サンドイッチと宿

『え、美味い、何これ、すごい美味しいんだけど…!』

お腹が空いていたこともあって、サンドイッチを美味しくいただいた。

『コナン君食べる?』

「ぼ、僕はいいや…夕飯の時間近いし」

『あ、そう?
これ日本で食べたサンドイッチで一番美味しいんだけど
ねえ、お兄さん、おかわりください』

「雪白さん…3皿目?」

『いや、お腹空いてたんだって
それでコナン君、俺と話してて何か教えて欲しかったことはわかった?』

「そ、そうだね…
お仕事のこととか、色々ありがとう」

お…何か勘付いたな…?

ふと携帯が鳴って画面を見る。

あれ?さっき電話したのに…

『もしもし…?
さっき電話したのにどうしたの?

…宿?
だからその辺のホテル探して泊まるって

え?いいよ、人ん家なんて
まあ、あとは野宿でも考えてるし…

秀一もほんと心配性だねー、全く
いざとなれば…アテはあるし
それよりさー、今喫茶店にいるんだけどサンドイッチが美味しくてね…』

運ばれてきた3皿目のサンドイッチに手を伸ばし、咀嚼して飲み込んでから電話を続けた。

『えっと…日本で有名な毛利小五郎の探偵事務所の下にある喫茶店
もう店員さん、いかにも日本人て感じで可愛いしなんかイケメンもいるし、ほんと贅沢な喫茶店…!

久しぶりの日本、満喫してるのでご心配なく!
何かあったらこっちから連絡するって
じゃ、今サンドイッチに忙しいのでまたね、bisous』

電話を切ってサンドイッチを食べていたら、コナン君がこっちを見ていた。

「ねえ、雪白さん
泊まるところないの?
今野宿とか何とかって…」

『まあね、まだホテル予約してなくて…
いざとなったら哀ちゃんにでも頼み込んで泊まらせてもらうかな
土下座させられそうだけど』

「…雪白さん、灰原とどういう関係?」

『んー、幼馴染みたいな?
腐れ縁て言った方がいいのかな、なんか…哀ちゃん可愛いからね
つい、追っかけちゃうんだー…』

さて、どう出るかな、コナン君

コナン君は携帯でメールを見ていたので、今時の小学生はおませさんだなあと思いながらサンドイッチを完食。
大分満足した。
これで食後のカフェなんて最高すぎる。

「ねえ、雪白さん」

『ん?』

「いい宿があるんだけど、紹介しよっか?」

『それ、本当に宿?』

「え?」

『いやー、今の電話の相手、秀一…って言ってもアレか
俺の知り合いなんだけどなんか野宿はするなとかホテルを予約するならいいところがあるからそこにしとけとか色々言われてさ
どうも人の家らしいんだよね、家主がいなくて空き家になってるらしいんだけど』

