ネズミの噛みつき方

「また連絡する、異常があればすぐに連絡しろ」

『…はい』

杯戸町の交差点でぽいっといつものようにポルシェから捨てられました。
今日も生の鯵が2匹。
新鮮なうちにお刺身にでもしようかと思って歩いていたら、久しぶりに大尉を見つけました。

おおお、久しぶりだね、大尉!
今日はどこに連れていってくれるのかな、また今日もポアロに行くんです?

わくわくしてきたので今日も大尉の後を付いていくことにしました。
交差点を渡って路地に入り、それからちょっと早足になって追いかけたら塀に登られてしまったので俺も構わず塀を歩いていました。

「何してるんだ、馬鹿猫」

おや。
今度はイケメンの登場です。
大尉を横目に、車でゆっくり近づいてきた運転手を見た。

『大尉』

「何?」

『猫、ほら』

指を差したら大尉はまた歩き出してしまった。
それをまた追いかけていたら塀が途切れて立ち止まった。

「諦めるんだな」

『…大尉、いなくなっちゃった
ちょっと秀一のせいだよ!?』

「メス猫を追いかけて何をしてるんだ、発情期の猫か」

『はあ?
大尉はメス猫じゃありません、オス猫ですよー』

「同じことだ、男を追い回しているのか?」

『何それ、俺今ちゃんと彼氏いますけどー』

「最近彼に構ってもらえていないんだろう?」

『なっ…ち、違います…!』

図星です。
最近俺も別件の潜入捜査が入ってしまい、安室さんも本業が忙しいようで夜来てくれる時間がないそうです。
ポアロに行ったら早退されたと言われたり警視庁に用があっても警察庁から要請がないので降谷さんにもお会いできる状態ではありません。

「暇なのか?」

『まあ、そうだね
今丁度ジン様と会って取引は終わったところだし、なんならビジネストークでもしてランチします?お兄さん』

「俺を不倫相手にさせる気か?」

フッと笑って秀一は煙草の煙を吐き出してロックを外した。

「乗れ、蛍」

『お邪魔します』

塀から降りて助手席にお邪魔して、シートベルトを締める。
マスタングで向かった先は初めて行く場所だった。

『ねえ、どこ行くの?』

「都内デート、とでも言っておこうか」

『デートって…そんなこと言ったら怒られるからやめて
あの、相手が相手なので秀一もちゃんと考えて物を発言してくださいね』

この人絶対面白がってるよ。
この野郎。
イケメンだからって調子に乗りやがって。

「それで、この前の実家の話はどうした?」

『え?何、いきなり
別に、相変わらずだけど…何年かぶりにパパと話したねえ…
怒られただけだけど、結局組織に潜入してるのも全部バレてたみたいでねー、手を引けってことでずっと怒ってたみたい
ま、別に今更それはいいんだけど…とにかくパパがイケメン過ぎてびっくりしたってことくらいかな
俺も親子なんだし、あんな風に歳取れるのかなーなんて』

ヘラリと笑って秀一の肩をペシッと叩く。

『俺には縁のない世界かな』

「お前もなかなか自分のことにだけは鈍感だな」

『え?』

「何故男にも女にも言い寄られていたのかわかっていないのか」

『それいつの話?』

「ニューヨークにいた頃と…それからお前が自分で言っていたパリでの話だ」

『え、俺、自分で何か話した?』

「ああ、酔いが回って自分で中学の頃の話をしていたじゃないか
男子トイレに連れ込まれた話と、女子4人に輪姦されそうになった話、それから高校生の時は…」

『も、もういいよ、わかったから!
それがなんで俺が鈍感な話になるわけ!?』

「呆れた奴だな
ニューヨークで何度レイプ未遂のお前を助けたと思ってるんだ」

『…5度くらい?』

「8度だ」

『え…』

それ本当ですか…?

