食い倒れの町、大阪観光!

あれから数日間の特別休暇をいただきました。
完全にオフです。
最高です。
本部からもこんなご褒美がいただけるなんて思いもしませんでした。
折角のお休みなのでたまにはゆっくり日本を観光でもしに行こうかと思いました。
やって来ました。

『通天閣…!』

いいね…いいです…!
勿論ダム・ドゥ・フェール(エッフェル塔)も最高なんだけど、日本の塔は雰囲気が違いますね…
うん、いいね…

通天閣でぼーっとしながら次は何処に行こうか考えていたのだが、ふと思い立って府警にお邪魔する事にした。

休暇といえど折角大阪来たんだし、ご挨拶という名の営業でもしとかないと…
ムッシュ服部も会いたいし
あの独特の雰囲気がたまらん…!
イケオジかもしれません…!
いいです、かなり良いのです
それにマダム服部にも是非是非お会いしたくて仕方ありません…!
あの出来すぎた、日本の美を固めたようなマダムは本当に素敵です…!

道頓堀散策は後でしようと決めて府警へ向かったのだが。

『え、いらっしゃらないんです?』

「ああ、ほんまにさっきやなあ、出て行きはったのは」

『そ、そんなあ…』

「それにしてもルイさん、随分日本語ペラペラになりましたなあ」

『え、ええまあ、長期任務で来てますし、日本に来てから時間も経ちましたのでそれなりに…
お仕事もより円滑にできるようになりたかったので…』

「その心掛けを部下にも見習わせたいくらいですわ
ほな、連絡くらい取ってみますけど…」

『え、よろしいんですか?』

「折角大阪来てくれはったんやし、会わさんで帰すわけにもいきませんて」

いい人です。
事件でお世話になったのはムッシュ服部だけではない。
このムッシュ遠山も顔見知りだし一緒にお仕事もしたのでそれなりに関係も保っております。
そして何より気さく。
話しやすい。
ムッシュ遠山は電話をわざわざ掛けてくださいました。

「今日はあと2時間くらい出っ放しらしいんで、直接家に来てくれっちゅうてました
家はご存知です?
アレやったら送りますけど」

『え、お家にお邪魔だなんて…
一応場所はわかりますけど、ムッシュ遠山は一緒に行かれないんです?』

「せやなあ…折角やし行きたいのはやまやまなんですけど、今日は生憎これから捜査に行かなあかんし…」

『そうでしたか…残念です
ですがムッシュ遠山に少しでもお会い出来て良かったです、ご連絡もしてくださって本当に助かりました
市内観光でもしてこようと思います』

「ああ、それはええと思いますよ
ほんならまた来る時は連絡してください」

『ありがとうございます…!』

ほな、とムッシュ遠山はなんと府警の出入り口まで見送ってくださいました。
なんていい人なんでしょう。
いやあ、いい人です。

しかしまあ、ムッシュ服部も直接お家にって仰ったし…
ということは、まさかのマダム服部にも会えちゃったりするんですかー!?
え、うそ、素直に嬉しい!

非常にいい傾向です。
道頓堀で大きなかに道楽の看板を見て商店街の賑わいを感じながら歩いていく。
楽しい。
大阪は賑やかです。
くいだおれ太郎にも会えました。
大きなグリコの看板も記念に撮っておきました。
それからまた散歩をして八阪神社で参拝。

なんて充実したバカンスなんだ!
最高じゃないか!
局長、休暇をありがとうございます!
ちゃんとお土産買って送りますからね!

