俺は、チラリと彩鈴ちゃんを見下ろす。
彩鈴ちゃんはじいっと、俺の目を見つめていた。
真っ直ぐ、綺麗な瞳で。
「……君、読心術でも使えるの?」
「やっぱり、気付いてたんですね」
彩鈴ちゃんは少しだけ苦笑いをしながら言った。
「私だけじゃなく、私たちそれぞれに不思議な力があります」
「へぇ。すごいな。じゃあさっきのは空間移動?」
「……気味が悪いと思わないんですか?」
「いや?別に」
俺がにこりと微笑むと、彩鈴ちゃんはポカンと口を開けていた。
俺は、その手の話信じないほうではないからね。
すると彩鈴ちゃんは、駆けていった桃たちの方を眺めながら、少しだけ顔を歪めた。
俺は彼女の表情の意味がわからず、首をかしげた。
「……あなた方の気持ちも、少しだけ、見えてしまいました。あなたは、桃さんのことが……?」
──あぁ。なるほどね。
俺は否定する気も起きなかったから、にこりと笑って頷いた。
「うん、好きだよ」
すると彩鈴ちゃんは、ますます表情を曇らせた。
「でもあなたは、他の方の気持ちも気付いてますよね。その……辛くは、ないんですか」
……わぁ。
随分ストレートな質問だ。
俺は思わず頬の筋肉を硬直させた。
口では何とでも言える。
取り繕える。
「えっと……」
適当なことを言ってごまかそうとしたけど──できなかった。
彩鈴ちゃんが、真剣な顔で俺を見ていたから。
その瞳の強さに、俺は動けなくなった。
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