「その、まさかだよ」

『…ハイ?』

「雪白さんの電話の相手ってさ…」

コナン君から携帯の画面を見せられた。
そこには秀一からのメールが書いてあって、俺は怪しい人間じゃないから屋敷に置いてやってほしいだの何だの書かれていた。

…心配性だな、ホント

『…ん?
コナン君、知り合いだったの?』

「ま、まあね」

『そっかー、へえ、そっか…』

秀一…まさか気付いてんのかな
まあ途中で組織を裏切った身だしシェリーの端末ハッキングしてんのも俺くらいだし…
まあ、いっか

『じゃあ連れてってもらおうかな
その宿、家主さんがいいって言うなら
荷物も哀ちゃんのとこ置いてきちゃったし』

カフェを飲み切ってから店員さんを呼んだ。

『お兄さん、お会計お願いします』

財布を取り出してから鞄に地図をしまい込む。
支払いを済ませ、ちょっと気になったのでお兄さんの手首を掴んで引き止めた。

「あの、何か…」

『その…お兄さん、なんて名前ですか?
良かったら今度バーにでもお誘いしようかと』

「…安室透です
これはフランス流のナンパか何かですか?」

『あれ?さっきお兄さんも俺に同じ事したでしょう?』

そう言って彼の服に盗聴器を取り付ける。
目には目を、歯には歯をって奴だ。
やられたらやり返す。

「そうでしたっけ…
まあ、今度ワインでも飲みましょうか
貴方の方がお詳しいでしょう
自分は名乗らないおつもりですか?」

『あー、これは失礼
雪白 蛍です
美味しいサンドイッチ、ごちそうさまでした』

鞄を持ってコナン君と喫茶店を出た。

「雪白さん」

『んー?』

「安室さんのこと、気になるの?」

『まあね、あんなイケメンそうそういなさそうだし
やっぱり日本だと対応からして違うよね
地図まで書いてくれるなんて…
ほんと、親切すぎてびっくりしちゃった』

阿笠宅に放置してきてしまったトランクを持ってからコナン君に連れていかれたのは工藤と書かれた洋館だった。

『えー、立派な家だな
本当にいいの?』

「大丈夫だよ」

『すごい…日本ぽくない』

お邪魔します、と家に入って靴を脱ぐ。
広い家だ。
それにとある部屋は図書館のような書庫になっていた。

「まあ、あれだけ赤井さんに頼まれたら断れないんだけど…
赤井さんと知り合いってことは、いい方に考えてもいいんだよね?」

『いい方?何のことかな』

「惚けんなよ
さっきのポアロでの会話、全部挑発だったじゃねーか
ちょっと疑ったが赤井さんが電話してる最中に俺にメールまでしてきたんだ
赤井さんと同じだと、考えていいんだよなって話だよ」

胸ポケットに潜ませていた、APTX-4869の入ったビニール袋を取り出せば苦笑された。

「で、俺の正体も知ってるってわけか」

『ごめんねー』

「けどなんで灰原はお前を見て何も言わなかったんだ?」

『それはだね、俺がシェリーに関する情報全てを握ってるから
折角見つけたシェリーなんだ、ジンにもまだ情報は渡してない
シェリーに関する情報がジンの耳に入らないように情報操作しているのは俺だ』

「それで、仕事ってのは?」

『だから言っただろ、レスキュー隊だって』

「バーロ、そっちの話じゃねーよ
大体フランスからやってきて赤井さんと同じだってことはDGSIかDGSEのどっちかだろ
そうじゃなくて、組織の仕事は何だったかって聞いてんだよ」

『あー、そっちの話ね
とりあえずシェリーが日本にいるとはわかられてるみたいだから始末してこいってだけ
ジン、俺に甘いとこあるから大丈夫大丈夫』

「(ホントかよ…)」

『宿の件、本当にありがとう
すごく助かった

早速飲みに行くとしようかね
バーに立ち寄るついでに家まで送ろうか?』

「いいよ、んなもん」

『あ、そう
俺が君の正体知ってるってわかった瞬間に態度が変わっちゃって…生意気なんだから』

ぶつぶつ言いながら、さっき安室さんというイケメンにもらった地図を取り出す。
あの時地図を開くのを止めたのは、何かを挟んだ証拠。
そっと地図を開いてみれば、予想通り紙が一枚ひらりと落ちてきた。

[Il n'y a pas besoin deuxième ange
Vermouth ]
(天使なんて二人も要らないのよ)

『あれ…』

ベルモット?
まさか、日本にいるのか?
それにしても俺のこと本当嫌いだよなー、ベルモットは確かにエンジェルがどうのこうのって言ってるけど

『まあ、いいや
今日は飲むぞ、明日は日本の公安警察でも偵察してやろうじゃないの!』

「え?」

『え、何?』

「いや…公安に、行くのか?」

『ああ、フランスの対外治安総局に属してるんだぜ?
日本の公安にも視察を兼ねた挨拶しなくてどうする、外交問題だ
日本にもちゃんと諜報機関があるって聞いてるからな、昔はチヨダだのサクラだの言ってたらしいが、今じゃゼロと名乗ってるらしいな
俺はFBIともコネがあるし各国にコネを持ってて損はないってこと』

さあ行くぞ、と地図を持ってコナン君と一緒に屋敷を出る。
さっきタブレット端末をチェックしたら公安警察から急なアポにも関わらず面会してくれるとの返信があったのだ。
今日はたっぷりワインを飲んで明日に備えようじゃないか。






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