団子も、なかなかにうまい。



うたた寝
(こうしてると夫婦みたいだな)
(め……!?)
(はは、それもよきかな)
(!!??)


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じじい来い。そして難しい…。人事は尽くした、ぞ。

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