「希望のカケラもないくせになにが"有希"だよ」

「いや名前さん漢字違うから、有る希望じゃなくて"祐希"だから。そんな希望に満ち溢れた名前してないから」


学校に登校してから珍しく顔を見ていなかったから、学校にちゃんと来ているのか心配になって名前の教室まで行った。そして俺の顔を見た彼女の第一声がこれだった。


「なに、なんでそんな怒ってんですか」

「怒ってなどおらぬ」

「……めちゃくちゃ怒ってんじゃないすか」

「怒ってなどおらぬと申しておるだろうが!」

「なにこの人、なんで戦国武将風なの」


明らかにいつもとは違うその態度に戸惑いながらも、頭の中では一つの仮説が浮かび上がっていた。


「あの、失礼かもしれないですけど…」

「じゃあ言わなきゃいい」

「わあ、バッサリ」


しかしその仮説も確証に変わることもなくあっさりと断ち切られてしまった。このままでは彼女の機嫌が悪い理由も、またその直し方さえわからないまま終わってしまう。


「………、お腹がすいている」

「は?」

「すいませんでした」

「……………」

「……り、…なの」

「え?」


勇気を出して言った仮説はどうやら全然的を得ていなかったらしく、彼女はその可愛らしい顔には不釣り合いなくらいドスの効いた低い声を出した。しかし、しばらくの沈黙の後、彼女は何やら気まずそうにボソボソと喋り出した。


「だから、その…なんていうか、アレなのよ、アレ」

「アレ、じゃ一文字もわかんないんですけど」

「…っ…も、いい!」


そう言って彼女はまた机に肘をついてため息を吐いた。心なしか顔色が悪い気がして、どこか具合が悪いのかと聞こうとしてハッとした。そうか、そうだったのか。


「わかった生理でしょ」

「お前デリカシーなさすぎだろ」

「あ、ごめん。大丈夫?」

「大丈夫じゃないから怒ってんじゃん」

「背中さすりましょうか」

「………腰がいい」

「了解」

「うー………」

「大変ですね、女子は」

「まったくだ。神様のイタズラっ子っぷりには参るよ」

「腰ってここらへん?」

「うん、ありがと。だいぶ楽」

神様はイタズラっ子

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