お付き合いとは。

今日は元気にお仕事です。
ですが組織の仕事が増えてしまったのでほとんどパソコンの前から動けません。
そしたら電話が鳴ったので画面を確認したら、久しぶりの方でした。

『もしもし、高木さん?
お久しぶりですね』

[お久しぶりです、クロードさん
すみません、実は…]

高木さんがこう切り出してくる時は大抵仕事です。
しかし今日は情報屋の仕事ではありませんでした。

『ええっ!?俺が、ですか…?』

なんでも捜査一課で担当している事件で、容疑者が外国人なのだがフランス語しか話せない人がいるからと通訳をお願いされてしまいました。

つ、つ、通訳…ですか…
初めてかもしれない…
で、できれば断りたいしお仕事してたい、ハッキング祭りしてたい…!
だけど、だけど…日仏友好関係に大きく関わってきますよね…!
わかりました!行きます!

というわけで高木さんから指定された場所に来てみたのだけれど。

『……』

「……」

「クロードさん!
来てくださってありがとうございます、本当に助かりました!」

パアッと明るい顔をされているのは高木さんだけです。
俺は目の前に立っているイケメンを見て首を傾げています。
イケメンも俺を見て首を傾げていました。

あれ、安室さん、貴方前に俺とフランス語でお喋りしましたよね…?
なんで現場にはフランス語を話せる人がいないという報告を受けたのでしょうか?
ていうか、貴方はなんでここにいるんですか?
お仕事はどうしたんです?

そして毛利家御一行にも軽く会釈をしたのだが、毛利さんもコナン君も、それから安室さんだっているんだからこれ事件解決できるでしょ。
なんで俺派遣されたんですかね。
お仕事したいよ。

「早速ですが…」

まあ、お仕事なので仕方ありません。
容疑者の発言は全部日本語に訳してあげました。
そして何故か現場にずっと居座る羽目になり、今日も毛利さんの推理ショーを見てからやっと解放されました。
ギャラ、いくら入るんでしょうか。

うーん、お仕事的には警察庁の方々としている方がなんか本業っぽいから楽しいんだけどな…
警視庁からのお仕事は例外が多いよね
もう帰ってハッキング祭りしよ…

「クロードさん、送りましょうか?」

『いえ、結構です』

イケメンのお誘いにもなんだか乗る気にはなれません。
どうせ夜会えるんだし、と思ってしまうと今はとりあえずお仕事がしたくてたまらないです。

「ルイさん、もう帰っちゃうの?」

コナン君にも引き止められたので、珍しいと思いながらも頷いた。

『仕事、残ってるからね』

「折角この後コロンボでご飯でもって言ってたんだけど…」

『うーん…お誘いは嬉しいけど、やっぱり今日は遠慮しとくね』

またね、とコナン君と蘭さんに手を振って別れました。
毛利さんは寝てたし、安室さんは後で会えるので割愛させていただきます。
電車で米花町に戻って工藤邸に戻ってハッキング祭り開始です。

なんかやっと仕事してる気分になってきた…
うん、これだよ、この感じ…

だけどなんだか満たされません。
なかなかハッキングでも盛り上がれない理由がわからない。

…さっきイケメンのお迎えサービスをお受けしなかったからかな
なんかさっきの安室さん、いつもと何か違ったよね
俺もなんか変だったし…
もしかして俺がこの前あんなに詰め寄っちゃったからいけなかったの…?
あれ、何…?

だんだん悩ましくなってきたぞ。
ふっとエンターキーを押してしまい、ハッとした時にはもう遅かった。

『Mince...!』
(やばっ…!)

保管していた情報をばら撒いてしまった。
慌ててデータのリークを止め、キーボードを叩く。

ヤバいヤバいヤバい…
これはマズい、ドイツの機密情報を漏らしてしまうとは…
これは早く止めないと独仏友好関係に重大な亀裂が入ってしまう…
うわー、なんでこんな事になったんだよ…!

必死で処理していたら電話が鳴った。
今手が離せないんですけど。
肩に携帯を挟んで通話に出た。

『Allô, désolé, je suis occupé maintenant...』
(もしもし、すみません、今忙しいんですが…)

["Qu'est-ce que tu fais, Louis!"]
(お前は何やってるんだ、ルイ!)

うわー!
もう局長にも筒抜けかよ!
今必死で止めてますってばー!

