サトシとサトシが気になるユリーカ | ナノ
「ピカチュウ、エレキボール!」
 赤いほっぺに黄色い体毛、ギザギザ模様のしっぽを持った電気鼠、ピカチュウ。
 赤い帽子を被った少年の指示で、ピカチュウのしっぽの先で弾ける電気の球が相手に目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。
 避けられないタイミングで放たれて、相手のポケモンのトレーナーが慌てて指示を出すが結局命中してしまう。
「よし、やったぜピカチュウ!」
「やりましたねサトシ!」
「おめでとう!」
「やったね!」
 森中で繰り広げられた二匹のポケモンと二人のトレーナーによる真剣勝負、制したのは赤い帽子の少年、サトシだ。
 それを観戦していた兄のシトロンと、仲間のセレナと一緒にサトシより頭一つ程小さな少女も駆け寄る。
「ありがとうシトロン、ユリーカ、セレナ」
 彼の視線が順番に辿る。
「うん! サトシもピカチュウも、ピカっとかっこよかったよ!」」
 少女、ユリーカは、彼の眩しい笑顔が自分にも向けられ、とびきりの笑顔で返した。



「デデンネ、気持ちいい?」
「よしよしピカチュウ」
 とある森の中、サトシとユリーカが、向かい合って机に座っていた。机の上では、それぞれの主人に撫でられて、鼠とハムスターが気持ちよさそうに目を細めている。
「……ねえ、サトシ」
 特に話すことも無く、無言のまま撫でていると、ユリーカが口を開いた。
「どうしたんだ?」
 サトシはそれに応じる。しかしユリーカは、なぜかうーん、と唸ってしまう。
「ユリーカ?」
 彼が不思議そうに身を乗り出して、顔を覗き込んでくる。
 それを何故だかまともに見れないが、恥ずかしさに耐えかねて意を決し、身を潜めていた質問を投げかけることにした。
「……サトシは、セレナのことどうおもってる?」
 どうしてこんな質問をしようと思ったのか、自分でも分からない。ただ、二人が仲良そうにしているのを見ると、胸が少しもやもやするのだ。
「どうって……セレナは仲間だろ? そうじゃないと一緒に旅しないよ」
 ……さすがサトシ。ぜったいいみがわかってない。
「そうじゃなくて、キープしたいな、とかセレナをシルブプレしたいとか」
「はは、ユリーカ、セレナはポケモンじゃないぜ? それにオレはもうポケモントレーナーなんだから、キープしないで捕まえるよ」
 うーん、これでもつたわらない……。ポケモンだいすきなだけある……。
「じゃあ、セレナをゲットしたい、とか思わないの?」
「いや、だってセレナはポケモンじゃないだろ さっきからユリーカの中のユリーカはどんなイメージなんだよ」
 度々重ねられる質問、サトシはわけが分からない、といった表情で頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「むーっ、やっぱりサトシにぶい。そういうことがいいたいんじゃないのに」
「ご、ごめん……」
 そしてとうとう、意味が分からないまま誤った。
 ……そういえば、セレナはサトシのことどう思ってるのかな。
 ふと湧いた疑問。だが、いくら考えてもまだ幼いユリーカでは恋愛感情などよく分からない。
「……いっか、サトシはサトシで、セレナはセレナだもんね。ね、デデンネ」
 と、諦めてデデンネを撫でることに専念することにした。
- ナノ -