表仕事とお小言

『Putain! J'en ai assez!』

工藤邸に怒号が響き渡りました。
最高にイラついてます。
仕事です。
先日の暴動の大元の組織がテロ組織と公式に認定されました。
渡したデータで次のテロを起こす場所として、ポリスは俺のデータを元に履歴から推測して南仏ニースと思っているようです。

『Quelle conasse...la police...
On sait tous!
Pourquoi personne a dit ça!?
Je vous ai dit que c'était Paris où ils vont attaquer prochain!
J'ai déjà envoyé tous les informations à vous, n'est-ce pas?Ah?』
(馬鹿かよ、警察は…
全部知ってるんだって!
なんで誰もそう言わなかったんだよ!?
次のテロの標的はパリだって言ったよな!?
全部情報も送っただろ!?え!?)

[Hé, Louis, calme-toi.
Tout à fait, c'est vrai qu'on a reçu tes documents et on les a lu.]
(おい、ルイ、落ち着けよ
確かに、本当にお前からの書類は受け取ってるしそれも全部読んださ]

『Bien bien, dans ce cas, arrête la police tout d'abord...!
C'est Paris où est dangereux maintenant!
Pourquoi la police est allée à Nice?
Qui est-ce qui institut la police ah!? 』
(なら良かったよ、だったらまずポリスを止めろよ…!
今危ないのはパリなんだぜ!?
なんでポリスがニースに行った?
誰がポリスに指示したんだんだよ、え?)

[On le connaît pas, cest sûr que c'est pas notre directeur.
Bon, je vais négocier mon directeur une fois, c'est OK?]
(知らねえよ、局長じゃないのは確かだぜ
わかったよ、一回局長に掛け合ってみるよ、それでいいか?)

『Je garde mes doigts croisés.』
(良い答え待ってるぜ)

ブツッと乱暴に電話を切ってスマホをそのままベッドにぶん投げた。

『Quelle conasse...!』
(馬鹿野郎…!)

「…大荒れですね」

そう。
大荒れである。
イケメンに起こされたかと思えば電話が掛かっていたから起こされただけだった。
電話をしながら書類をチェックしたら、ポリスがとんだ勘違いをしていたのであった。
こっちの情報で掴んでいるのは、今テロ組織はそのまま東へ向かっているのではなくて、北上しているのだ。
ハッキングした時に何かセキュリティーに引っかかったのか、DGSE本部にも犯行声明のような情報が送られてきたのだ。
これが相手の撹乱作戦なのかもしれないのだが、潜入捜査員から今リヨンの方へ移動していると、極秘で暗号化された報告も受けている。
俺の情報を元に独自の判断でニースへ向かってしまったポリスを誰も止めなかったのだ。
何故だ。
どうせハッキングもバレてるんだし下手したら本部も狙われているかもしれないし、この速度で進んでいけば間違いなくパリでデカいクーデターを起こされる。
証拠もデータも揃った。
それなのに何故ポリスがニースに派遣されたんだ。
頭を抱えた程だ。

「…コーヒー、淹れましょうか?」

『Non, merci...』

「要らないという解釈でよろしいですね?」

しまった、言語モードがそのままだった。
ベッドの上で俺の端末を弄っているイケメンを見て溜め息を吐き出し、項垂れた。

「蛍さん、やっぱりコーヒー淹れましょうか?
一旦落ち着いてください」

『そんな事言われましても…』

椅子から降りて、溜め息を吐き出してイケメンに近付いた。
何してるのかと思ったら俺の端末で仕事してますよ、この人。

「蛍さん、どうぞ」

端末を置いたイケメンに受け止め体勢を取られたので、なんだかもうやけになって甘えようとその偉大なる胸板に飛び込みかけました。

『安室さ……』

ピタリと動きを止めた。
受け入れ体勢に入っていたイケメンもちょっと驚いてますよ。
電話でした。

くそー、折角癒されるところだったのに…!
イケメンとの交流の邪魔しやがって!