カタカタとキーボードを叩いてるのは多分わかられてるけれど、くどくどお説教タイムに突入してしまいました。
これでも一応優等生だったので新人時代以来あまり怒られていなくて、久しぶりのお説教に心が完全に折れました。

…ブランクのあるお説教って、結構キますね
ものすごく心荒みます…

なんとかドイツ側に知られる前に情報を拾い集めて漏えいは防ぎました。
しかしかなりの体力を要し、同時にお説教までいただいたので最早HPは0です。
いや、マイナスにのめり込んでいます。

…ヤバい、ねえ、もう今日は立ち直れません

パソコンの前で完全にぐったりしていたら夜になってしまいました。
時計を見たけれど、いつもの時間を過ぎてるのにイケメンが来ません。
おかしい。

あれ、もしかして夜ごはん契約期間切れちゃったの…?
え…?
嘘でしょ、こんな日なのに?

ちょっと涙出てきました。
流石に辛いです。

う、わ…イケメンにも会えないわけ…?
ごはんも自炊…?こんな状態で?
え、え、そんな体力ないよ…もう今日は夜ごはんいらないや、食欲なくなっちゃったよ…

『Pourquoi tu n'es pas ici, tu me manques trop...』
(なんでここにいないの、恋しい…)

うわー、もう傷心です。
完全にやさぐれています。
もう嫌だ、イケメンがいないだけでこんなに生活が荒みます。
食欲も減退します。

…もう寝るのが一番かな
ねえ、もしかして契約満了だったからあのイケメン、今日お迎えサービスしてくれようとしたのかな…
なんで俺断ったかな、うわ、馬鹿だった…

ずるずると匍匐前進してベッドに辿り着いた。
もう言葉が出ないくらいです。
やっと横になった瞬間、呼び鈴が鳴りました。

誰だよ、こんな時に…
もう寝るところだっての、やっと寝ようと思ったのに…
ねえ、もう今日は寝かせてくれないかな…

もう一度だけ呼び鈴が鳴ったので、宅配便かと思って玄関に向かってドアを開けた。

「すみません、お電話したのですがずっと通話中でしたので今日遅くなると連絡が入れられなくて…」

…あれ?

『…え?』

「何があったんです!?
蛍さん、どうしたんですか!?」

いや、どうしたんですか、はこっちのセリフなんだけど…

バタンとドアを閉めれられてグイッといきなり腰を引き寄せられてしまいました。

「何処か痛い所でもあるんですか?」

そっと目尻を拭われたので、自分がやさぐれて泣いてたのを思い出した。

『あ…その…色々、ありまして…
安室さんもいらっしゃらないし仕事は散々で…もう、夜ごはんの契約期間が満了なのかと…』

「また仕事ですか…だから電話にも出られなかったんですね
それは後ほどゆっくりお聞きします
ですが、契約期間はまだですよ?
この前のフランス料理の指導料で3週間追加しましたよね?」

『さ、3週間…!?』

あれ、そうだったっけ?
俺、お代にもならないからって断らなかったっけ?

「まだ最初の契約期間も1週間残っていますし、3週間追加したのであと1ヶ月は参る予定でしたが…」

話、違いました?と言われてしまったのでピタリと涙も止まった。
イケメンの胸板はやっぱりマイナスイオンの塊です。

『じゃ、じゃあ今日は…ごはんもあるんですか…?』

「はい、ありますよ?」

『じゃあ、今日の送迎サービスはただのサービス精神だったんですか?』

「サービス精神というか…貴方、本業でもないのに警視庁に呼ばれてきただけでしたから交通費が勿体ないかと思いまして…
わざわざあんな仕事を引き受けて現場にいらしたのでなんで貴方が…とは疑問に思いました」

『…じゃあ、俺がこの前問い詰めたから俺を避けて夜ごはんサービスをやめようとしたとかそんなわけではなく…?』

「いつ僕が貴方を避けたんです?」

『…あ、あ、安室さんは、また来てくださるんですか…!』

「あの、話聞いてました?」

ということは、まだ安室さんが来てくださる日々が続いているわけで…
なんか変だったのはただの俺の思い過ごしで、安室さんも俺があの現場に行った事を不思議に思ってただけで…
ということはあんな凡ミスをしたのはただの、空回り…?

「少し遅くなってしまったのですぐに用意します
お邪魔してもよろしいですか?」

『あ…はい…』

とりあえずイケメンを家に上げたら、ソファーに座らされて頭を撫でられました。
荒みきっていた心にまた薬を塗られている気分です。

「蛍さん」

『はい』

「あまり僕がいない所で泣かないでください
僕がいない時は、連絡してくださればすぐに飛んできますから」

…いや、嬉しいけど貴方、お仕事をどうするの…

『お仕事はどうされるんです?』

「貴方と仕事は天秤にかける対象ではありません!」

『え?』

「まだわからないんですか?
僕は蛍さんをずっと大事にしたいと思っていますよ、ずっと前から…!」

ゴツンとちょっと乱暴におでこをぶつけられました。
超至近距離イケメンの見つめる攻撃です。

「貴方、僕が言ってることをちゃんと理解していますか?
この前好きだとちゃんと僕もお答えしました
貴方は僕の続きを聞かずにまた寝ましたよね?
聞いていないとは思いますが僕は貴方とのお付き合いを真剣に考えていますからね」

