「うっわ、憎たらしい寝顔」


そう言って、隣で寝息をたてる黒髪の青年の額にデコピンを一発おみまいしてやる。


「……ってぇ…なにしやがる」


憎たらしい程整った顔の眉間にしわが寄る。くそう、こんなしかめっつらしててもイケメンとかずるすぎる。


「ゴットフィンガーアタックだよ」


そうしれっと返せば呆れたような顔をされた。ちくしょう、その顔もかっこいいな。


「…普通にデコピンって言えよ」

「あたしの人差し指なめんなよ!」

「いや、なめてねえよ」

「もう一発いっとく?」

「一回でいいからお前の脳内見てみてえ」

「え、解剖?うわあ、悪趣味」

「……、お前めんどくせえな」

「えへへ」

「褒めてねぇ」


(うわあああ!またやってしまったあああ!)


付き合ってもうかなり経つのに相変わらず素直になれない私と相変わらずクールなユウ。そんな私たちの間には当然のようになんの進展もない。


「らぶがない…、」

「あ?」


(あ、口に出しちゃった!)


「いや、あのね、うん!ほら!なんでもない!あはは…っ」


あからさまな態度で苦しまぎれの弁解をしてみてもユウは顔色一つ変えない。


(うわあー、完全ドジした。なんかあたしがすごいユウとラブラブしたいみたいな、いや、実際そうなんだけど…でもなんか反応が、ない)


「名前」

「なに…、…んむっ」


不意に重ねられた唇に思考回路は追いつかない。え、え、ナニコレ。


「………、これで満足か?」


唇が離れた後に耳元で囁かれた勝ち誇ったような声。きっと今の彼はいつものように意地悪くにやけているに違いない。全身の熱が顔に集まるのがわかった。


「ユウの変態」


今出来るうちの精一杯の抵抗にうるせぇ、と言った彼に再び唇を塞がれた。

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