市内だけでも色々と巡る所があって、二時間は意外にもあっという間に過ぎてしまった。
一人旅でもなかなか楽しく過ごせます。
誰だ、寂しい奴なんて言ったのは。
寂しくないぞ。
あ、でももしイケメンと旅行できたら最高とかは思っています。
イケメンは正義ですからね。
旅に彩りを与えてくれることでしょう。

うん、明日はお好み焼きかたこ焼きか…
粉もん食べときたいよね、やっぱり大阪だし
大阪城も見学しよう

明日のプランを立てながら、記憶を頼りに大きな屋敷のような家まで歩いてきた。
表札には服部の文字。
ちょっと緊張します。
呼び鈴を押したのに答えがないから戸惑っていたら、玄関のドアが開いてまさかのマダム服部直々にお出迎えしていただきました。

『マ、マダム服部…!
お久しぶりでございます!』

「お久しぶりですね、ルイさん
どうぞ、ゆっくりしてください」

あああ、なんて美しい…!
お着物姿も素敵です!
なんという事でしょう!
これぞ日本の美…!
眩しいです、マダム、美しい…!

「平さんももうすぐ帰らはるのでどうぞ上がってください」

『す、すみません、お邪魔します…』

お屋敷に上がって、久しぶりの日本家屋に感動しました。
素敵です。
和室も広いです。
お茶も出されました。

至れり尽くせりですね…
これが日本のおもてなしというものですね、すごいサービス精神です…!

中庭を眺めながら、ちょっと縁側に腰掛けてみました。
とても日本らしいです。
異文化体験中ですよ。

「ルイさん、平さん戻られました」

襖が開いて振り返ると、とてもオーラのあるムッシュ服部がいらっしゃいました。

『ムッシュ服部…!
お久しぶりです!とてもお会いしたかったです!』

「久しぶりやな、ルイ、元気にしとったか?」

『はい!』

あああ、渋い!
たまらん!
イケオジでしたー!
たまりません、素敵です!

「さっきはすれ違いやったみたいやな
せやけど来るんやったら連絡くらいしてくれへんか?
せやったら時間かて取れたモンを…」

『あー…そうでしたね、すみません
急遽お休みが取れたので大阪観光でもしようかと思って、急に決めてしまったので…
これからはちゃんとご連絡しますね』

「えらい日本語上手なったなあ」

『お褒めに預かり光栄です!』

前はカタコトでフランス人演じまくりだったので、ムッシュ遠山にもムッシュ服部にも言われるのも無理はないだろうが、今のうちにこの状態にしておいた方が後々仕事がしやすい。

「今日はホテル取ってるんか?」

『そうですね、一応宿泊先は決めてから来ました』

「ほな今日は夕飯食って飲んでったらええ
送ったる」

『い、いえ、そんな…!
ただご挨拶にと伺っただけなので…ご迷惑をおかけするわけにもいきませんし…』

「約束でもあるんか?」

『いえ、そういうわけではありませんが…』

「ほな食ってき」

えええ、いいんですか…!
マダム服部の手料理よろしいんですか!
また食べられるなんて夢みたいです…!

『あ、ありがとうございます…!』

最高です、なんという事でしょうか。
やはりイケオジは偉大です。
これはイケメンとはまた違う貫禄と大人の余裕です。

『それにしても本当に素敵なお家ですね
とても日本らしくて…お気に入りのお家です!』

畳もいい匂いがしますよ、これが日本ですか…!
最高じゃないですか、ねえ

ふと玄関の方で音がした。
おや。
ムッシュ服部も玄関の方へ顔を向けた。

「なんや、靴が一足多いやんけ」

「平さんのお友達が来はって…」

あれ、なんだか聞き覚えのある声だ。
どうしてかな。
なんとなく嫌な予感がして身構えてしまった。

「心配せんとき、ワシのせがれや」

せがれ、ですか…
ということはまさかとは思いますが…
あの…待って、ムッシュ服部の息子さんて…

ガラリと襖が開いた。

「どうもー、初めまして、服部平次言いま……
ってなんでお前が此処におんねん!?」

まさかでしたー!
嘘だろー!?
本当に、本当に息子さんだったんですね…!?

