コネと引き換えに身元がバレました。

『……』

体が痛い。
ぼけーっと寝ぼけたまま体を起こし、ベッドから降りる。
Webラジオをつけたら今日は元気にフランス語が飛び込んで来たので回復したようです。
しかし体が痛いです。

『はあ、シャワー浴びてスッキリしてこよ…』

なんか体が悲鳴を上げてる気がしてTシャツを脱いだら痣ができていました。
酒でも飲んだっけ、と思いながらシャワーを浴びて上裸でキッチンへ向かいパン・オ・ショコラを咥えた。
カフェを淹れている間にテレビをつけようとリビングに行って固まりました。
口からパンが落ちた程です。

『…どうしちゃったんですか』

安室さんと秀一がソファーに座っていました。
ていうかなんで共存出来てるの、この二人。

「いや、お前を吹っ飛ばしたからちゃんと介抱してやろうと思ったんだが部屋に入るのを拒否されたんだ」

「お前がいると蛍さんの体に障るから早く帰れた行ったのに帰らなかっただけだろう」

『いや、あの、大丈夫ですから…』

今日は仕事がしたい。
ジンからの仕事をなるべく早く片付けてしまいたい。

『…あー、そういえば昨日なんか吹っ飛ばされたわ』

やっと思い出した。
衝撃が強すぎて今思い出したよ、記憶からスポーンと抜けてた。

「今日は絶対安静ですよ?」

『はいはい、仕事してますから大丈夫ですって』

とりあえず二人を納得させて帰らせることにした。
玄関の外に追いやって鍵を閉めた。
これでよし。

さて、仕事だ仕事
荒んだ時には仕事が一番、例え秀一に吹っ飛ばされたとしても仕事で忘れればいいんです…
ていうか安室さんもちゃんとお仕事してくださいよね、先日公安にメール出したのに返ってこないんですけど…

はあっと溜め息を吐き出しながらカフェで一息ついてお仕事に取り掛かる。

おっと…これはどうもありがたい機密情報が流れて来ましたね
そろそろこの人には消えてもらいましょうか…

NOCリストを改ざん、更新してジンに提出。
それから各諜報機関の最新の動向もチェック。
各諜報機関にいる知り合いのパソコンを経由してハッキングし、機密情報を抜き取ってきた。

大漁ですな…!
こんな日はちょっと豪華なご馳走でも食べに行っちゃいますか!
豪華なランチ!

というわけでご機嫌です。
今日は杯戸シティーホテルにやってきました。
ホテルのランチです。
たまには自分にご褒美くらい良いと思う。

うん、美味しいです
久しぶりのフランス料理、いいですね

幸せな気持ちでレストランを後にし、帰る前にトイレに立ち寄って固まった。
事件です。

『…あ、あの、警察…人、死んでる…』

初めて110番通報しました。
どうして人が死んでるんだ、こんな所で。
通報してからやって来た刑事さんはいつぞやのヒョロい刑事さんだった。

「あー!貴方…」

『あ…ルイ=クロードです…』

「お久しぶりですねえ…
で、通報されたのは貴方でよろしいんですかね?」

『日本語、ちょっと勉強しました
お久しぶりです』

「あ、ハイ…あの、また貴方が第一発見者ですか?」

『ダイ…なんですか?』

「そういうことなんじゃないの?高木刑事」

おっとこの声は…!

『あー!コナン君ですね、お久ぶりです、お元気でした?』

「あ…うん、まあね…」

「俺には挨拶もなしかい」

って、ええ!?
貴方まだいたんです!?