…出た、例の"お付き合い"
秀一も言ってたけどこの厄介な言葉である"お付き合い"
だけどさ、日本てこういうこと言うよね…

『はい!いいですよ!何処に行きますか?』

「え?」

『はい?お付き合いですよね?
日本て仕事とか友達とかとバーじゃなくて…居酒屋でしたっけ、飲みに行く時ってお付き合いするって言うんですよね!
ほら、一杯付き合えって言うんですよね!

まさか安室さんから俺にそんなお誘いをしてくださるなんて思いもしませんでした
今夜行きます?
俺、丁度やさぐれてて飲み明かす気はあるんで!』

「馬鹿にしてるんですか!?」

『え…?』

激怒されました。
温厚なイケメンが珍しいです。
秀一を目の前にしたくらいの勢いです。

「もういいです、貴方には心の底から呆れました」

『え、ちょっと安室さん、あの……っ!?』

この至近距離のまま強引にチューされました。
あ、あ、心臓が止まります。
とろけます。

うわあぁ…
なんかもうふにゃふにゃになりそう、何これ、えっと、骨抜きって言うんだっけ?
ていうか、キスはいつの間にかもう公認なんですね…?
という事は俺からもしてもいいって事ですよね?

「…これからゆっくり、時間を掛けて仲良くなりましょうね」

…もう、十分仲良くなってきてますがそれはどういうことでしょう?

『…安室さん』

「はい」

顔を離して立ち上がろうとした安室さんの手首を掴んだ。

『も、もっと、遊んでください!』

「ですから猫と遊ぶような事ではなくて、人間として仲良くなりましょうねという話をしているんです」

手を離された。

『え、え?なんか全然よくわからないんですけど…』

「貴方に理解してもらえると思っていた僕が間違っていました…」

『あの、お付き合いの一杯はよろしいんですか?』

「貴方、夜ごはんいらないんですか?」

『いります!』

「でしたら待っててください
そんなにアルコールが欲しいのでしたら一杯だけどうぞ
それ以上は飲まないでくださいね、また悪酔いされても困りますので」

え、俺が自棄酒したいわけじゃなくてさ…
安室さんがお誘いくださったわけじゃなかったんですか…?
ねえ、お付き合いってどういうこと?
お酒の話じゃないの?

『安室さん!』

「今度は何ですか」

キッチンに入りかけた安室さんを呼び止めた。

『だ、大好き!』

「……」

『…です』

やだ、何言っちゃったんだろう…

キスされた強引さにやられて咄嗟に変な事を言ってしまいました。
イケメンが固まってしまいました。
もう逃げたい。

『ちょ、ちょっと仕事してきます…』

ひえええ、と思いながら部屋に戻ってちょっとベッドでゴロゴロしてました。
イケメンとのキスはちょっと心を幸せにしてもらえます。
嬉しかったのは本当です。
ちょっとニヤけました。



「…あれだけ直球で言われると流石に照れますね
今日はちょっとだけ魚を多めに入れてあげましょうか…」

イケメンの粋な計らいで、今日のご飯は小魚がたくさん入ってました。

『んー、おーいしっ』

幸せ!
イケメンごはん素敵!
元気になります!
明日からもお仕事頑張るよ、うん、今日は色々あったけど

「相変わらず美味しそうに食べてくださいますね…」

『何か仰いました?』

「いえ、なんでもありません」

今日もイケメンは俺を眺めています。
ちょつと恥ずかしいけど、やっぱりこのごはんが食べられるのは幸せなので見られてても多少は気にしません。

なんだろう、この満たされてる感じ…
幸せ…
ていうかもう好きって一回言ってしまうと案外言えるものなんだね
じゃあ、今度からは俺、何回でも言える気がするよ
安室さんに好き好き言い放題だね!

「そんなにニヤけるほど美味しかったですか?」

『えっ、あ、はい!美味しいですよ!』

「そうですか…
ではお気に入りメニューに追加しておきますね」

『えっ?』

「蛍さんのデータはちゃんと取ってありますからご心配なく
何が好きで何が嫌いか、それからとても美味しそうに食べるものと少し苦手そうな表情をされるものとか…」

『…安室さんが言ってた観察ってそういう事だったんですね』

ちょっとびっくりしました。
本当に観察されていたしデータ化されているようです。
だから日に日に俺の好みのものが増えてきてるんですね、理解しました。






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