「ナスカレー?好きだけど?」


ボーダー本部B級作戦室フロア荒船隊作戦室前。荒船隊18歳メンバーは全員不在、一緒にゲームをしていた半崎くんもお昼寝モードに入ってしまったので、飲み物でも買いに自販機に行こうと荒船隊作戦室を出た瞬間だった。

名字ちゃんめっけー。と、背後から緩い声。振り返るとそこには、割と仲良しのモサモサバイザーがヘラりと笑って立っていたのである。
よっ!と片手を上げる前に投げかけられた質問は『ナスカレーって好き?』いや突然すぎだろ。まあ暇だから答えるけど。ってことで、ここで冒頭に戻る。


「卵は?のっける?」
「あーそれは悩ましいですなぁ」
「やんなぁ」
「俺は温玉ならのせるが」
「お前いつから居た?」
「何当たり前のように入ってきてんねん」


真上から落とされた声の持ち主が誰かなんて、もう考えるまでもない。奈良坂くんだ。奈良坂くんいうのはいつも隠岐と私が世間話をしていると現れるキノコの精だ。私の親友その2である。

それにしても。いつもの狙撃場ならまだしも今日はB級作戦室フロアだぞ。A級のお前がなんでここにいやがる。転送されたくらいの勢いで現れたけど、妖精さんだから可能なのか?ほんとに不思議なキノコだな。


「二人は玉子はのせないのか」
「あればのせるし、ないなら別にって感じ」
「おれもやな〜」

「因みに我が家は中辛だ」
「私ん家は甘口」
「おれは辛口派やな〜」

「牛乳だな」
「えー冷たい水でしょ」
「どっちもありやな〜」

「ところで」
「私も気になってたけど」
「ん?二人共どしたん?」


あ、もうそこ触れちゃう感じ?もうちょっと引っ張って頭の中の整理とか、福神漬け派からっきょ派かの議論とかしたかったんだけど。まあこのメンバーで一番頭の良さそうな奈良坂くんが触れるなら仕方ない。きっと今がベストタイミングなのだろう。


「名字」
「あっ私が言うんですか?」


お前が言わんのかい。まあええけど。言ってもいいなら言わせてもらうけど。さっきから本当に気になって気になって仕方なかったんだよね。


「隠岐くん。その後ろの方は、誤転送か何か?」
「どう見ても私服ですが私服の換装体ですか?」
「誤転送ちゃうし生身のイコさんやで」
「「ほう」」


先程から、隠岐の後ろに隠れるように立っている厳つい男の人。一言も喋らず、ジッ…と私たちを見ている『イコさん』が、めちゃくちゃ怖い。何、なんなの、誰なの。あまりにも喋んないから隠岐のスタンドかと思ったよ。


「ほらもーイコさん。挨拶しやんと」
〜〜〜
「声ちっちゃ。なんて言いました?」
顔が良すぎて目の前行ったら消失しそうやん
「しませんって。ほら名字ちゃんビビり始めてますし、こんにちはーくらいはね?後はおれが間入りますから」
ヤダイケメン…
「もー何言うてるんですか」


………すっごい濃い人来た…。

この隣のキノコ然り、倒置法の鶏冠然りリーゼント然り、キャラと髪のインパクトが濃い人間はボーダーに沢山いる。寧ろキャラが濃くないと入隊できないのではないかとさえ思わされるこのボーダーで、キャラの濃さトップ争いに強制参加出来る人間が、まだ存在したとは。やだもうボーダー怖い。 常識バグりそう。


生駒達人です
「なんて?」
「生駒達人19歳大学生独身です!!」
「声デカ!ボリューム機能バグってんじゃないのこの人!!」
「名字、生駒"さん"だ」
「ボリューム機能バグってんじゃないの生駒さん!」
「生駒っちって呼んでネ」
「どうしよう奈良坂くん生駒っち凄い怖い!」


生駒っち威圧感凄いよ!二歳しか変わらないのに威圧感凄いよ!私も二年後に独身だったらこんな威圧感を醸し出せるようになるの?!独身凄くない?!
びゃっ!と奈良坂くんの後ろに隠れて、深呼吸を一つ。鼻から吸ってー、口から吐く、よし!

