( 見上げた空があまりにも美しすぎて泣きそうになった )


脇腹がジクジクと痛んで四肢に力がはいらない。必死の思いで体を動かし、泥混じりの地面に大の字になる。情けない。たった一人で敵陣に突っ込んで暴れまわった結果がこれとは、実に情けない。


見上げた空は美しかった。戦場(ここ)にきて初めて見る雲一つない晴天だ。青が深く、とても美しい。


「せんせい」


もう二度と会えないその人の名を口にしても虚しいだけなのに、何故か呼んだら会えるような気がして馬鹿げていると思いつつも何度も何度もその名を口にした。


「せんせい、しょうようせんせい…せんせい…」

「晋助!」


不意に名前を呼ばれて血まみれの身体が強張る。だがしかし頭上から注がれたその声は焦がれたあの人のそれではなかった。


「なにやってんのばか!」

「…うるせェ」

「傷、どこ」

「脇腹…?」

「なんで疑問形なの…ばか…」

「…ばかばかうっせェな。…もう感覚、あんまねェんだよ」

「なんで置いてったりするの。銀時とか小太郎とか…あたしじゃなくたって一言くらい…なんで…」

「わりぃ、な…」

「晋助のばか!」


そう言った女は声を張り上げて今あげた2人の名前を呼ぶ。あいつらが俺のこんな姿を見たらきっと笑うに違いない。そんな恥をかくくらいだったら、見つけられないまま、出血多量で死んだ方がマシだったかも。そんなことを考えていたら遠かった足音がすぐ近くまで来ていた。


「高杉テメェふざけんじゃねェぞ!」

「よせ銀時相手は怪我人だ。高杉大丈夫か、どこが痛む」

「一人で敵陣に突っ込むなんざ、かっこつけかもしんねーけど全然かっこよくなんかねェんだよ!もっと命大事にしやがれコノヤロー!」

「晋助あのね、あんなこと言ってるけど一番必死になって晋助のこと探してたの銀時なんだよ」

「あっ、オイコラ余計なこと言うんじゃねェ馬鹿!」

「二人ともいい加減にせんか!急いで戻って治療しなければまずい。ほら銀時、高杉をおぶってやれ」

「へーへーしょうがねェな」


目まぐるしく場面が変わる。視界いっぱいに広がっていた美しい青は、餓鬼の頃からさんざん見てきたもじゃもじゃの白で埋めつくされた。血がつくぞ、とかすれた声で言えばその弱々しい声をからかわれ殺意さえ芽生えたが、今更いくら血がつこうが別に気にしやしねーよという言葉に少し胸が痛んだ。失ってしまった大切な人を思い、唯一残された仲間を思い、今日も明日も俺たちは戦うのだ。血にまみれようが、傷を負おうが、泥に沈もうが、どんなに空が青かろうが、俺たちは進むしかない。

空がこんなにも青い理由を十文字以内で述べよ

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