ひざまくら


「わっ!」

『ふぎゃっ!?』


審神者の部屋でぱそこんとやらに向かい、書類を作っていた主の後ろから少し大きめの声を発し、驚きを与えてやった。毎度のことだが、主を脅かせた時の声は面白い。これだから主を驚かすのには飽きないもんだ。もちろん反応も愛らしいがな。
勢いよく振り向いた主にもうお決まりの台詞を吐いたところで主の向こう側、俺とは反対の位置に人影があった。


「こりゃ驚いたな。三日月もいたのか」

『寝てるけどね。…ちょどいいや、鶴丸や、頼まれてくれない?』


書類はそのままに立ってる俺を見上げる主にどんなことを頼むんだ?と膝を折り、主と同じくらいの目線になった。俺とは違う黒い瞳が合うと一瞬逸らされる。


『三日月さんを横にしてほしいんだけど』

「なんだそんなことか。いいぜ」

『助かります』


主の向こう側へと行き、三日月を起こさぬよう主から離した。三日月の体制は、座ったままの主と同じように座り、その身を主に預けたまま寝ていた。起こさぬよう動かすのが大変だぜ。
多分主のことだから、このままの体制では寝ずらいと思ってのことだろう。確かに座ったまま、頭を肩に預けるのは辛いだろう。まず背丈からして違うし自分より低い者の肩に預けるというのは起きた時が痛いだろう。彼女は優しいからそういうことを配慮しての言葉だろう。…まぁ俺としても退かしたいが。

三日月を後ろに寝かせ俺は主の横へ腰を下ろした。俺が肩から離した時点で自身の仕事へと戻っていた主は一度俺を目だけで見て、その後何もなかったかのように目の前の書類へと目を落とした。


『ありがとう。ぐっすりでしょ』

「ああ、ぴくりとも動かなかった。いつから寝てるんだい?」

『え?うーん…これを始める前だから、30分くらいかな?』

「…ということはまだいいな」

『なにが?』

「いいや。こちらの話だ」


それならまだいいなと頷いて見せた俺に、主に横目で見られながらも書類を進める手はやめない。その事に少しつまらなく感じながらも隣からそれを覗きこんでいた。
…ふむ、やはり暇だな。


「主、少し後ろに下がってくれるかい?」

『んー?』


疑問から見られながらも素直に下がってくれた主。机の下から膝が見えそこで止めた。足が崩してあるからまあいい高さだろう。机ともそんなに離れていないし書類も書き続けられるだろう。


「ちょいと失礼するぜ」

『ん?…ん?!何してるの鶴丸!』

「見てわかるだろう?主の膝で膝枕だ」

『見りゃ分かる!けどおかしくないか!なんで膝枕、』


おいおいそれ以上は喋らない方がいいぜ、と人差し指を主の唇に沿える。これ以上騒がれたら三日月が起きてしまう。主とて今この場で三日月は起こしたくはないだろう?
そう尋ねると分かりやすく頷いてくれたので指を離した。ちと声がでかすぎたな、主よ。
膝を枕にしているせいで主を下から見上げるのは中々そうない機会だ。ついでに手の甲で頬を一撫でさせてもらい腕を下ろした。


「俺は退屈なんだ。少しくらい付き合ってくれてもいいだろ?」

『…………あーはいはい。せめて大人しくしてくださいね。最低これが終わるまで』

「了解した。さて俺は寝る」

『…おやすみなさい』

「おやすみ」


少し考えるかのように目を彷徨わせた後、何か察したのか理解した顔で主は頷いた。それ以上何も言うことはなく、むしろ小さく笑って俺を髪をお返しのように優しく一撫でした。とても暖かい。




ひざまくら
(こういうのんびりした時間もなかなか乙なもんだろ?)

(ちなみに俺が起きた時は主も寝ていた。こりゃ驚きだな)
(ついでに三日月も反対側で寝ていた。これも驚いた…)

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じじい台詞ないけど出てます。すみません。このコンビ好きです。

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