僕は君を見上げ、君は僕を知らない。 遠い雲の上の存在の様な彼はいつだって遠くを見据えてる。 雲の下にいる私たちには眼中になく、いつだって真っ直ぐで先を視ている。 “絶対的”なそれは今更変わりやしない。 『あ…』 時折廊下ですれ違ったり、図書室で見かけたりすることはある。 けど自分のクラスに来るなんて初めてだ。いや、恐らく何度も来たことあるだろう。私がいない時に。 目的は大体わかっている。同じクラスに彼の仲間がいる。ほらやっぱり。その人の元へ行くんだ。横目に見つつ、声をかける勇気があれば、と思ってしまう。 勿論そんな勇気は全くと言っていいほどない。見てるだけで、いいとさえ、思う。 でも触れてみたい。その、真っ赤に燃える綺麗な赤い髪に。 『(ああほんとに…)』 痛いほど私は彼に惚れている。 ずっと見てるだけでほとんど外見でしか彼に惚れてはいないが、優しい人だ。 よく成績優秀とか容姿端麗とか天才児とか、部活じゃ怖いとか鬼だとか言われてるのをよく耳にする。 みんなは知らない。この人が誰よりも努力家で器の広い人か。 私は見てしまった。一人教室で悩み、努力をする彼を。その時から私はきっと彼に惹かれてる。 周りに人がいるからこそきっと何も弱音が吐けない。ずっと上にいなくてはならない。 私が全くの赤の他人で彼のことを全く知らないで、催眠術みたいなものでも使えたらきっと彼は口を滑らすだろう。 嫌だと投げ出しなるだろうか。泣いてくれるだろうか。 彼の隣に行けたらいいのに。 魚が空を夢見るように、今日も私は神様のような完璧な彼を見てるだけ。 いつか、魚も空の上に飛べたらいいのに。 僕は君を見上げ、君は僕を知らない。 prev/next |