(0101) ▼ キセキと余命一年の子

ぐらりと消える、のか。少し暗めの話。




ぐらり

そう、ぐらり

視界が傾いた

誰に支えてもらう事も無く頭と体に痛みを感じたあと誰かが叫んだ
そしてすぐに何人かの人が駆け寄ってきて、ふわり、宙に浮いた
朦朧とした意識の中でふわふわと感じたのが、この体制がお姫様抱っこというやつで、今私は誰かにそれをやられている、ということだ
誰かは知らない。けど声でなんとなく大好きな人だと思う。だってこの温もりはあの人しかいないと思うから
ゆらゆらと揺れる中そのまま意識を手放した




ガタリとした音で目が覚める
ぼうっとする視界の隅にカラフルな色が見えた
水色、緑、青、黄色、桃、紫、そして赤
私が目覚めてると気づくとさっきまでしんとしてた部屋に悦びの声が響く

そんな中、一人が凛とした声で私に優しく話しかける


「調子はどうだ」


その声は部屋がうるさいにも関わらずむしろその人の声しか聞こえなくなるものだから私も重傷かもしれない
大丈夫という意味を込めてゆっくりと頷く。まだ頭はボーっとする


「お前たち静かにしろ」


凛としたその声が今度は部屋中に響く。そこ一言で誰もが声を発しなくなった
みんなが私を囲むように覗いてくる。それだけならわかる
けどどうして、手をそんなに強く握る…?

起き上がりたくて手や腕に力を入れる。が、上手く力が入らない
唖然としてると横から手が伸びてきた


「起きたいんだろう?」


こくり、頷くと優しく微笑み上半身を起こしてくれた
なんで力が入らなかったのか。理由は分からなくもない


「意外と驚かないんだな」


その声は肯定の意味を含めていた
今まで黙ってきたことがある。心配させたくなかったから。邪魔だとか言ってほしくなかったから
でも結局、迷惑をかけてしまった
どうしよう、多分みんな聞いてるだろうし言った方がいいのだろうか。悩んでると前から声が聞こえた


「堀田さん、そろそろ話してください。君の…体のこと」


ああ、そこまで知ってるのに言わせようとするんだね
思わず苦笑してしまった
ぐるりとベッドの周りにいるみんなを一周見てからふぅ、と息を吐いた。嫌われたら、どうしよう…


『…私ね、――』





あと1年の命なんだ

自嘲気味に笑えば言葉を失った人もいれば顔を逸らされたり、ベッドから離れて何かを考えてたり、抱きついたり、下を向いたり…
様々な反応を見せてくれた。それだけで私はどうしようもない嬉しさで心を支配される
そんな反応してくれるんだね、ありがとう

ただ一人だけ何のリアクションもしなかった彼が動いた


「知ってたよ」


そこで彼は儚げに笑っていたのを最後に覚えている…――




2014.01.01 00:00


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