「アレン!今日もかっこいいね!」
「だまれゴミ虫」
「ひどい!」
僕の朝は今日もコイツによって不快に始まることになる。毎日のように繰り返されるこの挨拶は、今ではもういつから始まったのかすらわならないくらいになっていた。
「アレンって何であんなかっこいいんだろう」
うぁああぁぁああぁあぁあ!もう全っっ部丸ぎこえなんですが!なんなんですかその辱め!それわざわざ他人に言うことですか!それともわざとなんですか!嫌がらせですかなんなんですかァアァァア!
(…………苛つく)
「なー、アレン。名前のことどう思う?」
「しつこい女は嫌いです」
「わあどストレート。……じゃ、なくて!」
「その完成度の低いノリツッコミ本当やめて下さい」
「うん、でさー」
(無視かよ!)
「ぶっちゃけ好きとかそーいうのないんさ?」
「皆無ですけど」
「あ、そうですか…」
恋愛に全く興味がないと言えばそれこそ嘘になるかもしれない。けれど、アイツだけは絶対に有り得ない!これだけは断言しておきたい。アイツのせいで苦労したことは星の数ほどだ。そんな女を一体誰が好き好んで選ぶというんだ。
「ねー、アレンー」
「なんですか」
「この問題教えてよ」
「わかんないです」
苛々してたせいもあり、見事なまでに冷たくあしらった。彼女に向けたままの背中からはいつものような視線は感じられなかった。うん、ナイス僕。
(………………え、)
耳に引っ掛かった鼻をすする音と、振り返った時に視界に入ってきた、いつもニコニコとしつこい女の泣きそうな顔。その表情が瞼にこびりついて、なんだか胸がちくりと痛んだ。
(なんなんだ、よ)
この気持ちに名前をつけるなら、