スマホを拾い上げて乱暴に電話に出た。

『Allô, ça marche ou pas?』
(もしもし、上手くいったのか?)

そしたら電話の相手はさっきの同僚ではなく局長でした。

『Ah...directeur, je suis désolé...
Je pensais qu'il m'a appelé encore...』
(あ…局長、失礼しました…
てっきり彼がまた電話してきたのかと思いまして…)

[Bon, c'est pas grave.
Alors, il m'a dit que t'as déjà obtenu les documents et la preuve.]
(まあ、いいだろう、気にするな
さて、彼は君が既に書類も証拠もあると言っていたようだね)

『Carrément. J'ai reçu un télégramme chiffré d'un enquêteur dérobé.
Il m'a écrit qu'il était en train de se diriger vers le nord, la direction est Lyon.
J'ai importé un papier aussi, je poursuis ses GPS sur l'écran, le point se déplace certainement vers le nord.
Je vous propose qu'on donne directement des directives à la police et empêche son pénétration avant qu'il entre à Paris.』
(ええ、そうですね。テロ組織の潜入捜査員から暗号文での報告書を受け取りました
彼はリヨン方面へ北上している最中だと書いていました
ある書類も手に入りましたし、画面上で彼らのGPSを追っていますが、確かに奴らは北上していますよ
我々がポリスに直接指示を出してパリへ入られる前になんとしても侵入を防ぐのがよろしいかと…)

[Envoie-moi ce papier après.
Cette fois, non, cette fois aussi, t'es sûre,Louis.
Tes informations sont toujours exacts, t'es assez convenable...
Est-ce que c'est sûr qu'ils vont à Paris, c'est ça?
Tu peux m'affirmer ça?]
(後でその資料を送ってくれ
今回は、いや、今回もか、お前の言う通りだな、ルイ
情報はいつも的確だしお前自身は十分適切だ
次に奴らが向かうのはパリなんだな?
断言できるか?]

一息置いてから、静かに答えた。

『Oui, directeur.
S'il vous plaît, mènez la police, directeur...pour protéger Paris...!
Pour notre pays, pour défendre de l'attentat...!』
(はい、局長
お願いします、警察を動かしてください…パリを守るために…!
私たちの国のために、テロを未然に防ぐために…!』

今のうちに局長へデータを送る。
それを確認したのか、暫く経ってからようやく沈黙が破られた。

[...D'accord. Fie-te à moi, Louis.
On a donné beaucoup de travail à toi malgré que tu sois au Japon.
Tu pourrais prendre un peu de pause, prends-tu un café.
Pourtant, on te confies la navigation d'eux.
Écoute, Louis.
C'est pas ton travaill, mais c'est notre tâche.
Ne pas charge tout seul. ]
(…よかろう、私に任せろ、ルイ
お前が日本にいるというのに、仕事を与えすぎてしまったようだね
少し休憩するんだ、カフェでも飲んで
その代わり、彼らのナビはお前に任せた
いいかい、ルイ
これは君だけの仕事じゃない、我々の任務だ
一人だけで気負うな)

『…Oui, directeur.』
(…はい、局長)

[Bon, s'il y a problème ou nouvelle, n'hésite pas de me contacter.]
(よし、何か問題や新たな事がわかったら連絡してくれ)

電話は切れた。
とりあえず警察は動かしてもらえそうだ。
言ってみるものだな。

な、なんか一気に疲れたんだけど…
ちょっと緊張の糸が解けたっていうか…

ふう、と一息ついてパタリとベッドに横になった。
とりあえずひとまず休憩してこいと時間をもらえたので休むことにしよう。
とりあえず疲れた。

「進展はありました?」

『ええ、まあ…一応お馬鹿ポリスを動かしてもらえるそうです、うちの管轄で
とりあえずカフェ一杯飲めるくらいの猶予は頂けました』

「でしたら淹れてきますよ」

『いえ、それより今は…』

イケメンでパワーチャージするのが一番かと思います。
また俺の端末で仕事を再開していた安室さんに頭を撫でられました。
最高です。
癒されます。
頭撫でられるだけでこんなに癒されることってあるんだろうか。

