「死ねラビ」

「………、唐突になんさ」

「ラビうざいきもいしね」

「名前可愛い完璧大好き」

「虫酸が走るわ!」

「………、泣いていい?」

「泣けば?むしろ泣け」

「いやだ!サディスティック!」

「きしょ」


わざとらしく目に涙をためて言うこいつは世間一般的には"イケメン"という部類らしい。確かに、翡翠色の目に燃えるような赤髪。加えてこの長身だ。そりゃかっこいいに決まってる。


「んで、名前は何を怒ってんさ?」


しかも妙に女心がわかるんだから厄介だ。きっとラビをかっこいいとか言う女の子たちの中にも、見た目だけじゃなくてラビのこういうところに惚れた子だっているのだろう。


「この世にラビが存在してること」

「うん、ごめん」

「あと、この前の日曜日に貰った名刺をずーっと眺めてること」


久しぶりのデートにあたしは嬉しくて嬉しくて、でもやっぱり道行く女の子たちは必ずと言っていい程ラビを2回見る。挙げ句の果てにはスカウトまでされた。そんな最悪な日曜日。


「なに?妬いてんさ?」

「ラビなんかダンプにひかれてしまえ」

「そしたらもう名前と会えなくなるから嫌さ」

「っ…それで、顔面ぐちゃぐちゃになって…、みんなに嫌われちゃえばいい」

「名前だけが好きでいてくれるなら別にいいさ」


タラシのような台詞を恥ずかし気もなくスラスラ言う彼は、私の横で私の手を握る。嗚呼嫌だ。ラビといると私はどんどん嫌な女になっていく。


「…ラビなんか、嫌い」

「俺は好き」

「あたしは嫌い」

「じゃあ俺も嫌い」

「じゃあ私は好き」

「なんじゃそら、」


ふ、と彼が笑う。その飾らない笑顔に惹かれたことをふと思い出した。



(あたしもやろっかなーモデル)

(絶対ダメ!他の野郎に名前を見せるなんて俺堪えらんない!)

(きゅん)

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