コスプレ潜入捜査

[FFR Airlines flight 384 to Paris Charles de Gaulle is now boarding at gate 144.]
(FFR航空 384便、パリ シャルル・ド・ゴール空港行きは144番ゲートにて搭乗中です)

夜の羽田空港の景色は壮観です。
本日潜入捜査の最終日を迎えました。
先日の夜ですか?
いやあ、もうすごかったです、寝たのが結局朝の5時で正午まで寝てましたからね。
俺もすっかり大人ですね。

一回意識飛ばしたのはわかってるんだけど確かに叩き起こされたね
一ヶ月分の何か溜まってたものが発散されたんじゃなかろうか…
あのイケメン、起きた時にはすっごいスッキリした表情で俺が起きるのずっと待ってましたからね…
実際体は軽くなりました、いい兆候です、あれ、俺も何か溜まってたってことかな…?

その後にジン様からのネズミ駆除も終わった連絡をいただき一応外出許可は下りたので本部のお仕事をすることにしたのです。
本日のシャルル・ド・ゴール空港行きの最終便ももうすぐ離陸。
デスク周りでフライト情報をチェックするフリをしながら、本部がマークしていた人物の搭乗予定便とパリへの到着時刻をディスクに書き込む。

「本条さん、まだ残られます?」

『あ、はい、少しまだやることがあるので』

「じゃあ戸締まりお願いしてもいいですか?」

『ええ、お疲れさまです』

さっきまで今日の報告書を整理していたCAを見送って一人部屋に残る。
今の俺は黒髪のウィッグだし黒のカラコンも装着、二日前からこの航空会社のパイロットである本条という男に成り済ましている。

…顧客情報はあったし、あとはこの社員情報か
局長によるとこの会社内にフランスへの麻薬密輸ルートがあるとかって話だし、仲介者もほぼわかってる
昨日は接触して一緒に食堂に行ってご飯だって食べてきたし、わりと順調だね…

『…Ça y est.』
(…見つけた)

やりました。
これで任務完了ですね。
その場で本部に連絡をしてメールも送信。
ターゲットにしていた顧客も明日パリに到着すると同時にお縄になることだろう。

お、局長もお返事早いですね
今は本条さんという方に成り済ましているので俺のパイロット服姿を拝みたければもうちょっと待ってくださいね…

相変わらず俺に写真をねだってくる局長には呆れましたが、これで仕事も一段落。
あとは本物の本条さんを隔離している所に戻って制服をお返ししてくるだけですね。

『Adieu...』
(バイバイ…)

きっとこの会社も日本から制裁が下される筈です。
あ、降谷さんにはお伝えしてあります。
上からの指示待ちだそうですが、俺が今決定的な情報を掴んだので警察が動くのも時間の問題でしょう。
戸締まりをして、3日間お世話になったオフィスに別れを告げてからお仕事道具の入ったスーツケースを転がして空港内を歩いていました。

…あれ、何事かな?

ザワついた夜の空港。
野次馬の隙間から黄色い規制線が見えた。

「警察です、通してください」

あちゃー…高木さんだ
それにあの女の人…佐藤さんでしたっけ、お二人ともいらっしゃるなんて…
まあ、今の俺には関係ないか、この容姿だしわからないよね
スルーしよ、スルー

「すみません」

『はい…?』

え、な、なんですか!?

佐藤さんに手を掴まれて立ち止まった。

「警察です
貴方、FFR航空のパイロットですよね?」

『え、ええ…何事ですか?』

「先ほどFFR航空のCAが何者かに刃物で斬り付けられ、今病院に搬送されています」

『え!?』

それってさっきのCAさんだよね!?
嘘でしょ、なんでそうなるの…!