『…本当に息子さんだったんだ…』

「なんや平次、知り合いやったか」

「し、知り合いも何も…とにかく現場で無茶苦茶しよったスカしたフランス人やろ!?」

ちょっと、無茶苦茶したってどういうことですか…
まさか身バレしたあのホテルの件ですかね…

『ごめん、言ってる意味がよくわからないんだけど…』

「ああ、そうかい…!」

『ま、いいんだ、今日はムッシュ服部にご挨拶に来ただけなんだし』

「ちゅうか何しに来たんや」

『大阪観光!』

「はあ?」

『いやー、ほら、この前までフランス大変だったんだよねー
色々お仕事が重なって重なって、そしたら休暇を頂けたので観光がてら府警にご挨拶して…
だけどムッシュ服部と入れ違いになってしまったらご招待してくださったというわけ!
おわかり?』

「…呑気に観光かいな」

「ルイは何歳やったか?
平次と年近いんとちゃうか?」

『いやいや、そんな事ないですよ
俺の方が年上ですし大人なので』

「大人て強調せんでもええわ、一々ムカつくやっちゃな…」

『一々突っかかってくるのはそっちだろ?
俺、何もしてないし今日はムッシュ服部を拝み倒しに来ただけです!
それからマダム服部も!
つまり君はおまけです、お子様平次君』

「このフランス野郎…言うてくれるやんけ」

『いやー、大阪って楽しいところですね、ムッシュ服部!』

「無視すんな!
和葉もこんな奴の何処がええっちゅうねん…アホくさ」

どうやら本当に平次君はムッシュ服部の息子さんだったようです。
全然似てないのに。
マダム服部似なんだろうか。

まさかここで彼に出会ってしまうとはなあ…
ちょっと誤算でした…

今日も豪華な日本食です。
とても素晴らしいです。
もう完全に異文化体験真っ最中ですよ。

『美味しいですー!
マダム服部の料理の腕は素晴らしいですね、是非弟子入りしたいくらいです』

うーん、最高。
もう平次君の不服そうな視線は無視です。
ですがさっきからずっとこっちを見ているので流石に気になったので、食後縁側でお茶を飲んでいた時に話しかけてみた。

『…何かな?』

「アンタ、もう耳はええんか?」

ギクリとしました。
あれ、なんで彼は知ってるんだっけ。
記憶を掘り返してみて思い出した。

俺がコナン君と確か道端で会った時に秀一に手話の翻訳頼んで…それでその時に確か彼いたよね?
なんかパンの袋とかタブレット端末押し付けて持たせた気がする…

苦笑した。

『あ、ああ、まあね、うん』

「アイツから聞いたで、右耳聞こえへんのやろ?」

『えっ!?』

なんてこと言ってくれちゃってるんですか、コナン君…!
ちょっと!

『あのねえ、人のプライバシーを勝手に…』

「いや、アイツが言いよったで
俺、ほんまはあん時アンタに話しかけたんやけど…反応ないしおかしいと思うて聞いたら普通に答えてくれたで」

コナン君…人の秘密はダメだよ?
もう、全く…

『そこまで言われたら仕方ないよねえ…』

はあっと溜め息を吐き出す。

『右は補聴器あってもほとんど聞こえてないよ
補聴器は本当にクラクションの音とか僅かに拾うくらい、なんて言うか気休めみたいな…
調子が悪い時とかストレスでたまに左もやられることあるから、それでこの前会った時は両方とも機能停止してただけ
今は休暇もらってるしちゃんと休んだから左は良好だけど』

