「うぬああっ!……、あれ?」
あまりに突然奇声をあげた机で寝ていたはずの馬鹿。びっくりしたのはこっちだというのに本人もポカン、と驚いている。
「……………。」
「あ、ぱっつん」
「奇声の次は嫌みか」
「え、あ、夢か」
「いったいどんな夢見たらんな声が出んだよ」
「あたしがユウちゃんにちゅーされる夢」
「ハッ、いい夢じゃねえか」
「悪夢でしかないよね。誰がこんな今時流行らない黒髪ぱっつんと!」
「いや、ぱっつんはこれからが旬だ」
「多分一生こないよ」
* * *
「あ、!」
時計を見ていそいそと身なりを整え始めた彼女。チッ、来やがったか。ガラッ、教室のドアが誰かによって開けられた音がする。
「名前っ、帰りましょう」
「あ、あれ、アレン!ぶ、部活お疲れ様!」
「あれ、ぱっつん侍まだいたんですか」
真っ赤になってモヤシと話す名前に向けた笑顔のまま、いやみったらしくモヤシが言う。
「…二人してぱっつんって呼ぶんじゃねえ」
こいつは嫌いだ。むかつく、苛々する。目障りだ。
「あ、あ、アレンっ!帰ろっ」
「あ、少し用事があるんで先に靴箱で待ってて下さい」
にこりと微笑んで名前を教室から追い出す。こいつが言う用事ってのは多分俺にだろう。
「……、なんもしてねえよ」
「………。まだなにも聞いてませんよ。まあでも聞きたかったのはそれです。」
手え出したら殺しますよ?なんて脅し文句さらりと言ってモヤシは教室を出て行く。何が紳士だ。あんなの似非紳士じゃねぇか。
「…………クソ、」
きっと正夢
(寝ている名前にキスするなんて卑怯だってわかってる。わかってる、けど)