【般若の面】-般若面、あるいは単に般若は、「嫉妬や恨みの篭る女の顔」としての鬼女の能面。(ウ○キペデ○ア参照)



名字名前を一言で表すとしたら"いい女"である。


まず見た目が良い。スタイルも良い。可愛くなりたいと努力する姿が良い。無意識なのか少々ボディタッチが多いところも良い。性格に関しては、人の感情に敏いなんて次元ではない真っ黒の狂犬が"懐いている"という点からして良いのは確実。任侠物のイメージが強過ぎる方言を隠しきれなかった時の誤魔化し方も下手くそ過ぎてなんか良い。

特に、照れ性で人見知りのきらいがある細井が直ぐに懐いたことや、他人よりも女子のあれそれを面倒だと感じやすい自分が、割と早い段階で『名字名前は良い奴』だと認識した等々エトセトラ。意外と世話焼きな所は大変良いと思う。

色事に夢中な男子高校生のネタ話に必ず君臨する"いい女"。それが名字名前である。


「おっまえ、かわいないな。」

「………は?」


まあそんな上から目線の『いい女論』は一先ずそこらに置いといて。
俺が言いたいのは、般若は実在するっちゅーことや。それも、思ってたよりずっと近くにな。


可愛いは作れるって謳い文句にケチつけるわけじゃにゃあけど可愛いを作れるベースがまず見当たらん場合心の治安は如何なものか



「いないじゃん」
「せやな」


メーデーメーデー、こちらボーダー本部B級作戦室フロア生駒隊作戦室内、標的の姿は見えません。どうぞ。


「生駒さんいないのにわざわざブロッコリーと二人きりで生駒隊作戦室にいる意味は?」
「あんまりやろがい。えっなんて純粋な目」
「あーどうしよう暇になっちゃった。どっかで喧嘩とか火事とかしてないかなぁ」
「さてはお前江戸っ子やな?」


借りていた座布団を枕代わりにしてゴロンと寝転がる。宿敵の本拠地であるにも関わらず、何故か妙に居心地が良いこの娯楽部屋(生駒隊作戦室)の天井には数えるシミすらなくて。特に覚える気もない将棋の駒を指先で弄って、ついでに足元にいるブロッコリーの背中を緩く蹴る。意外と固くて、あぁ暇だ。


「蹴んなや減るやろ」
「何が減るの?毛量?」
「んならもっと蹴ってって言うわ」
「ドMか」
「懇願や。それも神に縋るタイプの」
「水上神様とか信じてんの?」
「焼きおにぎりとか美味いやん」
「焼くなよ。七人の尊すぎる命をなんだと思ってやがる」
「別に焼くやろ。焼いたら美味いの知ってんねんから」
「別に焼くけど。この話の流れでは焼くなよ。不謹慎と罰当たりのダブルパンチに私の不運貯金が溜まりまくってんだよ」


あぁもう今日絶対いいことない。この現実主義な男のせいで私は帰り道溝にハマったりトラックに泥水かけられたりするんだ。せっかく睫毛も可愛くできたってのに肝心の生駒さんがいないし、既に不運ポイント消化中だったりすんのかな、神様ってば本当に目敏いんだから。


「帰ろうかなあ」
「おー帰れ帰れ」
「あれ大変だ。帰る気力がないぞー?」
「そんな気力使うことしてへんやんけ」
「生きてるだけで気力しか使わない。あー無理水上気力買ってきて。多分キャン○ゥとかにある」
「あったらええなのラインナップに気力は含まれへんんねん」
「ああ言えばこう言う男だなお前は」
「言わせてるのがこの女やねん。はよ帰れ」


ぺしり。水上の背中に乗せていた足首を叩かれた。靴下越しでも結構痛かったぞこの野郎。文句を言ってやろうと腰を起こすと、そこには意外にも真剣な顔をした水上がいて。将棋盤と睨めっこしてる怖…次のランク戦のことでも考えてんのかな…。ならば邪魔するのは良くないな、帰ろう。


「帰る。また明日ね」
「おー」


こちらを一切見ずに振られた片手に、勢いをつけた手を一瞬だけ重ねる。パチンッと軽い音がしたのを確認したら、娯楽部屋からぬるりと退出。本日は標的の姿を確認出来ませんでした、どうぞ…


「おわ。なにしてんねん」
「あ。」


標的が目の前に現れました。どうぞ。


「生駒さんのこと待ってたんです」
「そーなんお待たせ。なんの用?告白なら遠慮すんで。俺は心に決めた人が」
「告白じゃないんで大丈夫です」
「おったらええなぁ…」
「おらんのかい」