「アンタの仕事の事はよう知らんけど…
親父と仕事しとるんやったらそれなりの仕事やろ?」

『それなりの仕事ってなんですかね、ちょっとよくわかんないかな』

「これだけは流石に工藤も教えてくれへんかったけど…
アンタ、何者や?
DGなんとかっちゅう組織なのはわかった
それは何や?」

『…お仕事してる一般人です
組織がわかってるなら調べたら?
もう高校生なんでしょ?』

「一々イラつくな」

『まあまあ、そんな事どうでもいいじゃない』

「この前のアンタの身体能力の高さも普通やない
鍛えられたモンや」

『そりゃ男ですから鍛えてますよ』

「体を鍛えるとかやのうてな…
親父かてアンタん事知っとるんやろ?」

『さあ、それはどうかなあ…』

「え?一緒に仕事したちゅうてたやん」

『うん、仕事はしたよ?
だけど俺の職業については、どうだろうね?』

「どういう…」

『お子様にはまだ早いかな』

ふっと笑ってやった。
まだまだ子供だ。
ポケットから使い捨てのUSBを取り出して、平次君の手に落とした。

「何やこれ?」

『ムッシュ服部に渡しといて
今日ご馳走になったお礼だって』

「…あんなあ、俺の質問に何も答えてへんのわかってんのか?」

『ねえねえ、大阪土産って何がいいかなあ?
とりあえず毛利さんとことお友達に買って、それから俺の職場の皆が日本のお菓子大好きだから何か送れそうなもの買いたくてさー…』

「一番は阪急に行くのが手っ取り早いんとちゃうか?
って俺の話聞いてへんやん!」

『いや、そういう百貨店とかじゃなくてさ、地元の人が知ってるようなローカルなやつがいいんだよね』

「それやったら…」

というわけでいくつかお店を紹介してくれました。
意外といい子でした。
ちょっと平次君を見直しました。

『じゃあ、そろそろお暇しようかな
ムッシュ服部も明日お仕事だろうし、ご迷惑かけられないし
明日は粉もん食い倒れツアーなんだ!』

「ツアー?」

『うん、ちゃんと調べてきたんだよね、行きたいお店とか…』

「ツアーって、まさか一人?
あの、旅行会社とかのツアーとちゃうん?」

『まさか
一人でのんびりガツガツ食いまくるだけですけど何か…?』

「…寂しいやっちゃな」

君か。
君だったか、寂しいと言った奴は。

『いいんです!
俺に構ってくれるお仕事がないんだから誰も誘わなかったの!』

「先に言うてくれたら俺が案内でも何でもしたるわ!」

あれ、なんかちょっと平次君の株が上がりました。
急上昇です。
これはツンデレというやつでしょうか。

『…平次君ていい子だったんだね』

「やかましい!」

『ムッシュ服部ー!
明日早いですよね?そろそろお暇しますね』

部屋の襖を開けて廊下を伺ったら、和服姿のムッシュ服部がやってきました。

ひょえええ、イケオジ…!
これは、悶絶レベルです!
日本のイケオジ、恐るべし!

「もうええんか?
平次と気ィでも合ったんか?」

『いや、全然』

「即答するとこちゃうやろ!
めっちゃええ感じやったやんか!」

『あの、お礼は平次君にお渡ししましたので後でご確認ください
実は此処に来る前にちょっとだけムッシュ遠山から事件の事を耳にしたので…ほんのお礼です
手助けにでもなればと思っただけなんで

マダムにもよろしくお伝えください』

「いつも悪いのう」

『いえいえ、とんでもありません!』

ムッシュのためならちょっとの情報提供くらいサービスしちゃいますよ!
それにしても渋い、イケオジ…!
スーツもビシッとしてて良いけど和服姿たまりません!
これぞ日本人てやつですね…!

「ほんまに送らんでええんか?」

『はい、大丈夫です
夕食までご馳走になってしまって…本当にありがとうございました
ごちそうさまでした』

「ほな、気ィつけて帰るんやで」

ポン、と一撫でされました。
イケオジからの貴重な頭ポン頂きました。
たまりません。

『お邪魔しました!』

今日はご機嫌です。
平次君とちょっと仲良くなりました。
イケオジからはスキンシップです。
素敵です。
ホテルに戻って爆睡し、翌日、一人食い倒れツアーを開催してきました。
大阪城の見学もしてきました。
余力があれば京都も見たかったのですが、それはまあ今度にしよう。

