『愛してるよ』
映画を見に行ったあの日のアイツの声が頭の中でもう何十回もリピートを続けている。ちくしょう、アイツが変なこと言うから!
( っ、!……あれ? )
曲がり角で名前とすれ違ったがなにかがおかしかった。いつもだったら満面の笑みで「アレンおはよう!」と言ってくるはずなのに、今日はまったくのスルー。それから一日、一度も話しかけられることはなく、何故か僕はまた苛つきだす。
「荻っち〜、ノート配んの手伝って〜」
「僕がやります!」
「お、おう…、サンキューな、アレン」
目的通り、僕がとったノートの山には名前のノートも混じっていた。これを配るときに話かけようという企みだ。あれ、なんで僕名前と話そうと必死になってるんだ。
「名前、ノート…」
「けほっ……ありがと…」
( ……あ、 )
「声…?」
【風邪引いちゃって変なの!アレンにだけは聞かれたくなかったのに】
彼女はサラサラと紙にそう書いて僕に渡した。
( ああ、なるほど。そういうことだったのか )
「馬鹿は風邪引かないってやっぱり嘘だったんですね」
素直に心配すら出来ない
避けられているわけでないと知って安心する自分がいた。