05 ライバルとの戦いに備えて | ナノ

「行け、エンブオー! フレアドライブ!」
「ウルガモス!」
一匹は顎には燃える炎のヒゲ、腕と胴体は太く逞しい、おおひぶたポケモンのエンブオー。
もう一匹は橙色の6枚の羽。体の上半分は白い毛に覆われている、巨大な蛾のようなポケモン。
たいようポケモンのウルガモス。
エンブオーが炎を纏って突撃すると、ウルガモスは倒れた。
「ウルガモス、戦闘不能! 勝ったのはキョウヘイだ!」
キョウヘイVSアデク、僅差で彼が勝利した。
そしてダイゴVSミクリ、ホウエンの新旧チャンピオン対決は、相性の差を覆してダイゴが勝ったらしい。
それから2回戦の組み合わせが発表された。
レッドVSグリーンと、キョウヘイVSダイゴだ。
「出来れば決勝で戦いたかったが、しかたねえ。オレが勝つからな、レッド! 伝説のポケモントレーナーの力、見せてもらおうじゃねえか!」
レッドの対戦相手、ライバルのグリーンは、そう言って会場を飛び出してしまった。
次のバトルが始まるまで、特訓でもするのだろうか。
ダイゴはエントランスに立っている、対を成すエメラルドを携えた像の前で目を輝かせていて、その横でミクリが呆れている。
彼以外の1回戦で負けた人達はその近くの黒いソファに座っていた。
そしてレッドは……。
「行くぞみんな! それ!」
彼は勢い良くフリスビーを投げた。
フシギバナがつるでそれを捕まえようとしたが、エーフィがそれを念力で阻止して宙を滑る円盤に飛びかかる。
しかし後少しで届く、というところでカビゴンの巨体に阻まれた。
だがカビゴンを押しのけてカイリューがそれに手を伸ばし、しかしタッチの差でピカチュウがくわえてレッドに持って行った。
今彼らは、人気の少ないところに移動して遊んでいた。
もちろんグリーンとのバトルを忘れたわけでは無いが、あまりバトルや特訓だけをしていても疲れるだろう、と息抜きをしている最中なのだ。
レッドが屈んでピカチュウを迎えたが、その口からいきなりフリスビーが消えた。
「……はは、フシギバナか。油断禁物だな、ピカチュウ」
後ろから、フシギバナがつるで横取りしたようだ。
どすどす重たい音を立てながら、笑顔で走ってきた。
「おめでとう、フシギバナ」
フリスビーを受け取って頭を撫でると目を細めながら首を突き出したきたため、フリスビーを地面に置いて首も撫でる。
「次はお前だ」
しかしフシギバナだけを構っていては不公平だ。ある程度撫でるとポフィンというポケモン専用のお菓子を渡してピカチュウを撫でる。
「よし、次」
そしてそれを全員、6匹分終えると、
「じゃあ、みんな戻ってくれ」
ポフィンを食べ終わったのを確認してボールに戻した。
「……グリーンとバトル、か」
3年ぶりか、懐かしいな……。
グリーンとの再会は、まあもちろん嬉しかったしやっぱり一緒に居ると楽しい。けど、たまに連絡を取ることもあって実はあまり懐かしい、とかそんな感じはしなかった。
けど……。
「この感じ、久しぶりだ……」
バトルの前の、この緊張感。
相手が最初にどのポケモンを出してくるか、もしこちらが有利なポケモンを出したら相手はどんな行動を取るか、その逆はどうか。
不安ではあるが、同時に楽しみで激しく胸が高鳴っているのが感じられる。
何かしていないと、バトルのことが自然と頭に浮かんで来る。
無論他のトレーナーでそれが無いというわけでは無い。
しかし次の対戦相手は彼の幼なじみ。お互いを良く見知り、常に自分の一歩先を進み続けていた宿命のライバル、グリーン。
彼とのバトルの前は、それが特に激しく感じられるのだ。
お互い良く知っているだけに、いかにして相手を出し抜くか、どうやって相手の裏をかくかが重要になってくる。
三年振りのライバルとのバトル。この勝負には、彼にだけは、絶対に負けたくない、負けられない。
「あの、レッド君……」
「……え?」
あいつの対策を切って、無理にでもこいつを出すべきか……。けど、もしそれで……。
そうして思考を巡らせていたレッドは、突然の一言で意識が一気に現実へと引き戻された。
「あ、ごめん。邪魔しちゃった?」
「キョウヘイ君。いや、大丈夫だよ」
声をかけてきたのは、先ほど一緒に挨拶にまわったキョウヘイだ。どうしたのだろうか。
「だったら特訓に付き合って欲しいんだけど、いいかな?」
特訓か。まあ、あまり考えて空回りしてしまっても悲しい。
「うん、もちろん」
それにグリーンとのバトルに備えて体を温めておくのも悪くはない。
「ありがとうレッド君! じゃあ、出て来いルカリオ!」
「こっちこそ。出て来いピカチュウ!」

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