(0420) ▼ 審神者♂ネタ 追記

「俺には兄がいる。双子の兄で、顔も似ない二卵生。ここに来るちょうど一週間前に病気で亡くなったと聞く。

俺の兄は、言えば出来る人。俺からすれば天才だと思う。対する俺は何も出来ないような駄目人間。
大体何でも出似た兄は幼い頃から親に可愛がられてたけど、俺は何も出来ない駄目な奴だったからほとんど見向きもしてもらえなかった。
それでも兄は俺を見捨てず、自分がしてもらったように俺を可愛がってくれた。兄だけど親みたいな。

幼い頃から散々な俺と、皆からの信頼も厚い兄。
小学生の頃はそりゃ妬んだね。何で兄ばっか、なんてあいつばかり出来て俺には出来ないの。俺だって頑張ってるのに、褒めてくれやしない。
でも兄の頑張りを俺は知ってたから、中学生くらいには自慢しまくってたね。俺に出来ないことを平然としてくれる、俺の兄貴は誇りだと。妬んでばっかじゃどうにもなりゃしない。分かってたけど、心の底ではやっぱ羨ましかったね。ひっそり出来るようやってたし。

社会人になっても俺は変わりなくて、大体雑用係。仕事もらえるだけありがたいけど。多かったのは、兄の後始末みたいなこと。穴埋めとか、そんなのに利用されてた。

今回もそうなんだろうなって、その審神者って仕事も、次を見つける間の繋ぎみたいなもんだろうなって思ってた。…後になって違うって知ったけど。

兄が政府から命を受けてたのは知ってた。審神者ってのも名前だけで、主なことはなんにも知らなかった。それでも俺は、政府から命を受けた兄が誇らしかった。兄がそう教えてくれたとき自分のことのように喜んだのは昨日のことのように覚えてる。でも俺はその時の兄の少し寂しそうな顔には気付けなかった。
審神者っていう職について、たまに連絡をもらうようになったけど…え?たまに電話してた相手?多分俺だよ。報告って言うかこっちの日常とか話してくれんの。聞いてるだけで楽しそうだったなあ。ん?話してる兄貴も楽しそうだったと?……はは、そっか。見てみたかったよ。

そしてつい先日、兄が亡くなったという知らせと共に、俺にそれを引き継いでほしいという連絡が入った。兄が死んだと言うのにそんなことを言う政府に苛立ちさえ覚えたね。でも俺はそれを承諾した。先も言ったように繋ぎだと思ってたから。
それからすぐに適正者かどうか調べる…みたいなことされて、結果適正ありとされたわけだ。

それからすぐに此処に連れてこられた。来てすぐ、兄を感じたよ。兄がいるんじゃないかって思って探しちゃって…あ、きょろきょろしてた?見られてたか。お恥ずかしい。
んで、いてもたってもいられなくてこの本丸中を歩き回ったよ。もちろん、先代審神者を亡くして傷心状態のお前たちの目に映らないようにね。

なんでそんなことしてたのか?気にしなくて良かったのに?はは、ありがと。でもそれは今言えることだろ?当時は絶対そんなこと言えないと思うよ。むしろ苛つくかもしれないよ?なにやってんのアイツ、みたいな感じてさ。

探してた理由について?あー、えーと、あの時はまだ兄の死を受け入れてなかったし、受け入れたら、俺が死にそうだったし。だから探した。すごく辛かったんだ、俺も。…言ってしまうとね、兄が死んだって聞かされて、はいそうですかって納得する前に来たからね。

それから集まってたお前たちを見て、兄はここでも愛されてたんだなぁって。あとお前たちが一瞬こっち見た時のあの目は怖かった。だからあまり何も言えなかった。慰めの言葉すら。
上からの命令で挨拶の時に自分は先代の弟だと言えとか言われてたけど、言えるわけないよね。言ってしまったら兄を重ねるかもしれない、傷を抉るかもしれない。何より俺自身を見てもらえないのが怖かった。ここでも兄と重ねられるのかと。…悪い大人だよな。結局穴埋めなんだと。

ま、そういう感じでこちらに来た訳よ。今思い出せば笑い話になるもんだ。懐かしいな。

…俺さ、兄以外といて幸せとか楽しいとかそういうの感じたことなかったんだけど、ここに来てからは初めて他者といて幸せで楽しいと思える。
兄がいないのは、そりゃ寂しいし未だに悲しい。体半分…いや、殆ど無くなったみたいな。

審神者の仕事は、大変だけどすごく楽しい。兄が楽しそうに話してくれたのも頷ける。何よりお前たちがいてくれるだけで楽しい。
兄はきっと幸せだった、そうだろう?××」

『なんだ、分かってるじゃないか』


兄貴が亡くなって一年目のこと。俺は全部打ち明けた。先代審神者であった兄と俺の事。
追記:4/30


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