大阪ギャルソンも一緒だった。
ということは、まだコナン君が毛利さんと追いかけてる事件は終わってなかったわけだ。
確かに連絡もなかったし。
コナン君に連れ出された。

「また第一発見者かよ」

『…みたいだね』

「ツイてねえな…
まあ、昨日話した通りおっちゃんにきてる依頼が連続殺人犯だったんだけど…」

『連続殺人ねえ…物騒だねえ…
俺仕事あるから帰…』

「第一発見者なんだから、まだ帰れないと思うけど」

で、ですよねー…

『…で、毛利さんのお弟子さんは?』

「素直に聞きゃいいだろ、安室さん来てないのかって」

『い、い、いや、別に!?
朝会ったし?
ていうかあの大阪ギャルソンがどうも安室さんとキャラ被ってムカつくんだけど』

「何処がだよ」

『肌の色とか』

「雪白さん、そんなに安室さんに会いたいなら自分で連絡しなよ」

『だから別に会いたいとかいうわけじゃなくてね…』

「あの、ルイさん、良かったらお話聞かせていただけませんかね…?」

ヒョロい刑事さんは此方を覗いてきた。
仕方がない。
話をしたらすぐに帰ろう。
なんでこんな幸せな日が一気にどん底になったんだ。

『えっと…ランチです、そこのレストラン
たまたまトイレに行って…そしたら、この人が…』

「レストラン?
ああ、トイレの外にあるフレンチレストランですね?
で、トイレに来たらこの人が倒れていたと…」

『倒れる、違う
こう、こんな感じで…』

便器に片腕を乗せて男を見つけた時の再現をしてやる。

「ねえ、ルイさん、何か落ちてたりしなかった?」

『落ちてる…?』

コナン君から聞かれて考えてみたが心当たりがない。
それから周りを見て指差した。

『私、あれを見た
シガレット、バラバラに落ちてたよ』

「間違いないですね、これも連続殺人犯が現場に残している煙草と一致しますね…
警部、この一連の事件について…」

帰りたいです、神様…
早く帰ってお仕事したいです…

小さく溜め息をついてふと横に目をやったら褐色だった。

『あれ、安室さん、いつ…』

「…は?」

『…すみません、人違いです』

「あのなあ、自分、フランス人やからって…」

『だから人違いって言ってるだろ…!
君があの人と同じような肌の色してるのが悪いんだよ、キャラ被らせやがって…』

「誰の話や!
自分、色白やからってな…」

『大体君があの服部さんの息子さんだなんて信じてないんだからな!
全然似てないし!』

「せやからなんでお前が俺の親父んこと知っとるんや!」

恥ずかしいです。
普通にイケメンと大阪ギャルソンを間違えました。
ていうか早く帰りたいんですが。

『あの美人さんが君のお母さんなんてことも信じられない…本当に信じられない…』

「いっぺんしばいたろか…」

『ガキにできるものなら』

「おい、工藤、アイツほんまにいてこますぞ」

「やめとけよ…」

容疑者も割り出されたのか、とりあえずまた人が連れてこられた。
俺もう帰りたいよ。
おっと電話です、誰でしょう。

『……』

ふーるーやーさーん!
貴方のこと待ってましたよ!
待ってました!
いつ来てくださるんです!?
ねえねえ、今日は毛利さんと一緒に来るんじゃなかったんですか?

『もしもし、降谷さんですか?』

[先日のことでちょっと取引が…]

って事件の話じゃないんかい!
本当の表仕事の話かい!

スマホを投げ捨てそうになりました。
危ない危ない。

『…あの、今取り込み中です』

[昨日のお詫びなら何か…]

『連続殺人事件に巻き込まれました』

[…またですか
今何処にいらっしゃるんです?]

何それ、またって酷くない!?
てっきり解決しに来てくれるもんだと思ってましたよ!

『杯戸シティーホテルです』

[どなたかいらっしゃるんです?]

『警視庁の方と毛利さん、コナン君と大阪から来たという探偵と…あとは容疑者ですね
囲まれました、包囲網です』

[生憎今日は仕事なので…]

『わかってますよ!馬鹿!
俺は早く帰りたいんです!帰って仕事したいんですよ!
会いたいんです!馬鹿!』

[…朝会いませんでしたっけ?
仕事だからって追い出されたんですけど?]