苦笑してうな垂れていたら、秀一はキッとブレーキを踏み込んだ。
急ブレーキをかけられて頭をダッシュボードにぶつけた。

『痛っ、ねえ、いつも急ブレーキかけるのやめてくれない?』

「すまない、わざとじゃないんだが」

『絶対わざとですよね!?』

結局たんこぶになりました。
痛い。
猫には逃げられるし頭はぶつけるし、もう踏んだり蹴ったりです。

「さっきの取引の話だが…」

『また急に仕事の話なのね…』

もういいです、このお兄さんはそういう人でした。
とりあえず最新の情報は提供しておいて、今日は六本木のカフェでサンドイッチをいただいております。
勿論、秀一持ちです。
情報提供料の一部です。

『……』

「蛍?」

『つけられてたみたいだね、どうも視線を感じると思ってたんだけど…
多分俺がポルシェから降ろされた時からかな、ただの下っ端ネズミだと思うけど
俺がジン様と接触してるの、知られてるのかも
それに俺が秀一と接触してるのを見られた、口封じしないと』

「今日の装備は?」

『フル装備
仕事してくる、すぐ戻るから』

スマホを取り出してジンに連絡。
カフェを出てから始末可能という指示を受けて画面を見て歩いていたら、肩をぶつけられて振り返った。

『あ、すみません』

「いえ、こちらこそ」

そのまま手首を引っ張られてふらりとよろけた。

「そのまま来てもらおうか」

『あの、どちらさまです…?』

「しらばっくれるなよ、組織の猫め」

猫…あ、そう、俺のこと知ってるんだ…
じゃあ話は早いね

『…組織の命令ですか?俺を始末しろと』

「ああ」

右手首をぐっと握るように掴まれてそのまま連行。
裏路地に連れ込まれて壁に押し付けられた。

『それはおかしな話ですね』

「何がおかしい?」

『ジン様は、貴方を始末する事を許可した筈ですけど?』

左手で取り出したスマホの画面を見せてやったら相手の顔は引き攣った。

『貴方が組織に迷い込んだネズミだってことはわかってます、そろそろ手を離していただけませんか?
貴方を始末するための愛用の拳銃が取り出せませんから』

「だったら尚更…」

『じゃあ、切り落としますね』

左足を軸に下から足を蹴り上げた。
靴底の刃で俺の手を掴む腕を切り落としてUSPを取り出し、呆然としている男の額に銃口を押し付けた。

『Adieu.』
(さよなら)

銃声が響いて目の前に物体が一つドサリと落ちた。
それから俺の腕にぶら下がっていた腕の切れ端をその場に捨てた。

『ジン様?終わりました
どうも俺のこと知ってたみたいなんで…

あ、まあ、そうなんですけど…ジン様と別れた後からつけられてたみたいでちょっと引っかかってただけなんで
もう少し洗ってみます、どうも単独犯ではないと思われるので

また連絡します』

まあ、死人のことは関係ないって言うよね、ジン様のことだし
でもこの人が単独犯でなければまだ俺がジンの猫だって話はこの人の仲間に漏れてるわけだし、また俺が狙われるだけだし、ジン様も俺に手が出されたとなれば黙ってないだろうし…

掃除屋にも連絡しておいて靴も元に戻し、欠伸をしながらカフェに戻った。

「遅かったじゃないか」

『なんか…ちょっと色々あって…』

「どうした、顔色が悪い」

『そう…?
なんか気味悪い男だったからかな』

食べかけだったサンドイッチを見て、眩暈がした。
吐き気がして咄嗟に口元を押さえた。

「つわりか?」

『馬鹿言うな…!』

クソ…何だ、これ…
あ、そういえばアイツ、俺の手首を掴んでた時にずっと強めに握ってたような…

手首を見たら細い針が差し込まれていた。

『Putain…』
(クソ野郎…)

手に持っていた針を俺の手首に刺してたってわけか…
俺の動きを鈍らせるために用意したみたいだけど、薬の回りがちょっと遅かったみたいだね
俺がアンタの腕を切り落としたのは予想外だったんだろうけど…

