友達以上○○以下

工藤邸です。
リビングではありません。
ベッドの上です。
イケメンと向かい合って座っています。
本当に心臓が爆発しそうです。
おかしいです、この状況。

『……』

「……」

イケメン辛い。
なんで穏やかな顔してるんですか。
こっちの状況わかってください。
ていうか話し合いならリビングじゃないんですか、カフェでも淹れましょうよ、夜ご飯もまだですよ。

『あのー…どうしてベッドなんですかね…』

「その方が蛍さんもリラックスできるかと思いまして」

『寧ろ緊張しかしないんですが…』

「先ほどの蛍さんの発言についてですが、お友達以上にお近付きになりたいというのは肯定的に考えてよろしいんですね?」

いきなり何を言いだすかと思えばそれですか!

抉られました。
いきなり核心を突かれました。
大体念のためだからって盗聴器を車に仕掛けとくのはどうなんですかね。
俺の独り言ですよ。
それを聞かれたんですよ。
恥ずかしいにも程があります。

『すみません…』

「はい」

『ちょっと、この空気に耐えきれません
散歩してきていいですか?』

「大事なお話の最中ですけど」

『まだ話し合い始まってもいませんよね?』

辛い。
俺の独り言を全部聞かれたことが辛い。
ていうかもう一度聞きたいんだけど、なんでこの人穏やかそうな顔してるんですか。
こっちの被害状況把握してください、警察庁の方でしょう。

「あの、貴方の言う友達以上っていうのはどのレベルの話なんでしょうか?」

待って、心の準備すら出来てないのにこれ以上抉らないで…!
心折れるから!

「お互い組織には隠し事がある身分ですし、同じ諜報機関とはいえ仕事もありますしね
プライベートの事だとは思っていますが友達以上というのはとても幅が広い気がするのですが…」

『…あの、散歩してきていいですか?』

「もう話し合いは始まってますよ」

貴方が勝手に始めたんでしょう…!
俺だって心の準備くらいしたいよ!
イケメンとなんで向かい合ってベッドなの!?
今からリビングでも遅くないよね?

『な、何か飲み物でもいりますかね…』

「必要ありませんよ」

『で、でしたらリビングにでも…』

「いいじゃないですか
貴方が眠くなったらすぐ寝られますよ、どれだけ長引くかわからないお話なので」

この一晩かけてゆっくり話し合うっていうのは本当なんですか?

『でしたら今すぐにでも寝て…』

「そうですか」

『……さっさと話を終わらせればいいことですね、そして寝ます
悟りました、なんか急に悟ったのでちゃっちゃと済ませて寝ましょう、そうしよう、そうしましょう』

「はい、それが一番かと」

つまりだ。
俺のあの独り言を聞かれたことで何か誤解を生んでしまったんじゃないかと思う。
友達以上だなんて言葉の文というか、もう少しお近付きになりたいだけである。
お友達というだけではなんだか少し寂しい気がしたからだ。
そうだ、そうだよ、そういうことじゃん。

『…というわけです』

「…親友みたいなものですか」

『なんかそれって軽くないですか?
そんなこと言ったら秀一だって親友に近いですし…』

「あの男以下なんですか?」

『あ、いえ、そうではなく…』

「では段階を踏んでいきましょうか
まずは友達以上になりましょう、話はそれからです」

『友達以上…パッとしませんが一応わかりました
了承しましょう、まあ、米花町に来てから一番お世話にはなっていますし』

「…ちゃんと理解をしていますか?」

『そのつもりです』

ちょっと呆れ顔されたんだけど、俺、日本語間違ってないよね?
わかってるつもりなんだけど何か違うの?

『……』

一度首を傾げた。
解せん。
なぜ呆れられたんだ。
考え込んでいたら頭を撫でられました。

『…あの、ペット扱いされるのは友達以下かと思います』

「…貴方は猫でしたね、そうでした」

でもイケメンから頭撫でられるなんて貴重だからいいか。
少し元気が出た。

『…なんか、いい感じです』

「え…」

『お仕事できそうな気がしてきました…!』

「いや、あの、お仕事云々ではなく…」

ベッドから降りようとしたら手首を掴まれた。
そのまま引っ張られて衝突。
あ、安室さんのいい匂いですね、癒されます。

『…え!?』

とっても素敵な、死ぬ前にもう一度味わいたかった筋肉です。
素晴らしいです。

『あ、もう死んでもい…』

おっと、容赦ない平手打ちです。
相変わらず反射神経が良いですね。
しかしこの状況は美味しい。
とても不謹慎ですが、イケメンの胸板というのは癒されます。

『…お仕事やる気になりました!』

「やはり仕事ということを禁止ワードに追加しておかないといけないようですね…」

うわー、近い近い
ていうか安室さんて腕も意外としっかりしてるんだよね、頼り甲斐のある方ですね
流石です

『…あの、いつまでこうしてるんですか?』

「好きなだけどうぞ」

『えー!本当ですか!』

贅沢!
え、嬉しい、完全にあの独り言聞かれてたようですね
恥ずかしいですが吉と出たんでしょう、堪能するいい機会です
神様ありがとうございます、もう布団にしたいくらいとっても素敵な筋肉です

