ツナ缶編
-ツナ缶のアレンジ方法-
テーブルに置かれたツナ缶が一つ。
それを囲む大人二人。
「…ツナ缶、ですか」
『はい、今日はお仕事でしたので』
「今日は別メニューの予定だったんですが…
まあ、いいでしょう、何かもう一品作れるか考えてみます」
『…ツナのサラダとかでいいんじゃないですか?
ほら、確かキャベツ冷蔵庫にありましたよね、それを千切りにしてパパッと和えたらサラダになるんじゃないでしょうか?』
「それはちょっと質素すぎませんか?
どうせならちゃんとした物を提供させていただきたいのですが…」
『でしたら…あ、ツナマヨとか作っておけばいつでもサンドイッチの具にしたりサラダのトッピングにしたりできますよ!』
「そうではなくて…ちゃんとした一品料理を作りたいのですが…」
『じゃあ…』
「最初にお伺いしておきたいのですが、貴方は以前どうやってこのツナ缶を調理していたんですか?」
『調理ですか?してませんでしたけど?』
「…ハイ?」
『缶開けて、お皿にこう、逆さにして…中身を出したら完成です』
「あの、敢えて聞いておきますがこれはツナ缶そのままですよね…?」
『いえ、缶から出したのでツナです』
「いや、ツナ缶ですよね?」
『いえ、缶から出したツナという食品名で食していました』
「このままですか」
『はい、このままです』
「…何かアレンジしようと思ったことはないんですか?」
『ありますよ?
例えばオイルサーディンの様にオリーブオイルに漬けてみたり…あ、これは失敗でしたけどね
元々ツナが油に浸かっていたので意味がありませんでした』
「ツナ缶をイワシ缶にしてどうするんですか…」
『あと、飾りとしてミントを乗せてみたことがあります
これは見た目を楽しんだだけなので、後でミントはモヒートにリサイクルしてツナを食しました』
「味のアレンジ方法ではありませんよね?」
『それからバルサミコ酢をかけたことがあります
これも失敗でしたね、厳密に言えば俺のミスなんですが…分量を間違えたので酢が強すぎて咳き込んで到底食べられるものではありませんでした』
「それ以前にどうしたらそんな組み合わせをしようと思われるんですか」
『唯一成功したのものはあります』
「やっと美味しい食べ方を見つけたんですね?」
『マヨネーズです
身をほぐしてマヨネーズをちょっとだけ和えて…それから隠し味で醤油を一滴だけ垂らすんですよ
これがとっても美味しかったんです!
なので作り置きしてキャベツと一緒に食べていました』
「最早ただのツナマヨですよね?
それで結局サラダに行き着くんですね?」
『あ、サラダを欲しているわけではありませんよ?
でも安室さんがちゃんとした一品と仰るので、俺にはこれくらいしかアレンジ方法が思いつかなくて…』
「……ツナマヨのパスタとか考えたことはなかったんですか?」
『……』
「ピーマンとツナの炒め物とか、ツナとジャガイモのグラタンとかありますよね?」
『なんだかとても美味しそうですね!』
「いい加減ツナ缶そのままを食べる生活は卒業してください」
『缶から出したツナですよ』
「どうでもいい訂正はいりません!」
『意味が全然違ってくるので大事な訂正です!』
「わかりました
缶から出したツナをそのまま食べる生活はやめましょう、貴方一応人間なんですよ?」
『じゃあこのツナどうされるんです?
そのままのツナってとても美味しいですよ?』
「今日はツナの和風パスタに変更です!」
『ツナパスタ、ですか…』
「何か不満でもございますか?」
『……いえ、初めて食するので楽しみとドキドキ感が半分ずつです』
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