こう、ふわーってしていく感じ…
疲れとか、なんか全部スッて抜けていくような感じ…
イケメンて偉大…

そっと手を伸ばしてイケメンの腰に腕を回しました。
癒されます。
もうこのまま胸板まで侵入して甘えたいです。

「朝からお疲れ様です」

『安室さん…』

「やっぱりコーヒー淹れましょうか、僕も飲みたいので」

『も、もう少し、このままでいることを所望します…』

「…わかりました」

寛大でした!
イケメンは寛大です!

ちょっと近寄って胸板に潜り込むともれなく頭を撫でてくれるサービス付きです。
最高です。
イライラもなんだか吹っ飛びますね。
癒し以外の何物でもない。

『…あったかい、落ち着く』

なんだろう、この安心感。
イケメンは安心感の塊ですね。

「根を詰めないでくださいと言った筈ですよ」

『詰めてませんよ…
とにかくテロ組織を阻止しないと…元々はスペインでもクーデター起こしてたような国際的な組織です
EU圏内は行き来が自由ですから、他国に行かれる前に此処で仕留めておかないとEU全体にも大きく関わってくる案件です
早く仕留めないと…』

現場にいないことが少しもどかしくも感じた。
だが本部にも脅迫的な文面が送られてしまった以上、本部からのハッキングは危険だし俺が国外からハッキングするしかない。
それが与えられた仕事だと思えば仕事だと割り切ることはできる。

「蛍さん、昨日、本当は寝てませんよね?」

『…い、いきなり何を言い出すんですか
安室さんが監視しないと気が済まないからって一緒に寝たじゃないですか』

もう、と言ったら安室さんは俺の顔を胸板から外した。

「わかってましたよ、貴方が起きて布団の中で端末を操作していたのは
本当に寝たのは僕が起こす一時間くらい前ですよね?
今日は早く寝てくださいよ」

な、何故それを知っているんだ…

『…と、とりあえず、あの、仕事に戻りますね』

「コーヒーはよろしいんです?」

『あ…じゃあ折角なんでいただきます』

眠気覚ましにもなるだろう。
安室さんは俺の額にまたアレを落として部屋を出て行った。

…な、なんか最近スキンシップが増えてきたんじゃないですかね
特に、その…おでこチューが増えましたよ…?
そんな気がしますよ…?

ベッドでそのまま横になっていたらメールが届いた。
ポリスは今本部から交渉してもらってるからいいとして、なんだろうと思ったらさっきの同僚だったのでとりあえず感謝の旨を伝えておいた。
そしたら日本のお菓子を送ってくれと頼まれてしまった。
うちの局はどこまでも日本のお菓子が好きだなあと思いながら、この件が片付いたらと約束した。

あー…なんかここ数日疲れたな…
夜は安室さんがいてくださるからいいとして、朝と昼はご飯食べてる時間ないからな…

生気を抜き取られそうになりながら、パソコンでマップを広げる。
移動手段は恐らく車。
潜入捜査員が発信器を取り付けてくれたおかげでこうして居場所を地図上で特定することかできるようにはなった。

「蛍さん、お腹空いてます?
まだ朝ごはん食べていらっしゃらないですよね
作りましょうか?」

『…いえ、あまり食欲もないので大丈夫です』

これはちょっと体調がよろしくなくなってきた証拠ではないだろうか。

「…やはりちょっとお疲れなのでは…」

『いえ、これが終わるまではゆっくりしてられませんから』

イケメンのご飯は食べたいのに食欲がないのは大問題だ。
それほどダメージを受けているって事ですね、理解しました。
パソコンが音を立てたので慌ててメール画面を確認。
リヨン経由でパリへ入るルートを検問してもらえばいいんだけどな。