『…ストレスがなくなりました!』

「…貴方、やっぱり理解してませんよね?」

『はい?』

「貴方のことなので理解してないんじゃないかと思ってはいましたが、本当に理解していなかったとは驚きました」

何をだ。

『お友達以上の意味ですかね…?』

「その通りですよ」

『まあ、追い追い仲良くなればいいんじゃないんですか?』

「…貴方、そんなだから悪い男にばかり引っかかるんですよ」

『どういう事でしょうか』

「…説明する気も失せました」

『え!俺、仲良くなる気満々ですけど!』

「…貴方が理解するまでちゃんと面倒見てあげますよ
また貴方が変な男に捕まらないようにしておかないと気が済まないので」

ちょっと怒ってるな…
ていうか呆れられてるのかな…

ちょっと危機感を覚えました。
まあ、いいか。
この筋肉最高なので暫く離れられる気がしません。

んー、なんかいい…!
これはいい、最高の抱き枕ですよね、幸せです!
やばい、寝そうだよ
凭れかかってもビクともしません、最高ですよ

『寝ていいですか?』

「もう好きにしてください」

『じゃあ寝ますね!』

安室さんを抱き枕にしてそのままベッドイン。
最高です。
翌朝になってもイケメンが隣にいました。
最高です。

あれ、でもこれって前も同じことあったよね?
これは友達と同じ扱いなのかな…

ということで。

『…寝方を変えましょう
これではお友達と同じです、お友達以上じゃないと思うんです』

「…今度は何をなさるんですか」

『それを今考えています』

朝食をしながら会議。
しかし答が一向に見つからないので仕事をすることにした。
安室さんがリビングにいたので、パソコンを持ってきて隣に座ってみました。
そしたら頭を撫でられたので一気にスイッチが入りました。

『お仕事捗ります!』

なんですか、このイケメンパワー!

途中、怒涛の書類に埋もれたのでカフェを淹れてキッチンでグッタリしていたのだけれど、ふと思い出してリビングに戻ってきた。
安室さんの足元に座ってみました。
また頭を撫でられた。

『……頑張れそう』

なんだこれ。
すごい。
それからまたガーッと書類を片付けて、床で死んでいたら目の前にカフェの入ったマグカップを置かれたので顔を上げたら安室さんでした。
イケメンすぎる。
最高です。
思わず抱き着いたらひたすら癒されました。

何これ、最高すぎる…
お友達以上ってこういう事ですか!?
お友達以上だと仕事、こんなに捗るんですか!?

「…蛍さん、やっぱり誤解してますよね?」

夜ご飯を食べていたらそう言われた。
安室さんはまた、ご飯を食べてる俺を眺めているだけ。

『何をでしょう?
実際今日はとてもお仕事が捗りました、最高の一日でした』

「まず仕事が軸になっている時点で誤解してます」

『……』

んんん?

「今日一日蛍さんの動向を観察させていただきましたが、これでは恋人が出来ないのも納得できます
納得できる理由がたくさん見受けられました
まあ、理由を言うと面白くないので言いませんけど
以前貴方が恋愛出来ないのは酒があるとも言いましたが、それも一理あると思います」

『それは自覚しました』

「原因は一つではありません」

『えっ…』

「…今のもそうですね」

『え、今のどこがですか?』

「呆れました」

『いえ、あの、見捨てないでください…』

「見捨てませんよ」

え?

「昨日の夜ちゃんと言いましたよね?
貴方が友達以上という言葉を理解するまでちゃんと面倒見てあげますと、貴方が変な男に捕まらないようにしておくと、ちゃんと言った筈です」

『……』

「そういう事です」

何だろう。
なんか不思議な気分になってきた。
これはあれですかね、お友達以上というのは俺が考えているお友達以上とは違うという事なんでしょうかね。
ますますわけがわからなくなってきた。

『…安室さん』

「はい」

『なんだか頭が混乱してきました』

「それも原因の一つです」

最早何が原因なのか全くわからない。
あれも原因、これも原因。
一体何がどうなっているんだ、この世界は。
安室さんはしっかり休んでください、と頭を撫でて帰っていきました。

…明日も仕事頑張れる
うん、活力沸いてきたよ、今日のうちに仕事やってしまえ!

明け方まで仕事に没頭した挙句、結局寝落ちしてデスクで寝ていました。






喫茶ポアロ。

「梓さん…」

「はい?」

「最近猫に懐かれたんですが、どうしたらいいんでしょうかね…」

「そうですねえ…
まあ、猫は気まぐれですし、餌をあげたりちょっと撫でてあげたら喜んでくれますよ
ほら、大尉もそうですし」

「餌付けはしてるのですが…どうにも猫に一癖あるようで…」

「飼ったりはしないんですか?」

「飼いたくないわけでは、ないんですけどね…
なかなか手懐けるのも難しいですね、犬と違って」

「猫を飼い慣らしている方ってどうしてるんでしょう?
猫を実際に飼ってる方に聞いてみたらどうですか?
大尉はポアロに遊びに来てるだけなので飼ってるとは言えませんし…」

「大尉がどうかしたの?」

「あ、コナン君、いいところに…
安室さん、最近猫に懐かれたみたいで飼うかどうか迷ってるみたいなんだけど、何かいい方法知ってたらと思って…
なんだか猫に一癖あるみたいなの」

「猫…?
確か蘭姉ちゃんのお母さんが猫飼ってたと思うけど…」

「じゃあもし良かったら猫の飼い方とか…」

「あ、梓さん…あの、そこまでしていただかなくてもいいですよ
ちょっと気になっただけなんで…」

「安室さん、その猫って何色の猫なんです?」

「…青い目の白猫です」

「(…何やってんだよ、あの二人)」







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