「おそらく犯人はまだ空港内にいると思われるのですが捜査にご協力いただけませんか?」

『きょ、協力って言われましても先ほど彼女と部署で別れを告げただけで…私はそれきりなので何かお役に立てるような証言はできないかと…』

「先ほど?何分ほど前ですか?」

『そうですねえ…
私に戸締まりを頼んで彼女が出て行った時、パソコンの画面で見た時間は21時過ぎだったかと思います』

「21時過ぎ…ということは20分ほど前ですね、その間貴方は何をされていたんです?」

『今日のフライトの渡航記録や報告書をチェックしていました
部屋からは一歩も出ていません、なんなら部署のセキュリティーをチェックしてくださいよ!
つい5分ほど前に私のICカードでちゃんと部屋の戸締まりをした履歴が残っている筈ですから!』

「千葉君、セキュリティーの履歴と防犯カメラのチェックをお願い」

「は、はい!」

「それから貴方の荷物、確認させていただくことは可能ですか?」

『はい?』

いや、それはマズい…
スーツケースの中身、仕事道具だから衣服とか入ってないしパソコンとディスクだらけだし…

「高木君、凶器のサイズは?」

「え、ええと、刃渡り20cmほどの包丁ですね」

「そう、貴方が持っているこの小型のスーツケースにも収納できるくらいの大きさなのよ」

『ま、まさか私を疑ってるんですか?
勘弁してくださいよ、私は部屋にずっといましたって!』

「貴方、部屋の戸締まりをしたということは最後に部屋を出たのよね?
ということは最後に被害者の姿を見たのは貴方だということになるのよ?」

ちょっと待ってください、また事件に巻き込まれていませんかね…

『それは私が犯人だという証拠になるんですか?』

「今のところ一番貴方が疑わしいのよ
そしてそのスーツケースから凶器が出てくれば貴方の言い分は署でゆっくり聞いてあげるわ」

『ちょっと、刑事さん…!』

スーツケースを奪われそうになって慌てて取り返す。
もうやめてください。
逃げます。

「高木君!逃げたわ!追うわよ!」

「はい!」

もう腹を括りました。
この3日間で空港の地図は頭に入っています。

「すばしっこいのね…」

「さ、佐藤さん、あの先は行き止まりです」

「え!?」

角を曲がった所で二人を正面にしてため息を吐き出した。

「観念しなさい
貴方が必死で守っているそのスーツケース、見せなさい」

『取引しましょうか、佐藤さん』

「…!」

「この声…まさか…」

『お久しぶりです、佐藤さん、高木さん』

ウィッグを落としてカラコンをはずした。

「「クロードさん!?」」

『全く、仕事で来ていたのにこんな事に巻き込まれるなんてとんだ貧乏くじですね
申し訳ありませんが仕事の都合上スーツケースの中身はお見せできません
それに俺はずっと部屋にいたのも本当ですし、犯人でもありません
そこで提案です
この3日間俺はFFR航空に潜入捜査をしていたのでそれなりの情報は提供出来るかと思います
その代わりといってはなんですが、このことは警視庁に内密にしていただきたいのです
こちらも仕事なので』

高木さんと佐藤さんは顔を見合わせた。

「情報って…どこまでのことを言っているの?」

『そうですね、ここ一週間ほどの社内の動向や人間関係、それからプライベートでの被害者の情報など色々ありますが』

「…わかったわ」

「い、いいんですか、佐藤さん!」

「仕方ないわ、それにクロードさんも早く帰る理由がありそうだし
ここのところ目暮警部もクロードさんに情報提供の依頼をよくしていたみたいだし、使える手はすべて使っておくものよ
そしたら帰してあげましょう、向こうの都合ってものもあるみたいだから」

さすが佐藤さん…!
話が分かる方ですね!

ここの所警視庁に出入りしていたのは確かに目暮警部からの依頼がほとんどだったのだが、その時に佐藤さんとも個人的にお話する機会があった。
なかなか頭のキレる方だとは思っていましたがこんなにも話の通じる方だったとは。
ありがたいですね。

「それにしても似合ってるじゃないの、パイロットの制服なんて
可愛いわねー」

『佐藤さん、男に可愛いは禁句です』

「あら、年下の子にはオッケーだと思ってたけど?」

アハハと笑った佐藤さんは素敵なのでもう許しましょう。
仕方ありません。
スーツケースからパソコンだけを取り出して、FFR航空のためだけに作ったデータバンクを開いて被害者の情報を全部渡してあげました。
それから社内の動向を見せたら佐藤さんはちょっと訝しげにデータを眺めた。