お、マップの上に点が増えた…
違う色…この色はポリスか、出動許可下りたみたいだね、局長流石です

ナビゲーション開始です。
掛かってきた電話の相手はRAID(フランス国家特別介入部隊)の車の方でした。

『Allô, enchanté monsieur, je suis Louis Claude de DGSE, je suis un navigateur de ce projet. 』
(もしもし、初めまして、DGSEのルイ・クロードと申します、今回ナビゲーションをさせていただきます)

[Enchanté Louis, c'est vous qui nous avez remué forcément.]
(初めまして、ルイ、俺らを無理やり動かしてくれたのは貴方でしたか)

『Désolé.』
(悪かったな)

[C'est pas mal.
Je n'ai rien contre personne comme toi.
À propos, tu vois notre endroit?]
(いや、悪くねえ
俺は君みたいな奴は嫌いじゃないぜ
ところで俺たちの場所は把握してるか?)

『Oui, je te considère. 』
(ああ、目視した)

[Bon, on commence?]
(始めるか?)

『Ok, n'importe quand.』
(ああ、いつでも)

電話の向こうでエンジン音が聞こえる。
車の点がマップ上を動き始めた。

『L'organisation d'attentat, elle est 50km sud de Lyon maintenant.
Elle fait de la vitesse dans la direction de Lyon, bah, peut-être 100km/h plus ou moins.』
(テロ組織だが、今はリヨンの50km南にいる
リヨン方面へ…そうだな、時速100kmくらいでぶっ飛ばしてる)

同時に画面上に並ぶ最新情報をリアルタイムで処理していく。

『Hé, il paraît que l'analyse de chiffre a fini au siège.
Le dernier point d'attentat est...les Champs-Élysées.』
(おい、本部で暗号文の解析が終わったみたいだ
最終地点は…シャンゼリゼ通りだ)

[En tous cas, on l' arrête avant de sa arrivée.
T'inquiète pas. ]
(とにかく、到着するまでに捕まえりゃいいんだろ
心配するな)

『La différence est 149km maintenant.』
(ターゲットとの距離、149km)

RAIDもなかなかのスピードで追いかけてくれている。
現場にいたらカーチェイスでも見られたかな、なんて呑気なことを考えながら、情報処理も進めていく。
テーブルにコトンとマグカップを置かれたのに気付かず、画面を見つめていた。
直接DGSEから指示を出してやらせてもらえるのは正直楽なのだが、それがなぜ俺の役目になったんだろうか。
まあ、本部も忙しいだろうから仕方ないのだけれど。

…なんか変な感じ、現場にいないなんて
遠距離のオペレーター役なんて初めてだし、俺の指示でRAIDの車が動いてくれるなんてなかなかない経験だとは思うけど…

画面上ではRAIDの車がすごいスピードでテロ組織を追っている。
その差は少しずつであるが縮まってきている。
とりあえずパリに入られたらおしまいだ。
それまでに必ず止めなければならない。
テロ組織は以前フランスの統治下にあった発展途上国の若者集団だったこともわかった。

…あとは車の情報が欲しいな
本部の解析を待つか

ふと手がマグカップにぶつかってカフェの存在に気付いた。
部屋を見渡してみたが誰もいない。
これは置き逃げだろうか。
有り難くイケメンのカフェを頂くことにした。

お、お、おいしい…
朝のカフェまだ飲んでなかったよね、確か
なんか染み渡るよ、うん、おいしい…

大分二台の差も縮まってきた。
すると本部の情報局からメールが入ってきた。

きました!
車種!
待ってましたよ!

『Bonne nouvelle, les gars, on a déterminé la voiture.
Le genre de voiture est Citroën grand C4 Picasso, sa couleur est noire, son numéro est "512 HER 06".
Je répète, "512 HER 06".
Cette voiture est une voiture d'occasion et voiture volée à Marseille.
On suppose qu'elle a vendu à prix exceptionnel en Afrique et ils ont l' obtenu...』
(いい知らせだ、車が特定出来た
車種はシトロエン グランC4 ピカソ、色は黒、ナンバープレートは"512 HER 06"
もう一度言う、"512 HER 06"
この車は中古車でマルセイユの盗難車だ
本部ではアフリカで破格でこの中古車を購入したんじゃないかって見解だ)

[D'accord.
Combien de la distance entre elle et nous?]
(了解
俺らとの距離は今はどのくらいだ?)