そろり、奈良坂くんの後ろから生駒っちを覗く。怖いもの見たさというか、怖いものこそ目を逸らしてはいけないと思う夏のホラー特番の時のアレだ。


「うわほんま二人ともべっぴんさんやわどうしよ隠岐」
「ありがとうございます」
「全く謙遜せんやん」

…これ、私褒められてる…?

「顔もちっちゃいし、目もおっきいし、鼻も高いし、アカンとこいっこもないなぁ。二人ともお母ちゃんに感謝せなアカンで」
「ありがとうございます。伝えときます」

………私これ褒められてる!


えっやだ生駒っちめちゃくちゃ良い人じゃん!私『顔面が派手』と『顔が怖い』以外の言葉久々に言われたんだけど!べっぴんさんだって!アカンとこひとつもないって!お母さんありがとう!!


「名字名前です。独身です」
「おん知ってんで。生駒達人です」
「奈良坂透です。独身です」
「おん知ってんで。俺も独身です」
「なんなんやろなぁ…この会話…」


水上先輩助けてぇ〜マリオでも可〜あやっぱマリオはアカン火に油〜。ヘラりと笑う隠岐が何かを言っている横で、生駒っちと握手を交わす。うわ大きい手。豆が潰れて硬くなってる。辻と全然違うなぁ。生駒っちの手はTHE!漢!!って感じ。


「関西弁だ。隠岐の隊長?」
「いちお隊長やらせてもろてマス」
「生駒さんはボーダー随一の旋空弧月の使い手だ」
「なんと」
「1万越えのNo.6攻撃手でもある」
「凄い!」
「え…どうしよ隠岐、奈良坂クンめっちゃ俺の事知ってくれてる…俺の事好きなんかな…?」
「そうなんちゃいます〜?」


弧月、1万越え、No.6。あの辻よりも生駒っちの方が強いんだ。凄い。キャラの濃さも凄い。凄いよ生駒っち。ところで旋空弧月の使い手ってなに?


「見てみたいなぁ」
「見る?」
「いいの?」
「ええよ。せやったらブース…ハッ!」
「怖い」


生駒っちの目が突然カッと見開く。この人基本表情全然変わんないくせに急にドガンと変えてくるのやめてくれないかな。ビックリするし怖いし。


「隠岐…これは…あれちゃう…?」
「アレですね」
「アレやんな」
「はい、紛うことなきアレです」


一瞬で無表情に戻った生駒っちが何やら隠岐とウンウン頷きあっている。なに、アレってなんなの。疎外感エグいんだけど。ねぇ奈良坂くんもそう思うでしょ


「名字ちゃん」
「はい」
「奈良坂くん」
「はい」


スッ…と生駒っちの目が細まる。なんだ、何が起きるんだ。


「………作戦室、おいでー」


恐る恐る、けれど期待に満ちた表情(無表情だが)で、私達を見る生駒っち。なんかよく分からんが誘われたらしい。奈良坂くんと目を合わせる。先程生駒っちと隠岐がやってたみたいに二人でコクンと頷いて。


「行く行くー!!」「行く行くー」


生駒っちの表情がパァッと明るくなった(無表情だが)ので、どうやらこれで、正解らしい。



仲良し3人組+生駒さんのお話。10分で書き終わった…めちゃくちゃ楽しかったです。ありがとうございした。因みにこの「行く行くー!」何かわかりましたか?分かった方は本当にありがとう…!!タイトルは『そのくらいがちょうどええ』には書かれていませんが、実は冒頭台詞らしいですよ。


Thank you for the 1st anniversary



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