「これって…」

『ええ、内部に麻薬の密輸ルートが存在しています
フランスだけでなく世界を相手にしたルートでして、そのトランジット地点が丁度この羽田
それで今回捜査をしていたのですがこれも時間の問題です、警察が動きますから
それから被害者の件ですが、どうもストーカー被害に遭っていたみたいですよ
彼女の家の近くの警察署にも何度か相談されたという報告を受けています』

「そ、それじゃあ犯人は…」

『そのストーカーの可能性が高いでしょうね
そして容疑者候補は3人、彼は現在交際中の相手だそうです
真ん中の方は元カレで度々ストーカーをしているそうです
最後の彼は、上司ですね、社内でもパワハラで有名です
三人の個人データについても追加しておきますので今日はこの辺りでよろしいですか?』

「ええ、十分よ
ありがとう、いつも助かるわ」

『ではそういうことで』

データをディスクにも入れてやり、佐藤さんに渡してパソコンをしまった。

「あ、クロードさん」

『はい』

「あのさ、良かったら私と写真撮ってくれない?」

『は、はい!?』

「だってレアじゃない、こんなの!
可愛いわよー、大丈夫、私的にしか使わないから」

『えっとそれは…』

「いつもスーツでしか来ないからレアじゃない!」

何故か佐藤さんと記念撮影する羽目になりました。
まあ、いいでしょう。
これで警視庁に潜入捜査しているのを黙っていただけるのでしたら構いません。
高木さんなんか驚いてるけどいいのかな。

「可愛いー、やっぱりパイロットの制服って夢があるわよねー」

『まあ、本音言うと俺もまさか仕事でこの制服着られるとは思ってなかったので棚からぼた餅ですけどね』

ヘラリと笑って荷物を纏める。

「またお世話になっちゃったわね、それから疑ってごめんなさいね」

『いえ、気にしてません、早期解決のためでしたらいつでもご連絡お待ちしてますので』

じゃあ、と佐藤さんに手を振って別れ、空港を後にした。

「…あのー、佐藤さん、良かったんですか?」

「ええ、目暮警部も信頼してるしここまで容疑者を絞り込めたなら後は私達警察の仕事よ
フランス人の彼の仕事じゃないわ」

「そ、それはそうなんですけど…その写真とか…」

「あら、いいじゃない
彼、可愛くて私好みよ?小動物みたいだし」

「さ、佐藤さん、僕は…
必ず佐藤さんを振り向かせられるような男に…」

「佐藤さん!こんな所にいらっしゃったんですか!
探し回りましたよ、防犯カメラの解析とセキュリティーシステムの履歴の解析が終わりました
あのパイロットの言った通り、彼にはきちんとしたアリバイが…」

「その件についてはもう大丈夫よ、千葉君、大きな収穫があったから
さ、行くわよ、高木君も何してるの?」

「え…あ、はい…」



さて。
しつこい局長のために制服姿で一人撮影会です。
いや、コスプレってこんな感じなんですかね、楽しいです。
10枚は流石に撮り過ぎたかな…とか思いつつも着納めなので撮っておくことにしました。
その中から3枚程厳選して局長に送りつけて任務終了。
3日間眠らせておいた彼にも制服を返してあげて、何事もなかったかのようにその場を退散。
電車に乗ってから東都環状線へ乗り換える途中、思い出して電話をかけた。

『…もしもし、お疲れさまです』

[3日間お疲れさまでした]

『今帰りなんですけど、ちゃんとした証拠が手に入りましたので今降谷さんの端末の方に送ります
警視庁に横取りされる前に動いちゃってください』

[警視庁?]