『ただいま、東京!そして仮の我が家!』

大阪限定のお菓子はその場で職場への配送サービスで送ってしまいました。
ちゃんと寝て旅の疲れを癒したので、今日はちょっと毛利さんの所へ行ってお土産を渡してきます。

いやあ、大阪良かったなあ…
また行きたいなあ…ムッシュ服部も相変わらず偉大でした…
マダム服部は相変わらずお美しいし、理想の日本人ですね、素敵です

毛利探偵事務所をノックしても誰も出なかったのでコナン君に電話をかけてみたら、ポアロにいると言われたので下にやってきました。

「いらっしゃいませ」

『梓さーん、いつものカフェお願いします!』

「はい、かしこまりました」

『そしてお久しぶりです、毛利家の皆様
お世話になっております』

ソファー席にいた三人に一礼してから紙袋をスッと差し出した。

『実は休暇が取れたので大阪に行って参りました!
お土産、良かったら食べてください』

「わ、いいんですか?
ありがとうございます!」

「ルイさん、大阪行ったの?」

『そうだよー、楽しかった!
一人で食い倒れツアーしてきたよ
まあ、後は仕事の取引先の方とご飯してきて…平次君とちょっとお近付きになったかな
あの子意外といい子だね、散々俺のこと目の敵にしてたみたいだけど』

「服部君に会ったんですか?」

『はい、色々大阪土産のお店を教えていただきました…!
ローカルな物をというリクエストにも答えていただいてとても助かりました
今度は京都にも足を伸ばしたいですね、日本は凄い所です
たまにはゆっくり観光するのもいいですね』

運ばれてきたコーヒーに手を伸ばし、ふと見上げたら安室さんでした。

あれ、今日シフト入ってたの…?

「大阪ですか、いいですね」

心なしか不機嫌オーラ出てませんかね。
気のせいでしょうか。

『あ、もちろん安室さんにもお土産ありますよ?』

「お気遣いありがとうございます」

『実はですね、なかなか面白いものだったので迷ってしまったんですが…
くいだおれ太郎がちょっと気に入ってしまって…
くいだおれ太郎と俺が作った食品サンプル、どちらがいいですか?』

「ハイ?」

『いや、あの、道頓堀に食品サンプル作りの体験できるお店がありまして、とても楽しかったので…
安室さんがいつも作ってくださるポアロのサンドイッチの1/1スケールで作ってみたんですがいかがでしょうか?』

テーブルにくいだおれ太郎と食品サンプルのサンドイッチ一切れを置いてみる。

「わー、お上手ですね!」

『蘭さん、ありがとうございます…!
実はお店の方にも筋がいいって言われまして…日本で就職するなら食品サンプル職人でも目指そうかと思ってしまいましたよ』

ヘラリと笑っていたら、安室さんは苦笑していました。
なぜだ。

「でしたら、あの、サンドイッチいただきますね」

『わ、本当ですか!嬉しいです!』

「確かに綺麗に再現されてますね、これ
とてもお上手だと思いますけど…」

『俺、くいだおれ太郎の方欲しかったんですよ!
どっちがいいかすごく迷ったんで、安室さんに決めてもらおうと思ってたんです』

「…はあ」

『あ、でもちゃんと端正込めて作ったので大事にしてくださいね!
いつもサンドイッチいただいてるのでお礼です!』

「…はあ、ありがとうございます」

「(…雪白さんにとってくいだおれ太郎とサンドイッチが同レベルだなんて、安室さんショックだと思うぜ…)」

今日もカフェが美味しいです。
大阪も満喫したし東京もなんだか最近ホームタウンみたいになってきていい感じです。

「ルイさん、もうすぐ上がれるので送りますね」

『あ、大丈夫ですよ
自分で帰れますって…』

「送りますね」

『…あ、はい』

なぜだ。
お土産もあまり喜んでもらえたのか怪しいんだけど。
まあ、手元にはくいだおれ太郎がいるので一人暮らしも寂しくありません。
見れば見る程なんだか彼は滑稽なので寂しくありません。
部屋のデスクにでも飾っておきます。
毛利さん達と少しお話をしていたら、行きますよと安室さんに催促されてしまったのでカフェを飲みきってお暇しました。