しまった…
イライラしてついイケメンに馬鹿などと言ってしまった…
相当機嫌を損ねた降谷さんのお声です、ヤバいです…

『…すみません、でした』

[わかりましたよ、今から向かいますから]

『え?』

[馬鹿と罵る程会いたいと言ったのは貴方ですからね?

風見、少し出て来る
緊急の用件だ、すぐに戻る

降谷さん、単独で行かれるんですか!

一人じゃないと意味がないらしい
後援は無用だ]

あれ…本当に…来てくれちゃうんですか…
てことは、お仕事モードの降谷さん!
スーツの降谷さんですね!
最高です!
殺人事件で荒んだ心も回復します!

とりあえず事件については英語で警視庁の方に説明して、コナン君と大阪ギャルソンが観察していた現場を眺める。
早く終わらせていただきたいものです、誠に勝手ながら。
毛利さんもマークしております。
しかし彼は時々ギャグっぽい事を言っていますね、そう見せかけて場を和ませながら事件を解決してるんでしょうか。

ジン様が目をつけていたという名探偵…
その実力、拝見させていただきますからね

連続殺人事件ということなので俺に事件の詳細や関連はわからないとしても、コナン君と大阪ギャルソンはあれこれ調べています。
途中で鑑識さんのデータも入ってきます。
容疑者のアリバイは全員成立。
難しい状況ですね、毛利さんのお手並み拝見には丁度いい。

「服部」

「ああ、俺もわかったで…」

なんだなんだ。
なんと今日は大阪ギャルソンの推理ショーが始まってしまった。
しかしコナン君もちょいちょい手助けをしている。
だけど、コナン君も実際推理ショーには参加したいんじゃないのかな。

ねえ、工藤君?
君はいつまで組織の影に隠れられていられると思う?
公安の握ってるNOCリストだって俺が改ざんすれば組織はその通りに動く
俺が君の情報をリークさせてしまえば、君はもう、何も出来なくなるんだよ…?

結局今日は毛利さんの推理ショーが見られなかった。
なんだ、つまらん。
結局コナン君のサポートの大阪ギャルソンの推理ショーでした。
犯人は膝をついて自白した。

『…折角毛利さんの推理ショー見られると思ったのに』

「俺よりあのおっちゃんのがええっちゅうんかい」

『いや…仕事の関係でね』

犯人は手錠をかけられた。
その瞬間だった。

「んな簡単に捕まるかよ!」

……!

犯人は逃走した。

「高木!追え!」

「はい!」

「くそ、こうなったら…」

コナン君の横を通り抜けて刑事さんの肩を踏み台にして犯人に踵落としをしたら間一髪で避けられた。
地面にはヒビが入ったけれど構わない。
そのまま犯人はレストランの窓に手をかけた。
隣の窓の枠に足を掛けた。

「いいのか?
こっから飛び降りてやる」

『Je m'en fou.』
(好きにしろ)

銃を向けられたのでこちらもUSPを取り出す。

「な、何者だ…テメエ…」

『Tu veux savoir?』
(知りたい?)

相手の拳銃を一発で仕留め、宙を舞う拳銃を捕まえた。
これは公安に引き渡してあげよう、拳銃の入手ルートを探ってもらえればこっちにも利益はある。
今日急遽来てくれることになったお礼だ。

「くそっ…!」

犯人は窓から飛び降りた。
逃すわけにもいかないので、構わず窓の外に出た。

「雪白さん!」

おい、コナン君、今俺の名前呼んだな…?

「き、君…!」

って、ここ10階じゃん!
あー、もう、面倒臭い犯人だな…!

