「何であたしユウと付き合ってるんだろう」
それは唐突だった。いつもとなんら変わらず、学校帰りに俺の家に寄ってベッドに寝転がる少女は眠たそうに目を細めながらそう呟いた。
「……お前から言ってきたんじゃねーか」
「うん、そーなんだけどさ」
くだらねえ、と思いながらも、俺の視線はぼんやりと見ていた夕方のドラマの再放送からその少女の方へと移っていた。
「ユウはさー、周りの子が言ってるほどクールじゃないし、むしろ優しいし。あたしのこと甘やかしてくれるし。…でも、なんで」
「……なんだよ、冷めたか?」
「ううん、大好き。愛してる」
ぎしり、ベットが小さな悲鳴を上げて軽く沈んだ。顎を少し持ち上げて薄く開いた唇に自分のそれを重ねる。
「……ユウ、もっと」
「じゃあ起きろよ」
「やだ、眠いもん」
「チッ…」
「ん、ぅ」
こいつの「もっと」が「もう一回」という意味じゃないことくらいはもうとっくの昔に知っている。けれども、今日の催促だけはいつもと違うような気がした。何度も何度も角度を変えて繰り返し口づけるうちに時折隙間から漏れる艶っぽい声が毎回毎回ひどく扇情的でずるいと思う。
「ふ、ぅ…っ…、ユウ」
「あ?」
「今日話してた女の子、誰?」
「今日…?」
「うん」
「ああ、多分部活の後輩」
「ふーん」
「妬くなよ」
「や、妬いてなんか、ないし…」
「へえ?」
「っ、なにその顔!にやにやしないでよ!」
「してねえよ」
「し、してるっ!…もう、やだ。あたしばっかヤキモチ妬いて、余裕なんかなくて。」
「俺も余裕なんかねえよ」
「…嘘つき」
「お前がモヤシとかと話してるとムカつく。その上笑ってたりなんかしたらもう最悪。」
「う、うそだもん」
「嘘じゃねーよ」
「………、ユウ」
「あ?」
「……………すき」
「俺も」
君という名の深海に溺れる