テレビのチャンネルを意味もなくまわしていた。ほとんどのチャンネルは白黒の画面にザーという雑音が響いているが、中には車やバイク、自転車などの乗り物が道路にごった返しになっている映像や、駅に大荷物を抱えて溢れかえっている人々の映像を写している番組もある。みんな一様に焦ったり青ざめたりしていて、中には泣き叫んでいる者もいた。
「なに見てるんですか」
「んー、世界の終わりに抗おうとする馬鹿な人間たち」
「生きようと必死になっている人たちに馬鹿はないんじゃないですか」
「だって、隕石があたったら地球全体が消滅しちゃうんでしょ?なのにこの人たちはどこに逃げようてしてるの」
「一分一秒でも長く生きれる所、とか」
「ふふ、生への執着って怖いね」
そう、明日になったらこの世界は隕石によって跡形もなく消滅してしまうらしい。これだけ地球の命を吸い取るだけ吸い取ってきた人間が、抗うことの出来ない死によって意図も簡単に消えていくなんてなんだか不思議な感じだ。
「僕も出来ることならもっと生きたいですよ、君と」
「きゃあロマンチック」
「思ってないくせに」
「あはは、バレたー。ねえDVD見ようよ、テレビつまんない」
「名前がもっと近くに寄ってくくれるなら」
「きゃあロマンチック」
「それつまんないですって」
「ははっ、ねえアレン」
「んー?」
「あたし浮気してたんだ、ラビと」
「……え、」
「むしろラビが本命でアレンが浮気相手ていうかー…」
「え、は?え?」
「でも地球最後の日はアレンといたいなって思ってさー。あ、DVD始まった」
DVDの内容はとてもロマンチックなラブストーリーだったけれど、あたしの横でそれを見るアレンの顔は呆然としたままだった。明日、地球は終わるらしい。
23時59分59秒
アレンがあたしの頬を思い切り叩いた。