「げんげんってさぁ、いーっつもココ、シワ寄ってるよね。祐樹みたい」
そう言いながら、桃は自身の眉間をトントン、と指で叩いた。
祐樹はムッとして桃の後ろ頭をペシリと叩く。
「東堂さんはいつもああですから」
「なんかやじゃない?一緒にいるならあのシワとってほしーい」
「取れるのかな?見たことないけど、あたしたちでさえ」
「俺も!滅多に見ないよ」
由希と彩鈴は目を見合わせて苦笑いをした。
それだけで、いかに源輝の眉間のシワがデフォルトなのかわかる。
「俺の経験では、眉間のシワはまじでびっくりした時とかまじで照れた時に取れるよ?祐樹がそうだし」
「お前っ……!」
「本当のことだよ?自覚なかったの?なんなら今試す?桃ー……」
「だぁぁぁあ!!」
祐樹が慌てて一真の口を塞ぐ。
一真は笑みを崩さぬまま、その手を口から外した。
「びっくり……か。げんげんってびっくりするの?」
「照れるとこも……そもそもどんな女の子がタイプなのか」
「全く想像がつきませんね……」
顎に手を添えてうーん、と唸る三人。
そこで、一真は何かを思いついたようで、ニヤニヤと楽しそうな笑みを始めた。
「びっくりするくらい可愛い女の子が現れたら照れるんじゃない?」
「……それって、まさか」
純平が顔をひくつかせると、一真は由希と彩鈴に向き直った。
由希と彩鈴は思わず背筋を正す。
「桃、メイク道具持ってるよね?」
「もち!」
「おい、つっても化粧変えたくらいじゃ服で気づくだろ?」
「服はね、大丈夫。ここのショッピングモール俺の知り合い割といてさ、試着してちょっと出歩くくらいならさせてくれるはず」
「……たまに戌井先輩の人脈が怖くなります、俺」
一真は純平に対してにこりと微笑むと、桃を見る。
「桃、服のコーデとメイクはお任せするよ。腕の見せ所だね」
「了解っ!!」
桃が大きくガッツポーズをすると、由希と彩鈴の腕をがっしりと掴んで歩き出した。
「さ!まずは洋服よ!みんな、しゅっぱ〜つ!」
「ひぇぇぇえ!?」
由希の叫びは、無論聞き入れられなかった。
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