「名前、」
「な、な、なに?アレン?」
あの夜以来アレンがあたしによく声をかけてくる。前のあたしなら多少大げさなくらい喜んだはずなのに、最近のあたしはなぜか柄にもなくしおらしくなってしまう。
「いや、なんでもないです」
「あ、そ、そう?」
アレンもあたしもあの夜から変だ。何かが違う。でもその違いがあたしにはわからなかった。
* * *
「恋のよかーん?」
「うわっしょい!…びっくりした」
「俺はお前のびっくりの仕方にびっくりした」
「ふーん」
「いやだ冷たい!なんさなんさ!」
「で、なにしにきたの」
「可愛らしい幼なじみの恋の応援をしに」
「ああ、神田くんの妹?」
「やめてやめて、ユウの妹とかやめてさ。でもあの子可愛い!黒髪清楚系とかすごい良い!」
「冗談だよ。ラビきも、たらしー」
「たらしじゃないさ!愛の戦士!」
「じゃあ愛の戦士、コーヒー牛乳買ってきて」
「愛の戦士はパシリじゃねえよ」
「じゃあラビでいいや。コーヒー牛乳、「俺もパシリじゃねえよ」
「ケチくさ。先輩のクセに」
「普段先輩扱いなんかしねぇくせによく言うさ。……あ、アレンちゃんがこっち見てる」
「え、」
ラビが指差した先に目をやると、アレンがすごい剣幕でこちらを見ていた。え、やべあたし今日なんかしたかな。あ、それとも前にアレンのイスの裏に"愛は世界を救う"って彫ったのがバレたとか?
「じゃ、俺はここらへんで」
「あっ、ずるいラビ!ラビも一緒にアレ彫ったじゃん!」
ラビが教室から出ていくのとほぼ同時にアレンが椅子から立ち上がってずんずんとこちらに向かってきた。BGMにゴジ●のテーマソングが流れてもおかしくないようなオーラを放っている。あああああ、怖い!
「名前、」
「っ!は、い!」
「今日一緒に帰りませんか?」
思ってもみない言葉がふってきた。思考回路が追いつかず、気づいたら首を縦に振っていた。これ夢かな、あれ、つねったら痛い。
君と私のスタートライン