数十分後───女子トイレから出てきた桃は自信ありげに笑っていた。
桃は振り返って、両手を大げさに広げながら言う。
「では、まず最初に!ありすちゃーん!」
そうして、数秒後───もじもじとしながら顔だけひょっこりと彩鈴が顔を出した。
「ほら!あっちゃん!」
「きゃ!」
トイレの中から由希の声が響いて、彩鈴がよろけるように前に出た。
その瞬間、男子陣から「おお……」という声が上がる。
すると彩鈴は、恥ずかしそうに俯いた。
「ありすちゃんは、甘ロリ目指してみました〜!」
彩鈴が身につけていたのは、パステルピンクと白を基調としたロリータファッションだった。
ふんわりと広がった、フリルがふんだんに使われたワンピース。
足元は白タイツに、同じくピンクのパンプス。
頭にはリボンモチーフのカチューシャがつけられ、黒髪ロングヘアのウィッグまでつけていた。
目には桃の私物の黒のカラーコンタクトをしており、黒目の大きさが強調されている。
可愛い上にまるで別人である。
「は、恥ずかしいです……!こんな辱めを受けるなんて思わなかった……!」
「可愛いよ!!アリスちゃんまじで可愛いよ!!とにかく可愛いよ!!」
「語彙が貧困すぎるだろ……まぁ、別人だな」
各々感想を述べる男子陣だったが、感極まった優羽が彩鈴に抱きつこうとする。
それを、彩鈴はキッと睨みつけた。
思わず動きを止めた優羽だったが、感じた違和感を口に出す。
「あれ?アリスちゃん、いつもより大きい!」
「身長でばれないように、インソールでかなり底上げしてるの」
「歩きづらいです……」
「そっか。桃、ありがとう」
一真は満足そうに彩鈴を見下ろした。
これなら源輝は驚くかもしれないな、と。
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