『秀一、ピンセット持ってる?』

「工具ならあるが…流石にピンセットはないな」

この役立たずめ。
手首からなんとか針を抜き取ってテーブルの上に置いた。

「薬か」

『そうみたい…ちょっと眩暈が酷いから帰る』

そっと額に手が触れた。

「熱がある、すぐに送ろう
それとも病院に搬送が必要か?」

『いい、家で』

この件はちょっとジンに報告しておこう。
俺が手を下せる範疇ではなさそうだ。
それに俺に手を出したんだ、俺が余計なことをしなくてもジンが直接出てくれるはず。
まあ、厄介ごとは飼い主に頼むのが一番てところだ。

「蛍」

『ん…何?』

「心当たりはあるのか?」

『いや、ないね…
どうせ下っ端のネズミのことなんか知らないよ
それでも俺の事を知ってるなんて、そこそこの情報屋か潜入捜査官
でも潜入捜査官なら俺の素性くらい知ってる筈、こんな汚いやり口はしない
汚い情報屋だろうね…』

マスタングの中で死んでいたら秀一は運転中なのに電話をしていました。
安全運転してくださいませんかね。
もしもし運転は禁止の筈ですよね。

『ジン様には報告するから大丈夫だよ、こういうものは飼い主に任せるのが一番』

「ならいいが、何かあったら遠慮なく連絡しろ」

『いいよ、これくらい、どうにかなるって』

はあっとため息を吐き出す。
なんか変な薬盛られちゃったなー…面倒くさ…
熱上がってきちゃったし、暫く布団で仕事をする日になりそうだな

「立てるか?」

『無理』

秀一に運び出されて工藤邸に戻り、とりあえずベッドまで連れて行っていただきました。
久しぶりにイケメンの抱っこです。

「無理はするな
何かあれば病院に連れて行ってもらえ」

『え?誰に?』

「さっき奴に連絡を入れておいた
この頃ろくに会っていなかった上にお前がこんな状態と知ったらすぐに来るだろう」

『あのもしもし運転の相手ですか?』

「ああ、そうだ」

ワイシャツのボタンを外されてUSPも抜かれた。
今日はフル装備だったので部屋着に着替えるのも一苦労だ。

「蛍さん!
また鍵を開けっぱなしにして、無用心だと言ったじゃないですか!」

『え?』

「ほら、すぐに来ただろう」

部屋に入ってきたのは降谷さんでした。
おスーツです。
素晴らしいです。
お仕事中なんですね、理解しました。
なのになんでこんな所にいらしてるんでしょうか。

「赤井秀一…貴様、何を…」

「見た通りだ」

「見た通りだと…?」

見た、通り…?

相当お怒りの降谷さんです。
どうしてでしょうか。
状況を整理してみてハッとしました。
ワイシャツを脱がされているうえにベッドです。
これは、大変マズい状況です。
誤解される可能性が高いですね、困りました。
流石に俺でもヤバい状況だとはわかりました。

「蛍さんからすぐに離れろ!」

「そう騒ぐな」

あああ…更に眩暈がしてきましたよ…
この状況でこの二人に巻き込まれるのはもうたくさんです…

『あ、あの、自分でやるから…!』

とりあえず秀一を離しました。
これで少しは状況がマシになることでしょう。

「連絡をくれたのは感謝している」

「君の到着が思ったよりも早くて驚いた」

「だからといって蛍さんにレイプ紛いの事を…」

ほら、誤解されちゃってますよ…
もう面倒臭い…
他所でやってくれ…

『あの、とりあえず寝ます』

「蛍、シャツが皺だらけになるから着替えた方が…」

『そのせいで今誤解されてるのわかってます!?』

「ベッドで脱がされるなんてまたどうしてそんな事になるんですか!
蛍さん、貴方は危機感というものを持っていないんですか?
あれだけこの男には気をつけてくださいと言いましたよね?」

『いえ、あの、この方は一応恩人です…』

「だいたい君は仕事でこの馬鹿猫を放りっぱなしにしているそうじゃないか
何かと引き寄せるコイツの手を離してどうする?」

『秀一、話がズレてますよ…』

「手を離した?
僕は毎日彼をちゃんと見張っていますよ」

『降谷さん、まさか貴方また盗撮でもしてたんですか…』

もうついていけません。
寝ます。

『とりあえず口論するなら出ていってください
飼い主に報告して寝ますので』

スマホでジンにメールを出して、先ほど始末した情報屋と見られるネズミの個人情報も添付しておいた。
やっぱり飼い主のケアが一番かもしれません。
すぐに返信が来ました。