ホテルの壁を走って助走を付けてから踏み込み、犯人の手首を掴まえてふふっと笑った。

『掴まえた』

「テメエ、離しやがれ!」

『悪いけど、それは出来ないかな』

聞き慣れたエンジン音が聞こえる。
犯人を引き寄せ、壁でブレーキをかけてから白い車の天井に足を乗せた。

「全く、なんて無茶をしてくれたんですか」

『車掃除は、お礼にします
それからこれは来てくださったお礼です』

拳銃をポリ袋に入れて車内に投げ込む。

「貴方の身体能力を警視庁に晒せば面倒なことになりますよ」

犯人の手を一纏めにして後ろ手にしておき、警部さんの到着を待った。

「ルイさん!」

やっとお出ましですか。
ホテルから出て来た警部さんと刑事さん達は足を止めた。
ポイッと犯人を投げて寄越した。

『Vous êtes très doux comme des bonbons…』
(本当、飴みたいに甘い連中)

「ル、ルイさん…貴方、一体…」

「じゅ、銃刀法違反だぞ…!
わかってるのかね!?」

車の上から降りてポケットから革のケースを取り出す。

『Je suis Louis Claude du DGSE.
Je suis vraiment désolé de me présenter en retard.』
(DGSEのルイ=クロードです
自己紹介が遅くなって申し訳ありません)

「DGSE…だと…」

『てことで、暫く仕事で日本にお邪魔してますのでよろしくお願いしますね
コナン君、名推理ごちそうさまでした』

「もう、フランス人ごっこはいいわけ?」

『だーって、しょうがないじゃん
こんな大馬鹿野郎が窓から飛び降りちゃったんだから
見殺しにしたって良かったんだけど、それじゃ君も納得しないでしょ?
それに銃刀法違反はこの男

事件解決のご協力ならしますよ、警視庁捜査一課強行犯捜査捜査3係の目暮警部
ご用命の際はいつでもご連絡ください』

名刺を渡して白いRX-7に乗り込む。

「…私は自己紹介したかね?」

「いえ…していないかと…」

「高木、君は私の名前を呼んだかね?」

「いえ、今日は警部、と呼んでおりましたが…」

「また一人ややこしい人が増えてしまったものだ…」






「良かったんですか?
あんな事言って、正体までバラして…」

『コネは作っとくものですよ
もう府警の方とはお友達ですから
あ、そうだ、今日は降谷さんにお会いできると聞いて楽しみにしてたんですが…』

あれ。
隣を見たら、私服姿のいつもの安室さんだった。

「…何ですか」

『し、仕事中だったんじゃないんですか?』

「仕事でしたよ?」

『仕事…降谷さん、スーツは…』

「潜入捜査でしたし今日は私服ですよ」

『……』

「また下ばかり向いてると酔いますよ」

だって仕事中の降谷さんのお楽しみは凛々しいスーツ姿…
スーツ、姿…

「それよりちゃんと車掃除してくださるんですよね?」

『あ…』

「急用とだと言って抜けてきたのでこのまま現場にお連れしても構いませんか?」

『もう勝手にしてください…
公安の方とはお友達になりたいので』

「部下が友達なら、今夜僕とはお友達以上になれるようにもっとお近づきになりましょうね」

こ、今夜…?

ていうか仕事したいんだった。

「あ、先日の取引も今日終わらせてしまいましょう
仕事ですよ、貴方の好きな」

『…ハイ』

「それで、今日はどうしてホテルに?」

『お仕事してたのでご褒美にランチを…』

「そうですか
では今夜のディナーは豪華にしないといけませんね」

なんでホテルと張り合ってんの、この人…

『スーツ姿の降谷さん期待してたのに…』

「すみませんね、私服で」

静かな怒りが伺えます。

『いえ…どんな降谷さんでもよろしいのですがスーツ姿はレア中のレア、スペシャルレアなので…』

まあ、お仕事抜け出してくれたし、いいよね。

『お迎え、ありがとうございます』

身を乗り出して首筋にそっと口付けた。
あ、ハンドル一瞬逸れた。
お友達以上になるにはこのくらいしないといけないということですよね、秀一。
先輩の助言、大切にしますよ。

「……猫の扱い方が本当にわかりません」

『何か言いました?』

「なんでもありませんよ、少し飛ばします」

アクセルを踏み込んだ降谷さんは私服でもお仕事モードだったので、やっぱりちょっと凛々しかったです。

それにしてもスピードかなり出てますよ
いいんですかね…






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