チームの、猫

2階に続く階段の途中、その段差に座り込んでノートパソコンを弄るメローネにプロシュートは目をやった。

「何してんだ、ンなところで。」
「ンー、リーダーの味見を拝聴中?」
「あ?なに訳の分かんねェこと抜かしてやがる。」
「シーっ!ちょっと、今いいところなんだけど…静かに歩けよ、プロシュート。」

プロシュートの革靴の音に眉間を寄せていたメローネが弾かれたように顔を上げた。

「ンーッ!イイね、ロコ…イキそうだな。ベリッシモ甘い声だ…!!」

メローネの気色悪い台詞と同時に2階から聞こえてくる小気味のよいスパンキング音と鼻にかかった甘い鳴き声。今度はプロシュートが深く深く眉間に皺を寄せた。

「オイオイ…リゾットの野郎、あのバンビーノとおっ始めてんのかよ…どういうつもりだぁ? これじゃどっちが籠絡されてんのか分かりゃしねぇ。」

「プロシュートは変なとこで真面目だよな。そんなの気にしなくていいのに。これでロコはリーダーのお墨付きなんだから、俺らも安心して楽しめるってモンだろう?あんな可愛い子と仕事出来て、しかも溜まったら抱ける。最高としか言えないね!ブチャラティには感謝してもしきれない…!」

メローネがウットリしていると、一際甲高い甘さを孕んだ悲鳴が聞こえ、ベッドの大きな軋みが事情に一区切りついたことを知らせた。

「兄貴?」

階段下に現れたペッシは階段も登り切らずその中腹で話をする2人を訝しみ、何をしているのかと追いかけてきた。

「ペッシ、そこにいろ。こっちに来るんじゃあねぇぞ。お前にはまだ早ぇからな。」
「えっ…、2階に何かあるのかい。」
「うん、裸のリーダーとロコが。」
「はっ…!!!な、な、な、アッ、兄貴っ!!」
「メローネ、テメェ、余計なこと言うんじゃあねぇ!!」
「過保護〜!そうやってまだ早いとか遠ざけるからペッシはいつまでもマンモーニなんだ。ま、アンタの教育には興味ないけど。」


階段の騒ぎに静かに開かれた扉からリゾットが顔を出した。

「何をしているんだ。騒々しいな。」

まるで今まで仕事をしていたような、いつもの顔で出てくるもんだからメローネはその様子にくつくつと喉を鳴らして笑った。

「アァン?今の今まで新入りバンビーノをハメてたテメェだけは言われたくねえ台詞だな。」
「……聴いてたのか。」
「コイツは始めから聴いてたらしいけどなァ、俺は通りすがりだ!!このオンボロアジトじゃテメェらのおっ始めた声なんて丸聞こえだろうが!!」
「アッハハ、違いない!!プロシュートでこうなんだからギアッチョ居たらキレ死んでたろうなァ!」

メローネが笑いすぎて目に涙を浮かべると、リゾットは気まずそうに視線を逸らした。

「…言い返す言葉もない。気遣わせてすまなかったな。」
「おや、素直だねリーダー。ところでロコは?」
「泣き疲れて眠っている。起こしてやるなよ、随分気を張っていたようだからな。」
「…なにそれ、あんなに強気だったのに意外に繊細なわけ?…それって…かなりセクシーだな。たまんない…」
「この変態が…」

不機嫌そうに毒づいたプロシュートとにんまりと笑うメローネ、対称的な二人を背にリゾットはシャワーを浴びに階段を下る。

「…あぁ、プロシュート、ロコが起きたら買い物に付き合ってやって欲しい。欲しいものがあるそうだ。」
「アァ?俺にテメェの女の子守りをしろって?冗談じゃあねェ。リゾットよォ…!」
「頼む。」
「俺にメリットがねぇ。第一、本当のバンビでなけりゃひとりで行けるだろうが。」
「…プロシュート、俺ではなく、チームの大切な預かりものなんだ。傷でもついたら面子に関わる。」
「……テメェがそれを言うか。もう十分傷モノだろうがよォ。……次の仕事、報酬弾めよ。」


プローシュートはリゾットの背後に舌打ちをして、渋々と表に車を回した。




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