『87km.
Elle a passé Lyon.
On estime qu'elle va passer à Auxerre.』
(87kmだ
リヨンを通り過ぎた
このままだとオーセールを経由してパリに向かうだろう)

[Pas de soucis.
La police renforce le contrôle autour d'Auxerre et d'Orléans pour plus de sûreté.]
(心配いらねえ
警察がオーセールと念のためオルレアン周辺の検問を強化している)

『Parfait.』
(完璧)

コーヒーをいただきながらナビを続ける。
距離も縮んできたので地図を拡大していく。
ドライブレコーダーの映像も送られてきて車のナンバーをチェックしていく。
動きがあったのは30分後だった。
オーセールの20km手前。

[Ça y est! On l'a trouvé! ]
(よっしゃ、見つけたぜ!)

ドライブレコーダーからも相当速度を飛ばしているのが見てわかる。
その視界にチラッと探し求めていたナンバーが写った。

きたきたきた!
コイツらだ、俺を一気に仕事だらけに陥れたのは!

RAIDの彼らもまずは投降するよう呼びかける。
するとまたスピードを上げて車の間をすり抜けていく。

おー、映画ばりのカーチェイス始まっちゃうんじゃない?

[Allez allez allez! Elle échappe!]
(行け行け行け!逃げたぞ!)

ここで俺も最後の一手。
相手の端末にハッキングして入り込み、投降するよう警告を出してからデータを全部コピーし、データを本部にリークさせるために開発したウイルスを投入してやった。
銃声が通話越しに聞こえる。
暫くしてドライブレコーダーが同じ景色で止まった。

[Louis, tu écoutes?]
(ルイ、聞いてるか?)

『Oui, bien sûr. Et alors, mec?』
(勿論、それで?)

[On a attrapé 6 gars africains.
Ça y est, on a réussi enfin.]
(6人のアフリカ人を取り押さえた
やっと終わったぜ)

はあっと長い溜め息を吐き出した。

『On a fait du bon travail alors.
Ah, c'est fini...! Merci de votre coopération.』
(お疲れ様
あー、終わった…!ご協力ありがとうございました)

RAIDにまでご協力いただいたので早く対処できた。
疲れた。
とにかく疲れた。
局長には報告だけして椅子から降りて床にパタリと倒れた。
するとベッドの上にタブレット端末が置かれていた。

…安室さん、流石に帰ったよね
お仕事あるだろうし
まあ、これでお仕事してたみたいだけどまたプログラム改変されても困るからね…一応チェックだけしとかないと…

パスコードロックを解除した瞬間だった。

[お仕事お疲れ様です]

ん?

5秒程でメッセージが消えていつもの画面になった。
待て。
何だ、今のは。
試しにもう一度画面を暗くしてからパスコードを解除してみる。

[ちゃんと寝てくださいね]

待て待て待て。
なんだ、これは。
ログインする度に何故イケメンのメッセージが出てくるんだ。

『…あの、これは…』

ついついもう一度同じことをやってみる。

[ご飯もしっかり食べてくださいね]

な、なんですか!
このイケメンメッセージ機能!

なんだか浄化されていくような気分になりました。
今日の本業はなかなかのお仕事でしたがこんなご褒美もあるんですね。
部屋を出て、とりあえず何か食べようと思って冷蔵庫を開けたら朝ごはんと昼ごはんが作り置きされていました。

ちょっと、どんなサービスなの?
これは…イケメンのすることですね…

有り難くお昼ごはんをご馳走になろうとダイニングに行ったらメモが一枚置いてありました。

"ポアロにいます
朝から働き詰めなんですからたまには休憩も取ってください
端末の小言サービスはご満足いただけましたか?"

