指切り 『んじゃー山くんを大将に、加州くん、獅子くん、……』 今から戦場に行かせるメンバーを決めるというのに、呑気な今の主は比較的明るめの声でメンバーの名を呼んでいく。呼ばれたメンバーはすぐさま入口前まで行き、一度その大きな本丸を見上げる。必ずまたここに戻ると最後に行ったのはいつだったか。 視線をいつもの位置に戻すと主がこちらに駆け寄ってきた。 『みんな気を付けてね!』 無事を願い笑う主に俺以外は声を上げる。俺は背を向け、一足先に行こうとすれば何かが引っ張られ、足は止まる。 振り返ると主が俺の服を引っ張っていた。俺よりもいくらか小さい主を見下げると主と目が合う。 『山くんも、自分は写しだからーとか訳分かんないこと言って自分を蔑ろにしちゃダメだよ?』 その目はまっすぐで、視線を外すことも許されない。真面目だった主の顔が、ゆるく歪む。 『山くんも大事な仲間だからね!』 絶対無事で帰ってきて、と言って小指を差し出してきた。 慣れない指で俺も同じような形を取ると、小指が主のものに絡め捕られた。 『はい、指切り!』 そういって主はいつものように笑う。 指切り (写しだけど、これは本物だって、) (この だけは) そう約束したのに、な --------- ちょっと無理矢理感があったな。 prev/next |