のんびりとした雰囲気の中で確かに感じるピリリとした敵意は、私から発せられたものなのか、生駒さんからか、それともお互いか。


「んで、わざわざ作戦室まで押しかけて来て、なんの用?」


少々言葉に棘を感じるものの、無表情。隙だらけのようで全く隙の無い、鉄壁の男、生駒達人。痛いところをサラリと突いてこられたのは私のヘマか、根拠が曖昧過ぎる京都の都市伝説であるアレが原因か。


「あー…」


ここは素直に『睫毛見てもらいに来ました!』と言うべきなのか。いやそれはあまりにも馬鹿っぽい気がする。「馬鹿は禁句や!」の関西人に『馬鹿っぽい』と言われるのは流石にダメージがデカい。それにもし馬鹿と言われなかったとしても、宿敵に『睫毛見てもらいに来ました!』と言われて『そうか可愛ええやん』の日本人特有のお世辞トークをこの男がするとは思えない。どうしよう、詰んだ


「なんやねん、なんか言いや」
「あー…うん、えっと…」


メーデー、メーデー、此度のデュエルは私のヘマによる逃亡で不戦敗になりそうです、どうぞ。


「腹でも減ってんの?」
「…は?」
「この前の威勢はどこいったんかなーて。あ、元気ない理由とかは聞いたる義理ないから聞かんで。女の子の慰め方なんかよぉ知らんしな。あ、こんな言い方したらモテへんみたいやんまあモテんけど。」
「モテんのかい」


しかもすっごい喋るし。息継ぎどこでした?エラ呼吸か?そういえば細井も照れた時とかエラ呼吸してた気がするし、水上も面倒事を避けたい時とかエラ呼吸してた気がするし。生駒隊どうなってんだ。

いやそんなことよりも。これは不戦敗から逃れるチャンスなのでは。天からのお助け、罰当たりな水上を叱り蹴った善が勝利の神へ伝わったか?


「行く」
「いや誘ってへんけども」
「私もお腹減ったと思ってたからいいよ」
「さも俺が腹減ってたみたいに言うやん」
「さあ行こう生駒さん」
「ほんで話聞かへんし」


ずるずるり。生駒さんの腕を掴んで食堂まで引き摺り歩く。なんやかんやと文句を言いながらも、食堂に着いたら生駒さんは流れる様にカレーを注文していた。ちなみに私はラーメンを注文した。我慢せずに好きなものを幸せに食べると可愛くなれるって近所の犬も言ってたし。


「この時間にラーメンて。いただきます」
「この時間にカレーって。いただきます」
「なんやアレやな、自分がラーメン啜ってたらあれ思い出すわ。吸魂鬼」
「誰がデ○イーターじゃ。さてはこの前の金ロー観たな?」
「観たけど聞く?吸魂鬼映るたんびに自分の顔思い浮かんでぜんっぜん集中出来んかった」
「聞くって言ってないし その時点で私を思い出してんならラーメン関係ないし 吸魂鬼って言い方も間違ってないけどなんか腹立つし」
「エクスペクトパトロォォぉぉ…」
「言わせんぞ。まだ食い途中じゃ」
「せやんな。食べ物粗末にするのはアカンわ」
「水上に燃やされた神達が怒りますからね」
「食事中ゴメンネ。詳しく説明してくれん?」
「はっ、ぜってぇ嫌です。どうですか?疎外感を感じながら食べるカレーのお味は」
「殺意のスパイスがよぉ効いてて絶品やわ」


ぴりり。殺意のスパイスが舌先と空気を刺激する。半分以上残ったラーメン、視界の端に映る東さんと荒船の苦笑い。そういえば私はなんで生駒さんとご飯食べてるんだっけ。


「お前ほんまかわいないな」
「私の事可愛くないとかいうの生駒さん位ですよ?私幼少期は妖精さんって呼ばれてたんですから」
「吸魂鬼の間違いちゃう?」
「実は魔法だって使えるんです。輪廻転生」
「閻魔を慕う方の妖精やん。えっ俺殺されんの?」
「機会があればっ」
「百点満点の笑顔やん」
「可愛いですか?」


女の一番の化粧は笑顔である。お互いの割り箸に入った一本の亀裂には気づかないフリをして、何度も鏡の前で練習した"自分が一番可愛く見える笑顔"を貼り付ける。


「生駒さんに可愛ないって言われたんで、可愛いって言って貰えるまで付き纏おうと思ってるんです」
「物は言いようやけど要はただの堂々としたストーカーやんな?」
「で。どうですか?可愛いですよね?」
「いっこも話聞かんし、そもそも俺が言ってんのは、そういうことちゃうねん

「カレー美味しそうですね」「一口食べる?やらんけど」「差し出されてもぜってぇ要らねぇので大丈夫です」「やっぱかわいないなぁ」



mae ato

Not cute!!


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