『でも喜んでいただけて良かったです!
一人で観光なんてちょっと寂しいかななんて思ってたんですけど、まあ、みなさんお忙しいですしね』

シートベルトを締めながらそう言ったら、安室さんの溜め息が聞こえた。

「昨日、一昨日と電話に出られなかったのはそういう事だったんですね」

『あ、すみません』

「ちなみに昨日と一昨日はポアロのシフト入れてませんでした」

『…はあ』

車がゆっくりと発進し、今日もイケメンの運転でおうちに帰ります。

「一人観光が寂しいのでしたら、なんで誘ってくださらなかったんですか?」

え…?

『いや、でも安室さん、お仕事…』

「蛍さんが休暇だと仰るからまたドライブでも行こうかと全部予定空けていましたよ」

『えっ…』

「お誘いの電話にも出られなかったのでとんだ空振りでしたよ」

『いや、その、お忙しいかと思って…』

「僕に一言も観光に行くなんて仰いませんでしたね?
昨日も一昨日も夜お訪ねしました」

『あ…』

「報告義務の怠りですね、2日分の食材が残っています」

『…すみませんでした』

「これからは旅行の時は、必ず連絡してください」

『…はい』

「場合によっては、僕も予定空けますから」

『……』

そ、それって、一緒に行ってくれるって言ってるのかな…
え、そういうこと?
ちょっと待って、ねえ…

『…あの、実は…次は京都に行きたいんです』

「そうですか」

『…次の休暇は、京都に行こうと思っています』

「今聞きましたよ」

『…休暇の際は、連絡…します…』

「お待ちしてます」

え、え、本当にイケメンと京都行けちゃうのかな…
だってご多忙イケメンだよ?
水族館以上だよね?
イケメンと一緒だったらとか思ってたけど本当に実現されちゃうんですか?

「ただ、早めに言っていただかないと僕も休暇の申請や捜査と言って抜け出せるのにも色々と都合があるので…」

『あ、はい…』

ほ、本気なんですね…

「それにしてもくいだおれ太郎と僕のサンドイッチが同等とは思いませんでした
今日は貴方にもっと気に入っていただけるようなサンドイッチでも作りましょうか」

…あれ、くいだおれ太郎嫌いだったの?
結構レトロな感じで気に入ってたんだけど…

なんとなく悟りました。
ですが、後日お仕事で警察庁を訪ねた際に、降谷さんのデスクにサンドイッチの食品サンプルがお皿の上に飾られていたのでちょっと嬉しかったです。
部下さんは、俺が作ったと聞いて驚いてました。
もしかしたら本当に食品サンプル職人への道が開けるかもしれません。

「あれクロードさんが作ったらしいっすよ」

「え、あの急に現れた降谷さんのデスクのサンドイッチですか?
クロードさん、手先が器用なんすねー…」

「なんでも大阪のお土産らしいっすよ
まあ、食品サンプルは外国の方にとっては珍しいですからね」

「クロードさん、本当に可愛げがありますね」

また後日警察庁に伺ったら、なんだか美術館ばりにサンドイッチが厳重態勢に置かれていて、よくあるコレクションケースの中に入っていてマスキングテープで作られた規制線まで張られていました。

これは美術作品と認めてもらえたということなんでしょうか…?
ちょっと嬉しいです…!

「クロードさん、何故部下に貴方が作ったと公言されたんですか…」

『あ、その、デスクに飾ってくださってたのが嬉しかったので自慢しようかと…』

「そのおかげで部下達がこぞって観にくるのであまりそういう事を言いふらさないでください」

『は、はあ…気をつけます』

なんだ、観に来てくれるなられっきとした美術作品になってくれてるんじゃないか
嬉しい…!
部下さん達はいい人達ばかりですね、上司の教育のおかげだと思いますよ!降谷さん!







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