(0620) ▼ 高尾兄妹がブラック本丸に放り込まれる 追記

一通り説明というかこんのすけに質問責めを終え、休憩と称してそれぞれ頭の整理に好き勝手にしていた。兄は部屋に、妹は廊下に。
帰り道覚えておかないとあの部屋にたどり着けなくなる。やばい、しっかり周りを見ておこう。
適当に歩いていた鈴はふと目に入った庭らしきものを見つめる。庭、というには似つかないほど、何かおどろおどろしいものが蠢いており、周りの空気と一向に混じりもしないし消えもしない。よくよく見ていれば一部に血がこびり付いている。誰の血だとか、何があったかなど考えたくもない。思わず顔をしかめる鈴の前に甲高い声が割と近くで聞こえた。

「こんにちは、さにわさま」
「…ん?私か?」
「そうです。おなまえをまだおうかがいしていないので」
「…そうだった。待って、偽名考える待って」

振り向いた先にいたのは銀に似た髪色を持つ小さな少年。先ほど聞いた話ではここにいる刀剣、とやらは昔存在した武将の持つ刀。所謂つくも神だと知らされた。さっき目にした綺麗な人も、金髪のもふもふもさんも、今目の前にいるこの子も神様だという。簡単に言ってしまえば擬人化。まさかリアルで目にするとは…少々、いやかなり信じられないけど。
審神者、の意味はイマイチ理解できないが多分神聖なる職業とだけ考えておこう。となると私らはそんな職業に就いてる、のか?やだやだなにそれすごく似合わない!と爆笑したのはつい数分前。
声をかけられたことにも驚いたが、内容があれなのでやはり今すぐ考えるべきか。と目の前で考え込む姿に少年はきょとりと首を傾げる。

「さにわさまはここでなにをしていたんですか?」
「頭の整理を、少し」
「せいり、ですか」
「うん。色々と叩き込んだからさ」
「ふうん」

さもどうでもいいような返答だが、実際どうでもいいのだろうと感じた。だって少年は私の目を見て話してない。ちらちらこちらを見るが、殆どの視線は庭に向けられている。少年が鋭くそのおどろおどろしいものを睨むとそれは一度静まり、また蠢き出す。それを見てしまうと気持ち悪くてしょうがない。睨めば大人しくなるのか、あれ。

「あなたはどうしてここに?」
「ただのさんぽです」
「そうかい」

ふとこの子は誰に使えていた刀なのか気になった。いや別に下心とかないし。ただ気になっただけだし。主さんを聞いて一人盛り上がれないかなとかそんなまさか。

「そういえばあなたは誰の刀?って言い方変か。んー、誰が持っていた刀?」

足疲れた休憩とその場に座る。相変わらず庭には気持ち悪いものが蠢いているが、先ほどよりは大人しいかもしれない。消えない、かなぁ。

「…ぼくはよしつねこうのまもりがたなでした。さいごのときまで、おそばにいたんですよ」
「よしつね?源義経のこと?まじで?」
「?はい」
「え、待ってそれ平安…やばいなんか歴史を感じる。ほ、他にどんな人が持っていた刀がいるの?」
「べんけいに仕えていたなぎなたに、じんしゃのおはらいがたな、あるぶしょうのおくさまにつかえていたかたなもいます」(ここ多分ちょっと間違ってるが気にしない)
「弁慶、ってあの弁慶か!そんな刀もいるのか、どんな人だろう…あ、いや刀か。ていうか幅広い」

思わず頭を抱えなくなった。時代の広さについて。ていうかある武将の奥様って誰だ。まさかの奥様。女も刀を持っていたのね。まあ時代劇に見る女中ではないでしょうな。薙刀みたいなもんだし。女中に有名な人はいない出諸。多分。
ここで話を聞いてたら歴史に強くなれそうな気がしてきた。しかし皆人間は嫌い、視界に入れるのも嫌だろう。推測にすぎないが。つまり話すどころではない。……あ、やば。

「ごめん話し込んじゃった。嫌だったね、ごめん。では」
「っ、まってください!」
「ふお!?」

立ち上がって謝って来た道を戻ろうと足先を変えたところに後ろに引っ張られる。バランスを整え、倒れることは回避できたが。この子、意外と力強い。振り返ると目がぱっちりと合う。前髪のせいで片目しか見えないが、とても幼く、可愛いという印象がとれた。先ほどまで一切目を合わせなかったというのに一体どういう事か。ていうか手、手!

