(1123) ▼ 勘違い/一期

好きだった。どうしようもなく。
でも叶うはずないと分かってた。次元が違いすぎて。憎かった。でも好きだった。きっとこんな状況だから余計に惹かれたんだと思う。
単純だと思う。でも人間その方がいいんだよってテレビの向こうの人は言った。きっと私はその言葉をよく覚えていたんだろうな。だからきっと単純で扱いやすくて…いいカモだった。

交わりたいと思ってた。でもそれはいけないことだって何となく分かってた。人が、神に恋するなど前代未聞。他の神に知られたらどうなるか。天罰…いやそんな可愛い言葉のもんじゃないかもしれない。もっと恐ろしいものが下されるかも。
伝えることはしない。それこそだめだ。だからこの想いは秘めたままでいようと、そう決意してたのに。

「お慕いしております。…主殿」

どうして彼はこうも簡単に私の決意を揺るがすかな。頷かないように、答えないように、彼を傷つけないように。私はこれからも笑っていたいな。彼と、みんなと、笑いあっていたいんだよ。

「私のようなものがこのようなことを申してしまい、誠に申し訳ありません。ですが、これだけは伝えておきたかったのです」

「ありがとう、一期。でもお慕いしてます、じゃ誤解を生んじゃうよ」

「…いいえ、それが正しいのです主殿。私は心より、主殿をお慕いしておるのです。どうか」

「一期は勘違いしてるんだわ。それは慕うというものではなく、きっと別の愛情の方よ」

そうそれは別の想いよ。一期、目を覚まして。
あなたはきっと母親に抱くような愛情を持ってるんだわ。優しい一期。誰よりも、何よりも素敵な人。

「人間、愛情の区別が出来ない人もいるの。きっと一期も今そうなんだわ」

「…そう、なのでしょうか」

「ええきっと。時が経てば、分かるわ。その愛は、」

あなたの勘違い、ってこと。
今日はうんと強い酒を飲んでとっとと寝てしまいましょう。よかった、酒を飲むとすぐ寝てしまうタイプで。口の軽い女じゃなくてよかった。そして明日にはいつものように笑って楽しく、まるで今この出来事なんてなかったかのように振る舞うの。
出来るわ、私なら。想いさえ隠してる私なら、これくらい。




「…主殿は嘘吐きですなあ」

ならば何故貴女はそんなに嬉しそうな顔をするのか。




2015.11.23 11:11


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