学園長に挨拶を済ませたあと、二人に案内されたのは生徒会室だった。プレートにはまさしく『生徒会室』と書いてある。


「紫恩先輩、連れてきましたよ」


玄眞が扉を開けると同時にそう言った。開け放たれた扉からは中の様子がうかがえる。まだ入室の許可は得てないが、中を覗いてみると、人影は四人。一人はポニーテールの活発そうな女子。一人は髪色が明るい男子。一人は黒髪をしたのほうで二つにまとめた美少女。そして最後は───何故か縄でぐるぐる巻きにされている、金髪の男子。


「あぁ、御苦労様」


二つ縛りのほうの女子が表情を変えないまま答えた。恐らく彼女が“紫恩先輩”なのだろう。


「だいたい、なんで俺らがこんなことしなくちゃいけないんですか」
「仕方がないわよ、あたしは会長を逃げないように縛ってなくちゃいけなかったし」


───んん?
さらりと放たれた言葉の中に、幾つか気になるものがあった。


「……失礼。会長は、あなたではないんですか」
「ええ、あたしは副会長です」


紫恩は、縄でぐるぐる巻きになっている男子を指差して、さも当然のように言った。


「アレがうちの生徒会長です」
「アレとか紫恩ちゃんひど……!えーと、どうも、会長です」
「……え」


こんな、ド金髪で、不良みたいな格好をした男子が、会長?
信じることができず、生徒会室を見渡してみるが、他の役員は表情を変えることなく、頷いて見せた。


「そろそろほどいてあげたらどうですか?」
「そうね。お客さんの前でみっともないし」
「だいたい、何で逃げようとしてるんすか?」
「案内とかめんどくさいって……」


紫恩はため息交じりに縄をほどき始める。


「あー!だから私らを集めたの!?私と白夜は部活あるってのに!」
「考えることが最低だ!ちゃんと仕事しろ!」
「言われてるわよ黄蘭」


黄蘭と呼ばれた不良───否、生徒会長は、「ううっ……」と情けない声を出しながら、縄をほどかれるのを待っている。
すると、ようやく縄の拘束が解けて、黄蘭はうーん、と唸って伸びをした。


「わかったよー、すりゃいいんでしょ?」


不貞腐れたように唇を尖らせ、ポケットを探る。そして、ささっと何かを咥えた。それが棒付きの飴であることはすぐにわかった。

───仕事をすると言いつつ、飴だと……!?

唖然とした後、怒りさえこみ上げてきた。こんな……こんな奴が生徒会長!?


「会長くんはどなた?」
「……僕ですが」
「そ。名前は?」
「……鬼村……碧です」
「鬼村くん!同じ会長同士よろしくっ!あ、飴舐める?」
「お断りするっ!」


信じられない。信じたくない。
鬼村は眉根を寄せたまま、差し出された手を無視したのだった。



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