『ええ、先ほど空港で殺人未遂事件に遭遇しまして容疑者にされたものですから少々取引を行ってきました』

パソコンを開いて降谷さんにデータを添付して送信。
多分この時間なら警察庁でお仕事中だろうし、今日は会えないかな。

『まあ、空港での事件の方が警視庁にとっては優先度が高いと思われますので密輸ルートに関してはちゃちゃっと公安の方でなんとかしちゃってください
確かに送信しましたから、ご確認ください』

[ええ、届きました
これですね…なるほど、確かにこれで証拠は揃いました
僕から上に話しておきますのですぐに取り締まれますよ、情報のご提供に感謝します]

『いえ、こちらも世界的な問題だということはわかっていますから
ではまた明日にでもお会いしましょう、お疲れさまです』

[蛍さん]

『はい?』

危うく電話を切るところでした。
電話を持ち直してスーツケースを掴み直す。

[送られてきたデータですが、足りないものがありますよ]

『え?それで全部でしたけど…』

[……]

電話の向こうが静かになった。
そしたら電話が切れてしまったので、何だよと思っていたらまた携帯が鳴った。
あれ。

『も、もしもし…?』

[蛍さん、今どこにいらっしゃるんですか?]

『え…と、品川駅構内ですけど、なんで安室さんから電話が掛かってくるんですか?』

[奇遇ですねえ、僕も今丁度品川にいるんですよ]

…はい?

目が点だよ。
どういうことだ。

[とりあえず改札を出てロータリーに来てください、車は回してあるので]

『あの、ちょっと状況についていけていないんですが…』

[本部に戻る途中だと言ったらおかしいですか?]

いえ、何もおかしくないですが…なんでこう、なんていうかタイミングがいいの?
いや、これって最早タイミングの問題じゃないよね、これ

『とりあえずロータリーに行けばいいんですね?今行きますから…』

電話を切って改札を抜けて階段を下りていく。
なんかどうもトントン拍子で気味が悪い。
こんなこと言ったらアレですが。
言われた通りロータリーに出たらいましたよ、見慣れた白いRX-7が。
近付いたらロックが外れたのでスーツケースをトランクに入れて助手席に乗り込んだ。

「お疲れさまです」

『どういうことですか』

「そのままですけど?
これから警察庁に向かう所でした」

『それでなんで品川にこの時間にいるんですか』

「この二日間、蛍さんの仕事の終わる時間から考えて空港の駅に到着する時間はわかっていました
それに僕を呼ばないということはタクシーを拾って帰るか電車で帰るかのどちらかでしょうが、蛍さんは僕が警察庁に呼び出したり緊急の用事でなければ電車を使おうとしますし、米花町に戻るなら品川で必ず乗り換えますからね
昨日、一昨日よりも到着時間が遅かったので疑問に思いましたがまた事件に巻き込まれていたんですね…納得しました」

車が発進し、首都高に向かっていく。
これは完全に道連れにされるパターンですね。
家帰ってさっさと寝ようと思っていたのに警察庁で一晩ですか。

『あのー…家にはいつ帰れるんでしょう?』

「仕事が終わり次第です
貴方がいらっしゃれば上もすぐに動いてくださいますから」

…やっぱり、そういうことだったのね…
期待して損した

はあっとため息を吐き出したら頭を撫でられた。

「すぐ終わらせてさっさと帰りましょう」

『…なんで俺まで同席しなくちゃいけないんですか』

「なぜって…3日間も会えなくて僕が我慢出来たと思ってるんですか?」

『…はい』

貴方、バリバリの仕事人ですよね?
前だって3週間会えなかった時ありましたよね!?

「酷い話ですね」

『…3週間会えなくて平気だった人がたった3日会えなかっただけで我慢出来なくなるとは思えません』

「3週間は気が狂いそうでしたよ」

『そんな態度しなかったじゃないですか』

「それは蛍さんですよね?
折角車で送ると言って口実を作ったのに拒否されたり…」

『…そうでした』

「僕は、3日ですら貴方が恋しくなりますよ
口実を作ってでも貴方にお会いしようと思っています」

『……』

どうしよう。
口説かれています。
ここまで直球ストレートで言われると流石に俺も三球見送りのストライクですよ。
手も足も出ません。

う、嬉しいんだけど駅で待ち伏せとか、そういうの反則ですよね…?
もういいよ、そんなに会いたかったなら警察庁にも付き合ってあげますよ

こうやってまた許してしまうんだなあ、と思いながらチラッと運転中のイケメンを眺めていたらスマホが音を立てた。
取り出してみたら佐藤さんからで、さっきの写真が添付されていた。

[クロードさん、さっきはありがとね
おかげで捜査も結構進んだわ
今度からファーストネームで呼んでもいい?
なんだかクロードさんっていうのも堅くて…いいかな、ルイさん?]

