「ね、神田の好きなタイプってどんな?」

「………。」

「じゃあ、好きな食べ物は?」

「蕎麦」

「そこだけ即答かよ」


あたしの彼氏は根っからの硬派です。いやなんかむしろホモなんじゃって…、思ってはいません!うん、断じて!だって告白したのはあたしで、付き合えたのはいいもののまだ一回も好きとか言われたこととかなくて。


「ユウちゃーん、」

「…………………。」

「神田くーん?」

「……………………。」

「………浮気するぞ」

「ハッ、できるもんならやってみろよ」

「だからなんでそこだけ即答?すごいむかつく。やっべーよこれ、あたし本気出しちゃうよ?いやマジで」

「ハッ、」


なんだこいつ二回も失笑しやがった。よし見てろよパパっとイケメン捕まえてきてやるかんな!あとで後悔して泣いても遅いかんな!


* * *

「ちょいちょいそこのイケメン白髪ボーイ」

「なんですか、名前」

「あたしと浮気しようか」

「な、!冗談やめて下さいよ。僕名前とティラノサウルスだったらティラノと付き合うような男ですよ?」

「比べる対象間違えてるよ!ティラノ人間じゃない恐竜」

「兎に角ほんと無理です。すみませーん!誰か助けてくださーい!」

「アレンの馬鹿!お前なんかこっちからお断りだよ!」

「名前〜、浮気なら俺としようさ〜」

「げっ、ラビ!」

「え、何その反応。俺一応イケメンの部類に入ると思うんだけど」

「うわ自分でイケメンとか言った。まじ嫌だほんと無理。ラビだけは無理。勘弁して下さい。300円あげるからほら帰って」

「まーた、照れちゃってー!かーわいー!」

「うわやめろ触んな、ちょ、やっ」

「名前やーらかいさー」

「ぎゃあああどこ触ってんの馬鹿!」


腰に手を回されぎゅうと抱きしめられる。ぞわわ、全身に鳥肌が立った。これはきっと神田に嫌がらせしようとした罰なんだ。ごめんなさい神様。神田が一番好きです。だから助けて下さい神様ァアァアアァアア!


バコンッ!、とすごい音が後ろからして腰に回された手が離れた。


「〜っ!……いって、」

「勝手に人のもんに触ってんじゃねーよ」


ありがとう神様!と喜ぶや否や、神田はあたしの手を掴んでスタスタと廊下を歩いていく。あたしの手首を握る手に少し力が入っていて軽く痛かった。


「…神田?」


彼に引っ張られていって着いたのは彼の殺風景な自室だった。


「神田どうし、?…、んっ」


そこまで言い掛けたところで唇に柔らかい感触がした。唇が重ねられたと理解するまでに時間がかかった。息を吸おうと薄く口を開ければ、その隙間からぬるりと舌が滑りこんでくる。それは段々と深いものに変わっていって、やっと離れた頃には意識は朦朧としていて、酸素を吸うのに夢中だった。


「…てめーふざけんなよ。簡単に触らせてんじゃねーよ」

「ごめんなさっ……!」


言い終わらないうちに視界が天井と神田だけになった。うん、押し倒された。


「ぜってぇ許さねぇ」


やっぱり君だけ

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