「ごめん気分を害したなら謝るしこの場を去るので早まるな待って待って」
「さにわさま、こっちにきてください!」
「え?いや、ええええ?!」

強引に引っ張られほぼなすがままの状態。どこに連れて行かれるのかはわからないが、それまでに少年はいろんな事を話した。

「べんけいのなぎなたは、いわとおしといって、ぼくととてもなかがいいんです」

「いわとおしはよくあそんでくれてました。かたぐるましたり、かくれんぼしたり、とてもたのしかった」

「でも、あのおとこのせいであまりあそんでくれなくなりました。いわとおしはどんどんげんきがなくなって、」

「いつのまにか、ぼくたちみんなきずだらけでした」

言わなかったが少年にはよく分かるほどに痛々しい傷がいくつかあった。しかし少年の傷はどうやらずっとあるらしい。いわとおし、という刀について話す彼はとても嬉しそうで、どこか懐かしそうで。そしてとても寂しそうだった。ここが明るくなれば、彼の言う肩車やかくれんぼも出来るだろう。
元に戻せば、私たちも元の場所に帰ることが出来る、とあのおっさんたちは言っていた。言うに手入れ、掃除…それら全てを終わらせばいいと。しかし、他にもやるべき事があるんじゃないだろうか。その何かはわからないけど。
そうだ、私肝心なこと忘れてる。

「あの、」
「はい、なんでしょう」
「二つ、君に質問させて」

私の問いにぴたりと足を止める少年。うんごめんね足を止めて。それからありがとう、小走り気味だったからあのまま行ってたら舌を噛みかねない。

「どうして私を連れ回す?人間なんて嫌いでしょう?」
「……たしかに、そうですが、あなたのみたまはとてもきれいでした。だから、まだだいじょうぶです」
「(みたま?てか褒められてるの?)じゃ、二個目。えっと…あなたの名前をお伺いしてもよろしいですか?」

そういうと目の前の少年は少し黙りこくった。な、なにかいけなかっただろうか。しかしその心配も憂鬱なものだったようで。

「ぼくは、今剣。よしつねこうのまもりがたななんですよ。どうだ、すごいでしょう!」
「――うん、有名な人の刀が今目の前にいることが信じられないね。よろしく。名前は…ごめんもう少し待って」
「はい!ではいきましょう!」
「いやだからどこに!」

てわけで連れてこられたのは先ほどの大広間。今剣が襖を開け、次に私が見えたとたん中にいた刀剣たちから殺気がぶわわっ!心臓は跳ねたが、まだいたことにも驚いた。なんなの、ここ君たちの住処なの?隠れ家?いやなら隠すよな。

「こっちですよ!」
「ちょっと待ってもう少し考えよう待って待って、っわわ!」
「あるじさま、こちらがいわとおしです」
「あ、どうも…待って、すみません、一度立ってもらってもいいですか?」
「お、おお?」

岩融含む刀剣たちは事の成り行きを見ているが、今剣が彼女を主と呼んでいたことに驚いた。契約を、交わしたのか。
岩融も驚いていたが成り行きで立つことに。立ち上がったところで彼女が息を吐く。

「たっけえ…」

素直な感想だった。



なんでこの子?と思った方もいるでしょう。私も書いてて思いました。なんでやねん、ってね、ほんとなんでやねん。
でも一番こうかなって思う理由が三条が全体的にラスボスっぽいからです。今剣ちゃんも子供の姿してますけど、それなりに長生きな方ですし実はしっかりしてるかな、というのがここでのイメージでして!ブラック本丸ネタはいくつか読んだことあるんですが、たいてい三日月がラスボス。すごくわかるそれっぽい、んですが!ここではあえて三条全員がラスボス…風、と。
想像してみてください。夜、月を背後にこちらに向かってにこりと笑う5人の姿を………あっ(察し)
この兄妹はここからどうやって邂逅していくんでしょうね。



ちなみに!
ホラーな世界は体験しておらず、キセキの世代その他諸々とは高尾経由で知り合った。桐皇組とは桃井から知り合いなんだかんだで知り合い設定。桐皇組はホラーなくてもそのうち知り合ってそう。同じ学校だし、すれ違うことくらい……ねえ?
キセキの世代と一番馬が合うのはきっと黒子か紫原。桃井ちゃんかわいい妹みたい、でもお姉ちゃんみたい。



どうでもいい話しますと19日に薙刀来ました(めちゃくちゃ嬉しかったです)
今剣ちゃんのおかげでしょうか…(レベリングしよ)


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