さ、佐藤さん…!
お姉さん的存在である佐藤さんからこんなメールをいただけるとは…!
ありがたいです、ファーストネームでどうぞ!
全然、もう、大歓迎です!

返信をパパッとしてたらジロリと運転席から視線が飛んできました。

「どちら様です?」

『警視庁の方です』

「そうですか」

『何を心配してるのかわかりませんけど、お姉さんみたいな方ですからご心配なく』

添付された写真を見せたら急ブレーキをかけられました。

な、何事でしょうか…

「さっき言いましたよね、データが足りてませんと」

『え?ああ…確かに仰ってましたね
でもあの件についてのデータはあれだけですので…』

「僕との約束をもう忘れたんですか?」

『約束…?』

「どうして警視庁の方が僕よりも先に貴方の制服姿の写真を持ってるんですか?」

『……ま、まさか写真送らなかったってことなんですか!?』

「送ってくださいと言いましたよね!?
必ず送るように言ったのに最終日まで送ってくださらないので待ちくたびれましたよ!」

えええ、データってそういうこと!?
素直に写真って言ってくださいよ!

『い、今から送りますから…
あ、でも10枚くらいあって選別するのに時間が…』

「そんな時間は必要ありません、全て送ってください」

『ええ!?』

「選別は僕がします」

『いや、あの…』

モタモタしていたらスッとスマホを抜き取られ、イケメンは勝手に俺のメールを開いて自分の端末に、フォルダに入っていた写真を10枚全部選択して送ってしまった。
その操作の手慣れたこと。
そして送るだけ送ってまたすぐに車を発進させました。

『……』

「もうすぐ着きますよ
すぐに終わらせる予定なので心配しないでください
そしたら家までちゃんとお送りしますから」

…どうしてこうも俺の写真を集めたがるんでしょうか
1回安室さんの端末覗いたことあるけど、まさか俺の寝起き写真で一個フォルダが作られているとは思いませんでしたよ…
確かこの前の潜入捜査のスーツもあった気がするので潜入捜査シリーズのフォルダが作られるかもしれません…

『安室さん』

「はい?」

『…いえ、なんでもありません』

文句を言おうと思ったけど、考えてみれば俺も降谷さんフォルダと安室さんフォルダを作っていたので文句を言えない立場にあることがわかりました。

お互い様なんですね…
もういいです、許します

『…明日サンドイッチ食べたいです』

「明日はポアロのシフトが入っているのでいつでもいらしてください」

『お昼頃行きます』

RX-7は警察庁の駐車場に入って行き、暫くして停車しました。
警察庁に入ってちょっと待たされたと思ったら、なんとおスーツ姿の降谷さんが降臨されました。
今日一番のご褒美です。

「デレデレしてないでシャキッとしてください、仕事ですよ」

そしてこのドライな対応です。
はあっと小さくため息を吐き出して襟を整えた。

『デレデレなんてしてませんよ
さっさと仕事を終わらせてそのネクタイを解いてやりたいものですね』

「脱がせてくださるんです?」

『ええ、そのつもりです』

エレベーターに乗り込んでドアが閉まった瞬間、壁に押し付けられて口付けられた。

「いつもと違うシチュエーションというのも、たまにはいいですよね」

ぼ、防犯カメラ…撮られてますけど…!
いいんですか!?

『後で防犯カメラを解析されないことを切に願います…』

何事もなかったかのように離れた降谷さんは、会議室のある階に到着して降りる時に俺を振り返った。

「今日も香水つけてますね…
僕の部下に会ったら、わかってますね?」

部下さん、貴方達まで最近この人の嫉妬の餌食になっているようですよ…
気をつけてください、降谷さんは用意周到ですからね…

降谷さんの後をついていって、日付が変わる前まで警察庁でお仕事でした。
明日はポアロでゆっくりしたいと思います。







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