「小太郎の髪、綺麗だねえ」

「そうか?俺はお前の髪の方が綺麗だと思うが」

「えー、そうかな」

「ああ、柔らかくていい匂いで、こう…ムラっとするような…」

「黙れムッツリ」

「ムッツリとはなんだ!ムッツリとは!」


とっくのとうに戦争は終わったというのに、国を変えようと未だ戦い続けるこの男に私は心底惚れている。机に向かっている小太郎の腰に手を回して背中から抱き着いた。


「なんだ今日はやけに甘えるな」

「や、気分だから勘違いしないで」

「お前はあれか…つんどらか」

「え、なに気候?ツンドラ気候?」

「ふはははっ、そんなことも知ぬのか!ナウなヤングはみんな知ってるものと思っていたが、まさかお前が知らぬとはな!」

「古っ、なにナウなヤングって!てかさー、小太郎が言いたいのってもしかしてツンデレのこと?」

「違うツンドラだ」

「いやツンデレだって」

「違うツンドラだ」

「いやだからツンデレだって」

「…違う、ツンドラだ」

「あれ、小太郎なんで涙目?あたしのせい?あたしのせい?」



いつだったか、小太郎のことを頭が良いくせに救いようのない馬鹿だと銀時が言っていたが、改めてそれに納得する。ああ、なんだか懐かしい。


「ね、小太郎髪切らないの?邪魔じゃない?」

「いや、……俺はこれでいいのだ」

「ふーん」

「何故唐突に髪のことを言い出したのだ」

「小太郎の髪見てると苛つく」

「な!やはりお前はツンドラ…」

「……あんた見てると、重なる」

「………誰とだ」


先生。と言いかけたが、その言葉は声にはならず喉の奥に引っ掛かった。小太郎の真っ直ぐな瞳が私を捕らえて離さない。


「短い方が好きだな、私」


咄嗟に出たのはその言葉だった。そうか、とだけ小太郎は言い、再び私に背を向ける。


思い出は色褪せることなく、
貴方の中で渦巻いているのでしょう?

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