お…流石です、ジン様
早急に対処してくださるなんて…!
これで俺も安心して寝られます、ありがたいです…

不意にスマホをスッと手から抜かれた。

「早く寝てください」

秀一を追い出したのか、スーツの降谷さんはベッド横までやってきた。

「スーツの袖口の発射残渣と血液、それに玄関に置いてあった仕事用の革靴…
火薬の匂いも貴方から僅かにしますね
組織の表仕事は当分お預けだったのでは?」

『取引後から尾行されてました…
飼い主から許可が出たので駆除しただけです、久しぶりの表仕事でこんなになるとは思いませんでしたよ
俺なら寝たら大丈夫なんで降谷さんはお仕事に戻ってください、お忙しいんですし』

「久しぶりの再会がこうなるとは思いませんでした
熱が引かないようでしたら病院に強制連行しますので連絡してください
どこを刺されたんです?」

『右手首にこの針を…』

ポケットからポリ袋に入れておいた針を取り出した。
俺の右手首を見た降谷さんも驚いたけれど、俺も驚いた。

『え、何これ…』

「皮膚の炎症と発熱…ヒスタミン系の毒物ですね、代表的なものだと毛虫の類のものでしょう
利き手である右手の静脈を狙って内側に刺したというわけですか
病院ですね、抗ヒスタミン剤を出してもらえれば1日ほどで熱は下がりますから」

『でしたらお隣に頼むので病院は結構です
お仕事に…』

「そんなに追い返したいんですか?」

『…そうじゃありません!
こういうところ、あまり他人に見せたくないので…それに早く仕事を終わらせていただいてゆっくりしたいだけですから』

「…心配もさせていただけないんですね
わかりました、すぐに仕事を終わらせてきますよ、それが蛍さんのご希望でしたら
今夜参りますから」

え?今夜?

ご機嫌斜めのまま降谷さんは帰っていかれました。
だってここ最近会えてないくらいのお仕事だった筈なのになんで急に今夜来れるんでしょうか。
謎すぎる。
そう思いながら没収されていたスマホに手を伸ばして電話をかけた。

『もしもし、哀ちゃん?
申し訳ないんだけど薬譲ってもらえないかな…抗ヒスタミン剤

うん、そう、仕事の関係でちょっと
詳しいことは後で話すから

え?今誰もいないから大丈夫だよ、鍵も開けてるから
じゃあ、ごめん、よろしく』

ため息を吐き出してスマホを床に落とす。
脱ぎかけだったワイシャツと防弾チョッキをなんとか脱いでスラックスもベッドから落として部屋着に着替えておいた。
15分くらいしてやって来た哀ちゃんは俺の手首を見て薬を置くと、珍しく真剣な表情でベッドに座ってきた。

「気をつけなさいって言ったでしょ
貴方の存在が組織内に知られ始めているってことよ
今日貴方が始末したようなコードネームを持たないような構成員にさえ尻尾を掴まれかけてる…
組織の水面下で何かが起きている証拠ね
ジンも貴方のことが知られたら黙ってはいないでしょうけど、内部から貴方に矛先が向くわよ」

『そうみたいだね…
ネズミの反撃ってところかな、俺の存在なんてコードネームを持つ構成員だって全員知ってるわけじゃない
ジン様には連絡したよ
口封じらしいよ、俺の存在を知るコードネームを持たない構成員は全員駆除する予定だって』

「全員?」

『…きっと組織の中で俺の存在を知った奴らも、俺を標的にすればジン様に近づけると思ってるだろうしジン様への挑発行為になると思ってるだろうから
そして今日実際に俺がこのザマだよ、最初だからジン様も見せしめにはするだろうね』

「仕事も程々にしときなしさいよ
とにかく熱が下がるまでは外出禁止、皮膚の炎症も徐々に引くと思うから
組織の中でも貴方が標的にされるなんて本当に珍しいケースよ
ジンには予想外のことだったでしょうね
まあ、貴方が組織に残るつもりなら、ジンから離れないことね」

