横恋慕っていうのよ



※ジョルノ両片想い主人公←ミスタ


「ジョルノにかわいいって、思ってもらいたいの。」

俯いていたはずのロコは突然顔を上げてそう言った。潤んだ瞳が俺を見上げて一瞬言葉に詰まるが、俺も馬鹿ではない。子ウサギのようなこの瞳の奥に眠るサキュバスにそう何度も騙されたりはしない。

「アァ?ジョルノは既にお前に激甘だろうがよォ〜〜!!」
「そうじゃなくて、言葉で!可愛いって!言って欲しいの!!」
「メンドクセェ奴…。」
「ミスタ買い物付き合ってよ…可愛くコーディネートして?」

普段俺の服の趣味を酷評するこの女が「コーディネートして?」なんて心にもない事を言って俺を誘い出そうとするときは、決まってジョルノの気を引きたい時だったりする。

「また俺をダシに使うつもりだろ…お前なぁ。」
「…ミスタが一緒に来てくれないなら…またブチャラティにお願いしてみる…!」
「ウッ…それだけはヤメろ!あんな空気は二度と御免だからな…」
「…あんな空気…?」

ジッサイ、此奴が躍起になるほどジョルノは此奴に無関心じゃあない。寧ろ真逆で、ジョルノのロコに対する執着は異常なくらいだ。溺愛してる癖に、ロコ本人にそのそぶりは見せない。泳がせてるつもりなのか?全く迷惑な奴らだ。

ブチャラティ はその辺の空気を読むのが下手だから、度々ロコに「一緒にお出かけして欲しいの。」と強請られて、ジョルノの嫉妬を買うのだ。そのときの空気ったら…身震いするぜ。

要するにロコはジョルノに嫉妬して欲しくて俺らをダシに使う訳だが、本人の中ではそんな作戦もジョルノの薄い反応に毎度失敗に終わっている訳だ。いつも大成功してジョルノの冷たい視線と気まずい空気にチームが凍りついてるなんて知らないロコは今日も必死だ。

「…とにかくお願い…ミスタァ!」
「オイ…乳を寄せるな!!揉むぞ!!」
「揉むなら…ジョルノに見えるとこで揉んで!」
「ばッ…!!俺を殺す気かァーッ!?」

俺の右手に縋り付くロコにハァとため息をついて、屈んで目線を合わせてやると、潤んだ瞳からポロリとひと粒涙が溢れた。

「ばか、無理してんじゃあねェーよ。」
「…だって…どうしたら、振り向いてもらえるか…分からない、の。」

次々溢れる涙が小さな手の甲を濡らす。俺はその手を避けて親指で涙を払ってやった。

「だからって、好きでもねェ男を誘惑すンのは頂けねェな。オメー、俺じゃなきゃ襲われちまってたかもしれねェだろォーが。」
「…わたし、かわいくない?」
「…な、」
「…ミスタには、どう見えてる?」

真剣な視線に射抜かれて、身体がぴしりと固まってしまった。いつも一生懸命なロコは可愛い、可愛いに決まっている。小さな身体、護衛チームの紅一点。最近化粧も頑張っている。多分グリーンが好きで、服はグリーンが多い。髪は最近伸ばしてて、クリーム色の髪が肩辺りでくるりと巻かれているのがかなり可愛い。

此奴の可愛いところなんてきりがないくらい言える。
マジできりがないくらい…ア???
なんで、俺…、
まさか…

「ミスタ?」
「…はっ!?いや、えー、お前は頑張ってるだろ!!自信持て!!!な!!!」
「う…うん…。」

自覚した途端に口が回らなくなり、心臓もターゲットを追いかけ終わった直後のように脈打っている。目の前の此奴に一枚フィルターが被さったように、その動作ひとつひとつに胸が打たれる。

まずい、此奴はジョルノが好きなんだぜ?ジョルノも此奴が好きだ。俺の出る幕なんてねェだろ。

「…ロコ…お、俺よォ…」
「二人とも…こんなところで何を…」

俺が口を開いたと同時に背後からしたのは渦中の張本人であるジョルノだ。
俺とロコ、そしてロコの涙を見てジョルノは一気に殺気立った。野郎、道化になった俺の気も知らないで…。

「…何があったんですか。」
「ち、違うの…わたしが悪いの…ただの痴話喧嘩…。」
「痴話喧嘩…?」

オイ!!なんでだよ!!!こいつなんでこんなナイスなタイミングですっとぼけてんだ。俺に泣かされたんだって言えばジョルノに泣きつけただろうがよ!痴話喧嘩なんて一番選んじゃいけねェワードだろうが…!!見ろ、ジョルノのあの冷たい視線を…や、殺られる!

「痴話喧嘩…だって?ミスタ、どうなんです…?」
「いや、そのよォ…ロコが…「ジョルノ、ミスタは悪くないの!私が…ミスタに変なこと聞いちゃったから…」

上手い返しも無ぇ癖に遮ってんじゃあねー!!此奴、俺に目配せなんかしてきやがる上手く庇ったつもりかよチクショー!!

「…何を聴いたんです?」
「…恥ずかしいけど…『私って可愛い?』って…、あ、あの…わたし、自信がなくて…でもミスタがすぐ答えられなくて…わたしそれで…」
「…なるほど…本当に痴話喧嘩のようですね…なら、僕の出る幕ではありませんが…水臭いですね、ミスタ…二人がそういう関係なら言ってくれれば良いのに。」

俺に耳を寄せ、ガンつけながら話すジョルノに俺もそろそろ限界が訪れる。
元はと言えば誰のせいで此奴が泣いてると思ってやがる。

「……まったく、回りくどいぜジョルノ、あんまり泳がせてんなら俺が貰うぜ?この通り、此奴は泳ぎが下手みたいだしよォ…」
「良いわけ無いでしょう。ミスタ、彼女は僕の物です。分かっているでしょう。」
「まだ、お前のモノじゃあねェだろう。可愛い小魚ちゃんを愛でたいのはお前だけじゃあねェ。」

大の男二人が殺気立っているのは大人気がない光景だろう。ジョルノは少し黙ってからロコを呼び寄せてハンカチで涙を拭ってやった。ロコはそれだけで天にも登りそうな顔をして惚けた顔でジョルノを見上げる。

ハッ、なんて顔してんだか。
やっぱりロコはお前の隣が一番『可愛い』ぜ。
チクショーが。

ロコを連れて通り過ぎるジョルノの最初から最後まで気障ったらしい爽やかなラストノートが香って、俺は久々に煙草なんか吸ったりして、ウンザリを運河へ煙らせた。






【横恋慕っていうのよ】
(ハァ!?知るかよそんなこと!!)


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