3 | ナノ

「噂に聞いてはいたけど、イッシュ地方って大きいんだな。ヤマブキシティより広いよ!」
見渡す限りがビル、ビル、ビル。カントー地方からイッシュ地方まで来た彼とグリーンは、現在船から降りてヒウンシティという街を歩いている。
行き交う人々の数もビルの数も高さも、自分の故郷最大の街とは桁違いだ。
PWT、ポケモンワールドトーナメントという大会がこの地方のホドモエシティと名付けられているらしい街で開催するらしく、2人はそれに参加するためはるばるやってきたのだ。
「は、こんぐらい普通だろ、なに驚いてんだよ! やっぱお前って田舎者だな!」
隣から嫌みな声が聞こえてくる。
「グリーンだってさっきすげー、でっけえってぼくと一緒にはしゃいでたじゃないか!」
「そんなんお前のノリに付き合ってやっただけに決まってんだろ! そんなだからお前はオレに勝てないんだよ!」
「前はぼくが勝ったじゃないか!」
「通算はオレ様の圧勝だけどな! なんなら今からやるか?」
そう、彼とグリーンは何度もバトルをしたが、レッドが勝てたのはたったの一度、最後のバトルだけだ。
「いや、バトルならPWTでやろう。その方が3年前を思い出すしね」
その最後のバトルというのが、ポケモンリーグでの決戦だ。
彼は四天王を倒して終わりだと思ったが、違っていた。
いつも彼の一歩先を進み続けていたライバル、グリーンが先にポケモンリーグチャンピオンの座を獲得して立ちふさがったのだ。
そして真のチャンピオンの座を賭けて戦い、激しい攻防の末にレッドが勝利を掴みとった。
「いいぜ。そっちの方が面白そうだしな!」
それが3年前の出来事だ。あれから時間が経ったが、その間一度もバトルをしていない。軽口を叩いてはいるが、負けず嫌いな彼のことだから彼の相棒の炎のように闘志が燃え上がっているに違いない。
そしてもちろん、レッドの心も。
それをどちらも分かってはいるが、口には出さない。出す必要が無いし、出さなくても相手も分かっている、ということが分かっているからだ。
それからは互いに3年間何をしていたかでまだ伝えたことの無い内容などを話しながら、目的地へと向かった。

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