「うわアレンち広いねえ」
「一人暮らしなんで」
「じゃあ今日からは二人暮らしだね!」
「住み着く気か」
「あはは、冗談冗談」
取りあえず連れてきてやったが、さっそく苛つく。ていうかもうコイツが半径1メートル以内にいるだけで全身に鳥肌が起つ身体になってしまったような気さえする。だがしかし、バイトのことを口外されることに比べたら一晩コイツを泊める方がまだましなのだから仕方がない。
「うわあぁああ!お風呂にテレビ!きゃあぁあぁあ!リッチリッチリッチ!」
(………先が思いやられる)
* * *
「アレンちゃんのエッチ」
「は、」
1時間後に出てきたあいつはいっちょ前に色っぽくて、心外だが少しドキッとした。そして僕のその心情に気づいてか否か、ニヤニヤしだした名前はわざとらしく胸に手をあてがいながらそう言った。
「今そうゆう目で見てた〜」
「ぶっ殺すぞ」
「すいませんでした」
「わかればいいんです」
「ちょっと言ってみたかっただけです。本当すいませんでした。調子乗りましたごめんなさい」
「あ、ソファーに毛布置いといたんでそこら辺で適当に寝て下さい」
「えー、普通女の子にベッド譲るでしょ」
「それは"普通の女の子"の場合でしょう?」
「アレンてサラっと酷いこと言うよね。」
* * *
寝室のドアの開く音がして、人の気配を感じた。夜中に他人の、しかも同級生のましてや男の部屋に忍び込んでくるなんてどんな女子高生だよ。モンスターか。モンスターなのか。いやうすうすモンスターっぽいなとは思っていたけれど。
「ふざけるのも大概に…っ」
「理由聞かないでくれてありがと。明日にはちゃんと出てくね」
なんて柄にもなく今にも泣きそうな震えた声で言うから、思わず怒るのを忘れてしまった。「じゃあ、」と言って出ていこうとする細い腕を引いて布団の中に引っ張りこむ。
「抱きまくらがないと僕眠れないんですよね」
「あ、れん」
「でも今日洗ってしまってベランダに干しっぱななしなんですよ。だから今日は仕方なくお前で我慢してやります」
「………、ありがと」
そう言って彼女は少しだけ泣いた。
サービスデー