『ん…しばらくは組織に集中するつもり
さっきジン様からも外出禁止令出されたから大丈夫だよ』

「ならさっさと寝てなさい」

『薬ありがと』

その場で哀ちゃんを見送ってから薬をいただいて布団に潜り込んだ。
またまた厄介なことになってしまった。

…まさか組織の下っ端に目を付けられたなんて俺も堕ちたもんだね
これからは警戒を強化して情報網のパトロールに勤しみますか、即対処してもらえるようにしよ

折角もらった鯵も冷蔵庫でお留守番。
久しぶりにお刺身にでもしたかったのに、焼き魚になりそうです。
ぐっすり寝て、夜中に飲み物を取りに起き上がったらリビングに私服のイケメンがいらっしゃいました。

『あれ…お仕事は…?』

「終わらせると言いませんでした?」

『でも最近ずっと続いてたのは…』

「今日は単独捜査をすると言って抜けてきたので明日の朝まで何も予定はありません
これでやっと貴方の世話ができますね、何をご所望ですか?」

え…ちょっと、公私混同ではありませんか?

「まだ熱が下がりきってはいないようですし…」

久しぶりのイケメンです。
そっと額が重なって超至近距離のイケメンにノックアウト寸前です。

あ…あ、熱が…

「まだあまり下がっていませんね」

貴方のせいですよ!
さっきはちゃんと下がってきてましたからね!

『水、ください』

「はい、持って行くので寝ていてください」

…イケメンでした
もうまた熱が上がっちゃうよ…ねえ、どうしてくれるんですか
抗イケメン薬とかはないんでしょうか、それかイケメンに耐性のつく薬とか

ベッドに戻ってパタリと倒れこみ、暫く布団に埋もれていました。

「蛍さん」

ゆっくり体を起こしてベッドに座り、コップを受け取った。

「…意地を張るのも勝手ですが、僕にはそういうところもちゃんと見せてください
貴方のことを心配する権利くらいいただけませんか?
仕事だからといって貴方を手離しているつもりはありません
こういう時だからこそ、僕を頼ってください
貴方、自分でなんでも解決しようとして誰にも頼らない人なんですから」

『……』

「いいですね?
僕は弱っている時の貴方も全部見ておきたいので」

『俺は嫌です』

「放っておいたら貴方、熱を出して死んでましたよ?」

『貴方のせいで熱が上がってるんですよ、わかってます!?』

「はい?なんでそこで僕が出てくるんですか?」

『……』

しまった。
口を滑らせてしまった。
観念して下を向いてコップをテーブルに置き、安室さんの手をそっと握り締めた。

『安室さんといると、体温がいつも上がってしまうので…
さっきまでマシになってたのに、また熱が出たのは貴方のせいなんですからね、馬鹿』

そしたら手にギュッと力が込められたのでドキッとしたのも束の間、ギリギリと握り締められて身の危険を感じました。

「また馬鹿と言いましたね?」

『あ…』

「それで?」

『…好きなのわかってるくせに言わせないでください、馬鹿なんですか?』

「もう一度ですね」

『え?なんでですか!?』

「今最後に馬鹿ってまた言いましたよね?」

うわー!
なんてこった!
これじゃあ無限ループじゃないか、この人絶対楽しんでるよ、ほら!

『もう寝ます!』

「じゃあ続きは明日ですね」

『まだ続くんですか!』

「ええ」

もうわけがわからん。
ふん、と背中を向けて壁の方を向いていたらそっと頭を撫でられました。

わ、これは、幸せです…
なんかいつもふわふわって撫でてくるんですよね、撫で方が違うというか…
し、し、幸せです…

今日もぐっすり快眠です。
明日には熱も下がるらしいですし、安室さんと早くゆっくりしたいので警察庁に喧嘩を吹っ掛けたい気持ちでいっぱいですね。
それでも睡魔はすぐにやってきたのでスッと眠れました。

「無防備なのも困り者ですね…
早く仕事は片付けてくるので、もう少しだけ待っていてください」





.

[ 10/40 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -