鼓動


ふと目を開けたときに、目の前にある赤い髪。それは私の友人であり、恋人でもある彼の物によく似ている。……否、彼本人だ。

少しずつ覚醒していく中、未だその赤い髪を眺め続けていた。そっと手を伸ばし、起こさないよう、その柔らかそうな髪に触れる。

しかし触れた途端、手首を押さえられ、それ以上の動きが出来なくなってしまった。
…起こして、しまったのだろうか。


『あか、しくん?』

「……何をしているんだ?」

低く、掠れ気味の声に不覚にもドキリと脈打つ心臓。明らかに寝起きのもので、少しやってしまったと後悔した。せっかく気持ちよさそうに寝ていたのに。


『髪を撫でようとしてた。…ごめん、起こしちゃったね』

「…いや、いい」


それ以上の会話はなく、私が目を覚ました時のように辺りは静かになる。
一応これでも私も寝起きの身だからすっかり忘れてたんだけど。いつになればこの手首は解放されるのだろうか。そろそろ腕が辛くなってきた頃合い。
確か、私も彼も朝には弱かったはず。


『赤司くん、手離して欲しいな』

「…ん」


とは言ったものの、一向に離されない手首。どうすればいいのだろうか。
もう一回赤司くん、と呼んでみたが今度は返事もくれない。目を合わない。これは相当ぼーっとしてる。深い眠りについてたのに、急に起こされたみたいだ。…ますます申し訳なくなる。

とりあえず腕が本当に辛いので自分の体を赤司くん側に寄せることにした。こうすれば腕が楽にはなるでしょう?
移動する時、捕まってる手にも力は多少入ったはずなのにびくともしない。それどころか良い支えになったと言いますか。

さっきよりも大分近くなった距離に、知らぬうちに満足し、はっとして時計を見た。……うん。


「早妃、」

『んー?』

「このまま寝てしまおうか」

『そうね、それがいいや』


頷くと柔らかく微笑む彼。私はこの表情が好きだ。愛されてるなぁ、って思うから。根拠は他の人にこの表情はしないから。してるところ、見たことないし。
あとまだ彼が多少寝ぼけてるって言うのも一理ある。

くっつくとじんわりと相手の体温が服越しに伝わってきて、段々と眠気を誘ってくる。寝てしまおうかと決めてた刹那、それに抗う必要もなし。
布団と彼の体温とで眠くなってきた私は、簡単に意識を手放そうとする。
額を彼の胸に当てて、ゆっくりと目を閉じた。
最後に背中にも温もりが回っていくのを感じながら。



鼓動
今も昔も、変わらない音


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鼓動関係ねえ!!とかちょっと焦った。


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