『……だ、大満足です』

ひえええ、こんなことするのイケメンしかいないよ!
ていうか勝手に端末弄るなって怒ったけどこういうのなら全然大歓迎です!
いいよ!してくれ!
なんか元気出たよ、今日ちゃんと寝るよ!

『そして美味しいです…』

本当に素晴らしいイケメンですね。
なんかもう、本当にずっといて欲しいです。

安室さん、貴方本当に完璧すぎますよ
なんなんですかね、イケメンの生態って
ちょっと俺には理解ができません…

『…甘えたい』

めちゃめちゃ甘えたいです。
頭撫でられたい。
最近安室さんのリラックスタイムが自分のリラックスタイムであることも知った。

い、癒されたいです…
今日のお仕事相応のご褒美がほしいです…
今日は背筋まで堪能したいです、イケメンの背筋…!
考えただけでも相当なご馳走になると思うんですけどどうでしょうか…

お昼ごはんを食べながら、なんだか疲れたのでぼーっとしていたら寝てしまった。
ハッと目が覚めたら横になっていて、テレビが見えて丁度ニュースをやっていた。

ん…ここは、もしやリビングでは…?

「おはようございます、蛍さん」

ん?

『あ、安室さん…?
ポアロは?お仕事は…?』

寝ぼけながらそう聞いたのだけれど、とても良い枕です。

枕!?

ハッとして見たら安室さんと目が合いました。
完全に膝の上でした、頭が。
つまりですね、世間的に言う膝枕というやつです。

『うわああ、ちょっと、え、あの…』

「食事中に寝るなんて相当ですよ」

『近い近い近い、あの、仮眠今取ったんで!
もう大丈夫なんで!』

ひえー、まさかイケメンの膝枕に与れるとは…!

慌てて体を起こしたら頭を撫でられました。

「フランスのテロ組織、無事に捕まったみたいですね」

『え?あ、はい、まあ…』

「お疲れ様でした」

『……』

ダメだ、これは、甘えるぞ…

手がわさわさする。
イケメンに飛び込みた過ぎて仕方がない。

「…今更躊躇われるんですか?」

ほら、この人俺が何したいかお見通しだよ!
怖いよ!
なんでわかるの!?

『…いや、その…』

「来ないならこっちから行きますからね」

はい?

グイッと手を掴まれて腰を引き寄せられて抵抗不能。
うわあ、イケメンです。
超至近距離イケメン最高です。
寝そうです。
そっと背筋を失礼しました。

あ、素敵です…
これは、いいですよ、素敵です、素晴らしいです!
あああ、癒し…!

「蛍さん」

『…はい』

「あの、ちょっといつもより力が強くないですか?」

『…気のせいです』

もうイケメン最高です。
お仕事頑張った甲斐があります。

『幸せ』

神様、見捨てないでくださってありがとうございます。
本当に素晴らしいご褒美です。
もう寝てしまいそうですがイケメンはこんなにも包容力満載です。
素晴らしいですね。

「…ちゃんとご飯食べましたか?」

『まだ途中でした』

「いえ、昼ごはんはわかっていますが朝ごはんは食べましたか?」

『…そんな時間ありませんでした』

「貴方って人は…
目を離すとすぐ仕事しかしないんですね、全く…
夜ご飯は栄養価の高いものにしますのでしっかり食べてちゃんと寝てください」

『その前に寝そうです』

「せめて食べてから寝てくださいね
また小言を増やしていきますよ」

あ、それはそれで構いません
寧ろ大歓迎です!
イケメンからのお小言!
最高です!

『大歓迎です!
安室さんからのお小言お待ちしております!』

「僕が呆れて物を言っているということをわかってるんですか?
小言という言葉の意味、わかってます?」

『…すみませんでした』

素直に謝ったらまた頭を撫でられました。
なんだろう。
お小言なのになんだか嬉しいね。
意味なくタブレット端末で遊んでしまいそうです。







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