「ごほっ、げほっ、にっしんげっぽっ、」
「最後わざとだろ」
彼女が風邪を引いた。だからわざわざ学校休んでまで看病しにきた。だけど俺は忘れていたんだ。大事なことを。
「っは、あたま…、いた…」
やたら吐息混じりな呼吸。呂律がまわらない喋り方。うるむ瞳に汗ばむ首筋。ぐあぁあぁあ!目の毒だ!
(…………こなきゃよかった)
「とし、ごめ…ね、がっこ…」
「あ?気にすんな、おめーは黙って寝てろ」
「…ありがとー…」
嗚呼駄目だきっと俺は今日死ぬんだ。キュン死にという世界一幸せな死に方で。一人欲求にもだえていると、ベッドに横たわる彼女から寝息が聞こえた。
「名前?……、寝たか」
よし今のうちに帰ってしまおう!己の理性が保てるうちに!名前には後でメールをいれとけばいい。よーし、いまのう……ち?帰ろうとした矢先、寝ているはずの彼女が俺のシャツの後ろを引っ張った。
「…とし…、ひとり…や、だよ…」
ウォオォオォオォオォオォオ!
なんだなんだなんなんだこれが今流行りの萌えってやつなのか?そうなのか?そうなのか?ちきしょォオォォ!誰か教えてくれェエェエエェエ!
そんなこんなでまだいることにした俺だが、限界は刻一刻とせまりつつある。
「…あつい……」
「おお、今冷えピタかえてや……」
むくり、と起き上がった彼女はぷちぷちとパジャマのボタンをはずしだした。
「ちょオオォオォォ!なにしてんのオオォオォォ!」
「うわ、とし…うるさ、」
「いいからぬぐな!」
「い、じゃんかー、見慣れてるくせに…変態、…」
「さらっとすごいこと言うな!」
「…とし、ちゅー、したい…」
「〜〜っ!」
「あはは、まっ、か」
「……うるせー……」
嗚呼駄目ださようなら理性。そう思いながら唇を重ねようとした瞬間だった。
「名前大丈夫ですかィ?」
「バーゲンダッシュ買ってきたぞ〜!…お?そんなとこで何やってんだトシ」
「…………、筋トレ」
むらむら